小ネタの部屋

 

その1.

『もしもしぃ?木村ぁ?俺、俺ぇー』
『あぁ、どした?』
『あのさぁ、コンサートで、使いたい曲あんだけどさぁ、曲名思い出せねんだよなぁー』
『ん?どんなヤツ?洋楽?』
『洋楽、洋楽。だから、歌詞も解んねーじゃん』
『どこで聞いた?』
『コンビニ』
『コンビニ、かぁー・・・』
『だから、俺ちょっと歌うからさぁ、おまえ判別して』
『えっ!?おまえの歌を!?判別しろってぇ!?』
『うるっせぇな!マジで歌っちゃる!ぜってー、判別しろよっ!』

キュルキュルキュルッ・・・

『だぁかぁらぁー!なぁんでわっかんねぇんだよぉっ!』
『声紋判別の専門家でも、ぜってー!わかんねぇっ!なんだってぇ?』
『何っ回!歌わせんだよっ!だからなっ?』

奇妙な鼻歌が続く。

『どこのコンビニ!?』
『ローソン』
『ローソンか・・・。そっちに問い合わせしてみっか?』
『えぇー・・・?おっめ、マジでわかんねぇのぉ?』
『解れってゆーなよぉー・・・。無理だってぇ。それその曲の作曲者だってわかんねぇって』
『ひつれいなっ』

キュルキュルキュルッ・・・

『ん?ちょっと、待て・・・?』
『解った!?な!』
『ひょっとしてさぁ、こういう感じ?』
『んー・・・!それ!それだって!なぁんだよぉ、おめぇさぁ、手ぇかけさすなよぉ。それ、誰のなんて曲?』
『えっと・・・』
『何、何?もう、俺もさぁ、あんま時間無駄に出来ねぇんだからさぁ』
『・・・』
『なぁ、何?』
『・・・えー・・・、前にラジオでかけたんだけどぉー・・・』
『思いだぁせぇよぉー!!』

キュルキュルキュルキュルキュルキュルッ・・・

『それとな、この曲・・・、聞こえてっかぁ?』
『聞こえてるー!んー、あぁ。えっと、でもそれだったら、さっきのとかぶるぜ』
『いやだから、似た感じで』
『似た感じでいいんだったら、あんま売れてはないんだけどさぁ』
『ん?んー・・・、でも、どっかで聞いたぞ、それぇ・・・。ちょっと、さぁ、あのー、さっきのヤツ、もっかい聞かせて』
『さ、っきの・・・、ってこれか』
『・・・あ、違う。も、一個前?』
『ちょっとめんどくせーよ!CD持ってくわ!』
『そーじゃん!何やってんだよ、おまえ、電話で!』
『・・・』
『持ってきてくれりゃあ早ぇんじゃねぇの!?』
『・・・すみませんねぇ』
『そーだよ、まったくよぉ。忙しいって言ってんべ!』
『はいっ、はいっ、すみませんっ。週休4日の分際で、申し訳ございませんっ』
『謝るより先に急ぐ!』
『へーい』
『返事は短くっ!』
『へいへいっ』

「ってさぁ、俺、30分も聞いてたのに、つまんない話ばっかりしてね、出かけちゃったんだよねぇ・・・」
「ご、吾郎、ちゃん・・・?」
「出かけるなら、出かけるで、言ってもらわないと、ついていく都合ってもんがあるでしょう?」
「ついてくって・・・?」
「えぇ?後、つけない?普通」
「つけない。つけないよ、吾郎ちゃん」
「え?暇な時に、電話の盗聴とかしない?」
「しない。できないし・・・」
「できないの!?慎吾も?」
「うん。できない・・・」
「・・・変なのぉー・・・」

吾郎の盗聴テープのコレクションの中に、自分たちの声が入らない事を心から祈るしんつよコンビだったが、すでにもう入っていることは知らなかった。


その2.

