小さな空き缶の話
風船
小さな缶ジュースは
中身を飲み干され
小さな空き缶になった
だがやがて,その空き缶は目の前で
ほかの空き缶が次々と砕かれ
溶かされていくのを見た
『ああ,どうしよう
ぼくもああなるのか』
そこへ隣の空き缶が言う
「何がそんなに悲しいんだ」
『知らないのか
ぼくらはみんな砕かれ
そして溶かされちゃうんだ
何もなくなる
なんて恐ろしい』
隣の空き缶は言う
「知らないのは君の方さ
君は空き缶なんかじゃない
君は鉄の一部分なんだよ」