毎日が行方不明
夏井椋也
僕がまぶたの裏側でゆったりまどろんでいる
僕が耳たぶにつかまってうっとり揺られている
僕が唇の端で慎ましやかに微笑んでいる
僕が紛れもなく
僕でいられる時間はとても短い
僕が視線の先を滑り降りてゆく
僕が鼓膜を破って飛び散ってゆく
僕が乾いた言葉と一緒に吐き出されてゆく
揚句の果ては
君の後ろ姿についていったまま帰って来なくなる
がらんどうの僕は他の誰かを装って
行方不明の僕を今日も探しあぐねる
僕でいられる時間はあまりにも短い