昨年、SMAPのリーダー、中居正広は、メンバー中ただ一人、長者番付にのらなかった。
それもそのはず。中居正広の収入は、「月給制」ではなく、「お小遣い制」だった。

「あ。もう、シャンプーないや・・・」
そろそろリンスも、と、中居は、規定の用紙を取り出してかき出す。スーパーマイルドシャンプー、ロレアルのオレンジのリンス。
毎日300円のお小遣いをもらっているだけの中居に、生活必需品を買う余裕はない。
なので、足りなくなったら、規定の用紙に記入して、社長に提出することになっていた。社長の決済がおりて、総務に回り、それから、品物が届く。
今回の申請は、『1週間したら、マツモトキヨシの売り出しがあるので、それまで待つように』との返事が返ってきた。
「・・・お湯で薄めなきゃ・・・」
残り少ないシャンプーボトルを開けながら、ちょぴちょぴとお湯をいれてみる中居だった。

仕事場でふとみると、スタッフがジュースを買おうとしていた。120円いれたところで、すかさず自分の飲みたいコーヒーのボタンを押す。
「えっ?あ、中居くん」
「へへぇー、俺、これ飲みたかったんだぁー」
「あ、あぁ。うん。どうぞ」
ちょーだい?と満面の笑顔でにぃーっこり笑うと、大抵断られない。
一日300円のお小遣いをもらっているだけの中居に、120円も出して缶ジュースを飲む余裕はない。

「・・・おなかすいたぁ・・・」
って時は、規定の用紙に「パン」と書いて提出したりもする。けれど、何せ、その書類が社長の元についてから、決済がおりて、パンがつくまでには3時間くらいかかっちゃったりする。ぐー。鳴くおなかを抱える中居は、だから、早く申請すりゃあいいのに!と自分で自分を叱咤しつつ、その辺で食べるものを探したり、ねだったりする。

が。
「あっ。1本ちょーだぁーい」
「・・・おまえさぁ。もう、小遣いつかっちまったんだろ」
さすがにメンバーのガードは固い。
えへぇ?と笑う笑顔も、作り丸解りでは、すぐばれる。
「いーじゃねぇかよお!ケチケチすんなぁー!」
仕方なく1本渡し、ライターも渡した木村は、大きくため息をつく。
「なんなんだよ、お小遣い制って・・・」

各グループのリーダーはお小遣い制のため、5月1日メーデーには、デモ行動もしてみる。社長の部屋の前で、お小遣いあげろー!とシュプレヒコールをあげたりもする。今年は一気に一日500円を要求してみたが、労使話し合いの結果、一律80円の引き上げで、妥結した。

そういう訳で、お小遣いタレント中居正広は、1日380円のお小遣いで生活している。


その3.

あたしのなまえは木村ボニータです。ボニってよばれています。ボニは、パパと、ふたりぐらしです。パパは、カッコよくって、おもしろくって、ちょっぴりこわいときもあるけど、ボニにはとってもやさしいです。
ボニとパパは、いつもいっしょです。
あそびにもよくいきます。
おうちだったら、いっしょにおふろにも入ります。ボニは、おふろがだいすきです。おふろは、あったかいです。みずあそびもできて、すごくたのしいです。
ボニがおふろに入るのは、パパがはいっているときです。パパがおふろにはいるときは、ドアがあいているので、ボニはそこから入ります。
それで、タイルのところで、あそびます。いろんなあそびどうぐがあって、おふろは、やっぱりたのしいです。
ボニは、まだちっちゃいのに、からだはおっきいから、パパは、ボニをあらうのはたいへんだっていいます。ボニは、シャンプーしてもらうのも、だいすきですが、たいへんなので、そんなにいつじゃあ、ないです。
でも、パパがあらってもいいなってときは、おみずのうえを、ぱちゃぱちゃってたたきます。そうすると、それは、はいっておいで、ってことなので、ボニは、ぱちゃん!っておふろにはいります。おぼれたらこわいので、パパのうえに、いそいでのります。パパのうえにねそべって、かたのとこに、ボニのアゴをのっけてると、ふわぁーーとあったまって、きもぉーちいいです。
ねちゃいそうになっちゃうほどです。
でも、ねちゃったらたいへんなので、パパはボニをだしてくれて、シャンプーしてくれます。
パパのてはおっきいので、ボニは、シャンプーしてもらうのが、とってもすきです。
ボニもパパにしてあげたいっておもいますが、ボニのては、ちょっと、パパとはちがうみたいで、うまく、できません。なので、テレビでみた、ごんたくんのように、パパのかたを、もみもみーしてあげます。
パパは、とても、うれしそうです。
そうして、おふろを出たら、また、いっしょにあそぶんです。
ボニは、パパが、だいすきです。

