詩人達の部屋

詩人ギルド

リンク

作者へメール


独り

かみすぎしょうへい



百万遍に向かう道に落ち葉が一枚

手には切り抜いた一片の新聞記事

電信柱には11月祭のポスター

四半世紀前に初めて踏みしめた舗道

美術館を探しながら歩いている

たどり着いたビルの二階

狭いフロアには老いた読み人と若いファンが一杯

なかなか進まぬ列にいらだつ心を置き忘れ

講演会場に身を移す俺がいる

京都から出発した中也の物語が始まろうとしている

倦んだ心を諌める奴等はここにはいない

2時間を超えるマイクロフォンから聞こえる詩人の声

アスファルトの社会を忘れたいと叫んでるはらのなか

俺はここにいるんだと

失われたのはさまざまな夢

震えすぎた鼓膜を抱いてビルを出る

出町柳に向かう途に濡れた落ち葉が一枚

肩には新たな一冊の詩集の入った鞄

塀には湿った祭りの後のチラシ

世紀末に重くなった足の跡

明日を捜して生きあぐねている

たどり着くのはやっぱり独り



作者紹介/かみずぎしょうへい。久しぶりに投稿します。ホームページを作ろうと思っているのですが、仕事に疲れてなかなか着手できません。