フユ偲ぶ 猫目石 南風の翌日に 密やかな雨の日 梅の香りが凍って 結晶になったのを ヒトカケラ口に含む 舌先でゆっくりと溶かしながら しばらくぶりに白い吐息 私の背骨にだんだんに寄生するハルという生き物 フユの結晶でできた私の背骨を蝕んでいくので 私はとても浮ついて不機嫌になる もうフユはおしまい おしまいなのだからあきらめて 暖かくなる準備をなさい 背骨をハルに明け渡しなさい 南風の翌日は ささやかなフユの抵抗 私の体温に溶け出した梅の香りは みるくを飲む人形みたいに 涙腺から外へと逃げ出した とおざかるフユの いとおしさ 私は目を閉じて ハルを迎え入れる準備をはじめる |
作者紹介/猫目石。とうとう春めいてきちゃいました。春は苦しい。私はハルアレルギーです…。 |