きょう、ボニは、あそびすぎちゃったので、はやくにねました。ボニはまだこどもだから、はやねしたほうがいいんです。
でも、なんでか、 めがさめたら、パパがいませんでした。
パパは、いつもボニといっしょなのに、おかしいです。おでかけかなぁって、げんかんにいこうとしたら、おふろのおとがしました。
パパはおふろにはいっているのです。
じゃあ、ボニもいっしょにはいろうっておもったら、どあがしまっていました。
あれぇ?
ぼには、ドアはあけられるけど、そんなにとくいじゃありません。ボニのては、パパとはちょっと違うからです。
でも、なかからは、ぱちゃぱちゃってきこえてくるので、パパはボニをよんでいるとおもいました。だから、いっしょうけんめい、よいしょ、よいしょ、ってドアをあけようとしました。
あっ!かぎが、かかっています。これは、かぎが、かかっているって、ことです!
ぱちゃぱちゃっ!っていっぱい、いっぱい、おとがしてるのに、かぎが、かかっています!

パパは、うっかりやさんなので、ボニがはいれないのに、ボニをよんでいます。でも、あんなにいっしょうけんめい、ぱちゃぱちゃぱちゃぱちゃってやっても、かぎがかかっているから、ボニははいれません。
パパったら、おばかさんだなぁっておもいます。
こんなふうに、おっちょこちょいなところもあるけど、ボニがついててあげないと、だめなんだなぁって、パパのことがかわいくおもえます。

だから、やっぱり、ボニは、パパがだいすきです。


その4.「・・・・職人」

ここ、香川県財田町。今日もまた、職人の手によって、新たな作品が生まれようとしていた。
「・・・できた・・・っ」
釜から取り出され、作業台の上に置かれた作品に、この道一筋の職人はかすかな笑みを浮かべる。
「先生・・・」
助手が感極まった声をあげた。
「完成、でしね・・・っ」
「うむ。どう思う?」
「こりは・・・っ。先生の、代表作になること間違いないでしゅね」
「はっはっはっ!」
職人は豪快に笑う。
「あんまり喜ばせるな。しかし」
かっ!とカメラ目線で。
「マヨネーズは、一気に飲んでまでが一つの作品だ・・・!」
「げ」
「・・・試して見るか」
柔らかな笑顔で職人は弟子に言った。
「え、いや、あの」
「たぁめぇしぃてぇみぃるぅかぁ〜?」
「いやっ、もぉ、完成してると思いますっ」
ごん。
マヨネーズのキャップが額に刺さる。
「試そうよ」
「いいです」
「試しておこうよ」
「いやですってばっ、ぎゃっ!」
新作マヨネーズは、無理やり弟子の口に流し込まれた。
「ど・・・・・・、どぉです、か・・・・・・・・」
眉間に深い深い皺を刻み、口元からマヨネーズ、だぁ〜!となっている弟子を、真剣な眼差しでじっ!と見据えたマヨネーズ職人は。
「だめだぁぁっっ!!!」
とマヨネーズを投げ捨て、弟子から飛び蹴りをくらった。
『マヨネーズ一筋32年、マヨネーズ職人香取慎吾』


