詩人達の部屋

詩人ギルド

リンク

作者へメール


無銭飲食

喜太郎


階段を足早に駆け上がって

ノックもせずにドアをぶち開ける

いかつい顔したねえちゃんが

何もなかったかのように

黙々と煙草の煙を吐き続ける


「人生なんてこんなものよ」

もみくちゃにされながら

蹴りまくられながら

君は静かにこう言って

冷たい目で僕を見上げる


ぼろ雑巾のように投げ捨てられ

階段を転がるように落ちて行った君を

僕は振り返りもせず

追いかけもせず

ただひたすらに

茹で上がったばかりのラーメンに舌鼓を打つ


「人間って馬鹿だよな」

打ちひしがれた子犬のように

路地裏の片隅でうずくまってる子供達

サンドバックのように

叩き殴られぼろぼろになった僕は

大きな窓から飛び降りた


「人はどうして生き続けるのかな」

全身を衝撃が走り

僕は捨て猫のように 来る人を

起き上がることのできないこの場所で

声にならない声をあげた


「忘れなさい」

君はそう言ってキスを投げかける

逃げたくてもできない

迫り来る君の背後に大きな影

すべては一瞬の出来事

意識は朦朧として

世界は止まってみえた


「人はどこから来てどこへ行こうとするのかな」

誰かが僕らを見下ろしてる

かすかに聞こえるざわめき

いや...、もう何も聞こえない

ただ無性に眠りたい

静かに ただ静かに



作者紹介/喜太郎。八戸喜太郎(♂)。大阪出身。