詩人達の部屋

詩人ギルド

リンク

作者へメール


太陽と月が衝突するときの思惑

中島理


    一


内世界で泳いでいるの?

まだ地面に這いつくばって

それでもなお治まらぬ熱病


頭を抱え込んで何かをすれば

同じくらい苦しんで

僕がよろけたフリをして

現実との衝突を避けてゆく


狂人の真似事はもう止せば?

いいのに「ありのまま」の仮面は外せない

僕が本音だと思っている僕は

少し現実離れしているから


  二


全ての僕が上手くいきますように

自分だらけの檻での離島生活

快い優しさは他人に向けるもの

自分には冷めた言葉で飯を食らう



  
全てを今やっている真似事のように消せれば

間違いなく酔わずにいられるのに

僕は杯に注がれた神様を受け入れずにはいられない


だからお願いもう少しだけ

自分が浸かって発酵しきったそれに

唇を温ませたままでいさせてくれ

個々の生命の存在意義など

それから聞かせてくれればいいし

それから試行錯誤すればいいのだし


  三


寝床に潜って

まだ内世界にいるのか


太陽の光が射していることが恐いから

僕は朝の訪れを電車の音で知る

いささか都会めいた片田舎の呟きだが

僕を次に来る日に怯えさせるに十分


もう止めてくれと思って這い上がったとき

眼前に広げられた空で

ほら、アポロンとディオニソスがにらめっこしているよ



朝が来るのが恐いんだ

煌びやかな衣装が

僕の恥と恥とで縫われた

安っぽいニセモノだと判ってしまうから


夜はそれはそれで恐いが

まだ自分が居てよい時であろう


幾らかの星が

また僕の瞳をつんざくから

そしてそれらが放つ光は

僕が身に纏うものを明確にしない


僕が着けっぱなしの仮面は

そのまま「本気」だと思われて

それでもいいかと

誤解を休ませ、眠る

そんな時刻の空には

いつも太陽と月が衝突している




作者紹介/中島理。H.Nはコトワリ。立教大学文学部日本文学科。詩を書くことは排泄に近い、と常々考えている。