その5.「・・・・職人」

ここ、山梨県清里。今日もまた、職人の手によって、新たな作品が生まれようとしていた。
「・・・できた・・・っ」
釜から取り出され、作業台の上に置かれた作品に、この道一筋の職人はかすかな笑みを浮かべる。
「先生・・・」
助手が感極まった声をあげた。
「完成、でしね・・・っ」
「うむ。どう思う?」
「こりは・・・っ。先生の、代表作になること間違いないでしゅね」
「はっはっはっ!」
職人は豪快に笑う。
「あんまり喜ばせるな。しかし」
かっ!とカメラ目線で。
「ポエムは、朗読してまでが一つの作品だ・・・!」
「げ」
「・・・試して見るか」
柔らかな笑顔で職人は弟子に言った。
「え、いや、あの」
「たぁめぇしぃてぇみぃるぅかぁ〜?」
「いやっ、もぉ、完成してると思いますっ」
ぎゅ。
弟子の小さな顔が両手でつかまえられる。
「読もうよ」
「いいです」
「朗読してみようよ」
「いやですってばっ、先生が読めばいいでしょっ!ぎゃっ!」
いつの間にやら拡大コピーされ、壁に張られていた職人の作品、ポエム「あなた」を見せられる。
『レェスのカァテンが風にそよぐ朝
キラキラと妖精の羽根のようないたずらな光に
私はあなたを思う
いつだって、キラキラと輝いて
そうか
あなたは、きっと妖精さんなのね』
「・・・・・・・・・・・・・・」
血を吐くような朗読の末、こめかみをピクピクさせながら弟子は職人を睨んだ。そして睨まれたポエム職人は。
「だめだぁぁ〜〜っっ!!!」
と拡大コピーを破り捨て、弟子からタコ殴りの上、背中への回し蹴りをくらった。
『ポエム一筋40年、ポエム職人木村拓哉』


その6.「募集中」

「ポケモンジェット・・・」
スマスマの控え室。積み重ねたザブトンの上にくってりと体を預けている中居は、ぺらぺらめくっていた雑誌にその文字を見つけた。
「あー・・・、俺、これ、乗れる〜・・・。だってぇ、出る時間遅いしぃ。俺、これ、乗れるわぁ〜」
たらぁ〜んとした口調は、音量だけは大きく、その場にいた他のメンバーたちは、ぴたっと私語をやめた。
「おい・・・っ、中居、ポケモンなんて知ってんのかっ・・・!」
「・・・ポケモンってのは、ピカチュウのことだと思ってると思うな・・・」
「つよぽんに一票・・・」
「だよなぁ・・・」

「ポォケモンジェットー、乗ぉれる〜」

「ちょっと・・・、どーすんの、木村くん」
「どーするもこーするも・・・」

「ぼしゅーちゅ〜!」

「来たぁ〜っ!!」
「俺をぉ、ポケモンジェットに乗せてくれる人、ぼしゅーちゅうぅ〜!」
ザブトンは、2列3段に並べられていて、その上に仰向けに横になった中居の手足は、てろんと畳の上におちている。その手足をだるそうに動かしながら、天井に向かって中居は声をあげる。
「ぼしゅう〜ちゅう〜〜!」

「吾郎、吾郎っ!雑誌雑誌!どこだ、ポケモンジェット!」
「えーっと、これだ!あ、結構遅い時間のもあるんだねぇ」
「あったって、遅かったら帰って来られないじゃん!」

「ポケモンジェットに乗せてくれる人ぉ〜、ぼしゅーちゅ〜!」

「中居、スケジュール空いてんのか?」
「空いてる訳ないじゃん。無理ゆってんだよぉ」
実は、中居正広には、疲れると『募集』してしまうクセがあったのだった。

「ぼしゅ〜!ポケモンジェット〜、のりたぁ〜い!ボケモンジェットに乗せてくれる人ぉ〜!」
手足のじたばたが徐々に大きくなってくる。
ざぶとんからずり落ちそうになりながら、まだ暴れているうちに、どすんっ!という音とともに、頭から落っこちた。
ひぃっ!
どーする、どーすると話し合っていた一同が息を飲む。
そぉ〜・・・っと中居の様子をうかがうと、上半身だけをザブトンから落としたまま、両手で頭を押さえてじっとしている。
トロンと眠たそうな目で、じぃー・・・とどこか空中を見つめていて、口元が微かに動く。
「い・・・、痛い、って・・・?」
「『ぼしゅーちゅう〜』じゃない・・・?」
動くことすら恐れつつ、一同は中居を見つめる。
その中居は、突然、すくっ!と立ち上がった。

