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祈る

リョヲ


よく晴れたとってもいいお天気の日に、ちっちゃい天使はうれしくなって、はしゃぎすぎて、

雲の上から足をすべらせてアリャリャとおっこっちゃった。

天使はまだちっちゃくって、一人では帰れないから、神様に助けを求めました。

けれども雲の上の神様は知らん顔。ちっとも助けてくれません。

天使は悲しくなって、ちょっとだけ泣きそうになりました。

そこへやってきたのが教会の神父さま。なんだか不思議そうな顔をしていたけれど、

泣き顔の天使を見るとニッコリ笑って言いました。

「オヤオヤ、どうしたのかな?パパとママとはぐれちゃったのかい?」

アレレ、と天使は思いました。

(この人には羽根が見えないのかなあ?僕はまだちっちゃいけど、でもちゃんと羽根があるんだぞ)

神父さまはニコニコしながら、天使を抱き上げました。

「大丈夫だよ、神様がパパとママを見つけてくれるからね。」

やってきたのは教会の礼拝堂。そこではたくさんの人たちがお祈りを捧げています。

「サァ、おじさんと一緒にお祈りしよう。君がおうちに帰れるようにねぇ。」

天使は神父さまの手を握りながら、壁にかけられた十字架を見上げました。

それはとっても大きくって、天使の知らない人が打ち付けられた、なんだか怖いものでした。

(なんだい、こんなの神様じゃないや。こんなの、ただの造りものだい。この人たちは神様を知らないのかなあ?)

 それでも、礼拝堂のおじさんやおばさんたちは、みんな一生懸命にお祈りをしています。

自分のこと。

明日のこと。

病気のおじいさんのこと。

死んでしまった恋人のこと。

生まれてくる赤ちゃんのこと。

生まれてこれなかった赤ちゃんのこと。

幼くして死んだ弟のこと。

無言の懇願。救いを求める心。賛美歌。祈り。

「おやおや、どうして君はお祈りをしないんだい?神様はいつも見ていらっしゃるんだよ」

じっとしている天使に、神父様は言いました。

「神様は、僕を助けてくれるの?みんなを救ってくれるの?」

 天使はポケットからちっちゃなちっちゃな矢をとりだして、一番前の席の太ったおばさんに放ちました。

おばさんは「ひゅっ」と息をはきだして、パタリと倒れ、もうそのまま動かなくなってしましました。

天使は次々に矢を放ちます。

やせこけたおじいさん。たくましいお兄さん。綺麗なお姉さん。子供を抱いたお母さん。

みんなパタリパタリと死んでいきます。面白いほど簡単に、みんなみんな死んでいきます。

神父様は驚いて、神様に助けを求めました。

けれども天使の矢は人々の胸に、首に、額に、目に。

次から次と刺さっては、祈りとともに消えていきます。

(やっぱり)

最後の矢が神父様の喉に刺さった時、天使は思いました。

(やっぱり、神様は誰も助けてくれないんだ。神様は人を、そして僕を救えないんだ)

天使は少し笑って、泣いて、もう一度笑って。

教会の屋根へ駆け登り、空に向かって叫びました。

「神様!神様!救えない神様!誰も助けてくれないなら、神様なんていらないじゃないか!」

そして天使は、教会のてっぺんから翔びました。

ちっちゃな羽根をはばたかせて、心よりも、祈りよりも速く。

クルクルクルと回りながら、春の花の咲き乱れる庭の中へ降っていきました。



作者紹介/リョヲ。こんつは。リョヲと申します。イカレているそうです。電波系なんか好きです。つーか読んでくださった方はわかると思いますが、筋肉少女帯のフレーズとかパクってます。どーぞよろしく。