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嘘が重なれば

ちの


昨日あなたがしてたこと

知ってるのよ,わたし

桃色にふやけた肌色を

ずっとずっと撫で回して喘いでいたこと

絞首刑はもうとうの昔におしまいになったけど

代わりにこのふたつの腕があること

忘れないでね


あなたがわたしに誓ったのよ

まるでおもちゃのように

欲しくて欲しくて仕様がなかったおもちゃみたいに

わたしを欲しがった

そしてわたしをその手に捕まえたのよね

でも,

わたしはあなたのおもちゃじゃないのよ

たとえ捕まえた,そうだったとしても

忘れないで

あなたが誰と幾人のおんなと

腰をふろうと勝手だけど

わたし,嘘が大嫌いなの

まだ気付いていない あなたに

教えてあげる

わたしの眼はガラス玉じゃないのよ

あなたが誤魔化すときの表情くらい,もう

いやってほど知ってるわ

そして,あなたの鼓動を止めるには

わたしの腕は確かに細いけど

いくらでも術はあるのよね

お伽噺にもあったでしょう?

いくらでも裏返るの

幾つの嘘でわたしが裏返るのか

それを知りたければ続ければいいわ

答えはやがて出るから

別にわたしが望んだことじゃない

むしろ望んでなんかいないわ,いえ,やっぱり

どこかであなたの裏切りを見届けたいのかもしれない

言葉なんて何の頼りにもなりはしないものね

だからもうしばらく

ただあなたがすることを見ていてあげる

あなたが自分の言葉を置き去りにして

わたしを置き去りにした

その罰を受ける その時まで



作者紹介/ちの。つくづく,言葉と女って怖いなぁと思う今日この頃です。ホームページ