「やばいっ!」
「慎吾っ!止めろ止めろっ!」
「中居くんっ!ダメだよっ!」
しかし中居の方が早かった。位置的にも近かったドアを開けると、そこから大声で、
「ぼぉしゅう〜〜っ、んぐっ!」
「やめてぇ〜っ!お願いだからやめてぇ〜っ!」
「吾郎っ!ドア閉めろ!」
中居は木村、剛、慎吾に3人がかりで部屋の奥に引きずり込まれ、吾郎が素早く廊下に誰もいないのを確認してドアを閉める。しっかりと。荷物もドアの前に置いて鍵もかけて。
「ぼしゅ〜!!」
「解った!解ったから!」
「ぼしゅーちゅぅ〜〜!」
「解ったっつってんだろ!どれ乗りたいんだっ!」
「チケット持ってきてくれる人、ぼしゅうぅ〜ちゅう〜!」
「携帯!」
さっ!と突き出された木村の手のひらに、ぱしっ!と手術中のメスのように吾郎から携帯が置かれる。
「ポケモンジェット!羽田から往復できる、一番遅い便1枚ずつ!」
予約OK!チケット取ってこい!財布を投げ渡された吾郎車を飛ばし、撮影時間ギリギリのポケモンジェットのチケットが到着した。

「ほら中居くん!来たよ!ポケモンジェット!」
「ポォケモォ〜ン!」
隙あらば廊下まで出て募集しようとする中居を、なおも押さえつけていた3人はホっとした顔をする。
「中居!これで乗れるからな!ポケモンジェット!」
「いぇ〜!ポケモンジェット〜!乗りたぁ〜い!」
畳に寝そべったまま、チケットを両手にじたばたしている中居を見ながら、メンバー一同、心の中で呟いた。

『どーせ乗らないくせに・・・・・・』

中居正広のストレス発散方法、『募集中』により、メンバーの神経は磨り減っていくのであった。


その7.「募集中2」

それは、最近からすれば、珍しい光景だった。SMAP全員で一つのロケバスに乗っている。メンバー以外には、運転手と、不謹慎にもうたた寝をしている最前列の下っ端マネージャーが一人だけ。
メンバーは後ろに固まって、寝ていたり、喋っていたり、色々だ。
「スノボぉ?」
「だって、最近、全然行ってないんでしょ?いーじゃぁーん」
「なんで、俺のボードおまえにやんなきゃいけねんだよ」
「木村くんち置いててもジャマだろうから、うちで預かってあげようか?って言ってんじゃん!」
「やぁーだねっ。おまえに渡すくらいなら、吾郎に渡す」
「な、なんで俺にっ!」
「ひっでぇー!前に中居くんには上げたんでしょーっ!?」
「バッカ!あれは、募集され・・・っ!」

『募集』!

