詩人達の部屋

詩人ギルド

リンク

作者へメール


肉片

猫目石


貴女の肉片を見つけたものですから

私は大事に拾って隠しに仕舞いました

まだ瑞々しく生々しく

温度を保っていましたが

何しろこの暑さです

暴力的な陽射しのせいで温もって

腐っていただけなのかもしれません




匂いはしませんでした

えゝ全く




セミの声がいつまでもいつまでもいつまでも

いつまでもいまでも

病まない




貴女の肉片を透明に濾過する方法だとか

そんなものを捜してはいるのですが

余計なお節介だとばかりに

肉片はいよいよ精力的に

腐っていくのです




鮮血がどす黒く酸化していくように

夕焼けがどす黒く夜になっていく

貴女が奇麗に腐っていく




私は貴女の肉片を埋めることもせずに

ただひたすらに見つめていた




セミの声がいつまでもいつまでもいつまでも

いつまでもいまでも

穏やかに聞こえている









作者紹介/猫目石。この詩のもとになっている夏的物語を見せてくれた「くま」に感謝をこめて。(私信)