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きっと

八木隆充


それは風と光の強い午後だった

立ち上がる砂埃に一瞬の幻を見た

そこには何もない事を知った僕は

目をそらす事も出来ないまま 泣きそうになっていた


巻き戻された記憶に重なったものは

もう語られる事もない物語

きっと僕の知らない顔で

きっと君は微笑んでいる


壊れたおもちゃ抱え泣いている

壊れたおもちゃは直らないのに

掠れた涙の跡拭ってくれる指先を

夢の中ずっと待ち続けた 


いつまでも寝た振りをして

雲間から覗く青空が何故か

やけに遠く鮮やかに見えた

きっと僕の知らない場所で きっと君は歩いている


冬の気配のする街角で佇む僕は

今も忘れ物を探しています


きっと僕が気付けないままに

きっと君は気付かないままに



八木隆充

1971年生まれ。デザイン、イラスト、写真も手がける歌って踊れる吟遊詩人。企画機関<PPP>幹事会員。