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薄弱なる精神をぶら下げる者へ

中島理


  一


うろたえる

君は

日常をこれだと言えない

言葉を持たぬ

君は

何処へも行けず

助けも求められず


朱欒は果物かと

 苦瓜は野菜かと

  もう眠くて答えられないと

   もうどうでも良くなったと

    あぁ、何て弱いのでしょう?

女は愛すべきものだと

 男は競うべきものだと

  もう何も言えやしないと

   もう何も触れたくはないと

    あぁ、震えが止まりやしない


  二


疲弊しきった胸は

 これ以上の急な鼓動に耐えられぬ

酔い潰れた頭は

 これ以上の急な衝動に応じられぬ


だからこそ

薄弱なる精神をぶら下げる者よ

君の全身、善心をかけての煩い事は

 もう私は見たくない

 もう私に見せないでくれとも言いたい


唯、言葉は

吃ってしまい聞き取れない

表現出来ずの君よ

君はまるで出ししくじった

くしゃみのようで

げっぷのようで

 もう私はそれを見るとどうしていいのか

 もう私にどうしろと言うのかと


唯、弱さ、その他で片を付けるのか?

君の枕元では常に葬列が

泣き笑いで通っている

 「申し訳ない。」

謝りたいのだ、私は

妙な質問をぶつけてしまったもんな

君が、いやお前が

いつも憎き空、青空を見上げ

いつも笑顔と泣き顔を潰して

何か新しい肖像にしてしまい

そう描き上げてしまったのは

もはや言い訳も出来ぬ程

私、いや俺のせいなのだ


  三


だから今は言葉を出さずに

だから今は言葉を殺しつつ

知る人を見ては笑ってくれ

 俺も笑われたいなぁ

 そして笑ってもみたいなぁ

だが今更どうしようもない

無表情だと画鋲をとめられ

俺、もはや僕は泣くことも出来ず

せめてそれさえ許されれば

土下座をしつつ

お前に詫びることも出来たであろう


あぁ、薄弱なる者

あぁ、薄弱にされてしまった者

お前は僕は一人きりだ

お前は遠くにいるのだ


ためらう

「生きる」と言うことに

うろたえる

「生きろ」と言われることに




作者紹介/中島理。H.Nはコトワリ。立教大学文学部日本文学科。詩を書くことは排泄に近い、と常々考えている。