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かけらの歌

八木隆充


埃の匂いのする窓辺で

何も見えないまま夕日を浴びていました


それでも空は広くて

行く当てのない雲を静かに包んでいました


僕はきっと忘れているんだろう

転んでも駆けていた夕暮れの運動場


君はきっと忘れていくんだろう

誰の為でもないあの空を見上げながら


大袈裟な笑い顔のフォトグラフ

たわい無い時間が宝物だった


当たり前に捨てた歌の欠片達が

呼び掛ける理由 まだ聴こえますか?


僕はきっと忘れているんだろう

寂しくて泣き腫らした瞳 


その痛みさえ 僕はきっと忘れないんだろう

穏やかな風に吹かれるその時まで


日の暮れた空にもまた月が登る


一つしかない月を見上げています



八木隆充

1971年生まれ。デザイン、イラスト、写真も手がける歌って踊れる吟遊詩人。企画機関<PPP>幹事会員。