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来年の手帳

猫目石


来年の手帳を買いました。

私は真っ先に

あなたの誕生日に印をつけた。

アドレスの一番最初に

そらであなたの住所を書いた。

どうぞ来年も

あなたの誕生日を祝えるように

ほとんど切実に近い状態で

穏やかに祈りながら。




今年の手帳から

移されていく家族の誕生日

ともだちの誕生日

金魚の来た日

金魚の逝った日

それからあのひとの

命日




来年のアドレスには移されない住所や

移されない誕生日や記念日も

少なからず。




手帳は大事にとっておきます。

年に何度あなたに会えたかなんて数えないけど。

あなたの名前を誕生日をアドレスを

真っ先に書き入れる。

そういう手帳が何冊たまったのかなんて

数えないけれど。




どうぞ来年も

あなたの誕生日を祝えるように

ほとんど切実に近い状態で

穏やかに祈りながら。








作者紹介/猫目石。新しい手帳に誕生日や住所を書き移す作業は、なんだか対人関係をふるいにかける作業の気がする。わりとシビアな問題だ。