喋っていた3人、そして雑誌を眺めていた剛がばっ!と顔を見合わせる。そして、8つの視線が、一番奥の長い座席で眠っているメンバーに向けられた。
「・・・寝てる、か・・・?」
「・・・だい、じょうぶ・・・」
4人は、そぉー・・・っと寝ている中居の側による。中居は、中居が乗る可能性のある移動車すべてに乗せられている、『中居様専用お眠り用クッション』をギュっと抱きかかえ、くー・・・、と眠っている。
「寝顔は天使だよな・・・」
「寝顔はね・・・」
あぁ、このまま寝ていてくれれば・・・!などと失礼な事を思いながら、座席に戻ろうとした時、小さな声が聞こえた。

「さばぁ・・・」

「鯖?」
「sava?」
「はい?」
「フランス語」
「はいはい、さすがは吾郎様だわね」
「鯖の夢?」
4人は取って返し、寝言の続きに耳を傾ける。
「鯖ってとこが中居だよな」
「だから、フランス語かも知れないじゃない」
「イスラエル語喋られた方がマシだね」
「え、慎吾、イスラエル語とか解るの?」
「だぁからつよぽんはダメなんだよぉ!」
「どーせ、塩焼きとか、味噌煮とかだよ」

木村が言った時、眠っている中居の口がぱかっと開いた。
その唇から零れ落ちた言葉は。

「さば、かれぇ〜・・・」

ぶぶっ!!
4人は、両手で口元を押さえ、必死に笑いをこらえた。そのままずりずりと座席に戻り、音にならない声で笑い合う。
「鯖カレー・・・!」
「違うねー、ゆーことが・・・っ!」
肩を震わせ笑っている4人は、後ろで災厄が目を覚ました事に気づいていなかった。

ぽか、っと中居は目を開けた。
何故だか、カレーが食べたい。ロケバスの天井をじっと見上げながら、そう思っている自分がいる。
欲しいものは募集すればいい。
かぱっと開いたままになっていた口から、思ったままの言葉が零れた。

「ぼしゅーちゅー・・・」

その寝起きのかすれた言葉は、笑っていた四人の耳にしっかり届く。
もちろん、その途端、四人の顔面からザっと血が引いた。
「やっべ・・・っ!」
まず木村が、そして、半瞬遅れて剛、慎吾と続き、吾郎らしい間をおいた吾郎が最後に中居の側に到着。その頃には、中居の顔を隠すように、4人分の上着がかけられていた。
「・・・間引くの?」
「ただでさえ一匹間引かれてんのに、これ以上減らせるか!」
マネージャーだの、運転手だの、まして、窓を開けて募集なんてされた日にゃあ!という配慮だった。
中居は、突如顔の上に覆い被さって来たものの正体が解らなかったのか、かきん、と動きを止める。
が。
がさっ!と顔を左右にふり、隙間を作った。
「ぼしゅーちゅっ、ぐっ」
木村の手が中居の口にかかる。
「何で鯖カレーなんだよ・・・っ!」
「あ・・・、これだ・・・」
「・・・おめ、これいっつのだぁ〜?」
吾郎が拾い上げたのは、何年も前のテレビ雑誌。表紙は浅野温子だった。
「あぁ、鯖カレーのドラマ。玉置さんと出てた」
「ふっざけんなぁ・・・っ!」
思わず窓からテレビ雑誌を投げ捨ててしまう木村。あぁっ!と吾郎が慌てた。
「何してんだよ!どーすんの、売ってる店とか書いてあったかもしんないのに!」
「あ」

木村の手が緩んだ隙に、中居が狭いバスの座席の上だというのに、両手足をじたばたさせ始めた。
「ぼしゅぅぅ〜!」
「わっ、解った解ったっ!」
「鯖カレェー・・・」
「鯖カレーな?鯖カレー」
「激辛鯖カレー、食べさせてくれる人ぉ、ぼしゅぅ〜〜ちゅぅ〜〜!」
「しかも激辛・・・」
ぼしゅぅ〜!と言いながらなおも暴れる中居の体に、コートを再び積み上げる。
「・・・ぼぉしゅう〜・・・!」

「どーする・・・」
中居の体が落ちないよう、それから多少なりとも声を防げるよう、中居バスの座席に足を押し付けている4人は、顔を見合わせる。
このまま現場についてしまったら、鯖カレーどころではなくなるし、ましてスタッフがいくらでもいる。
んー・・・、4人は鯖カレーについてじっと考えた。
「どこに売ってんだ・・・?」
「あのね、大きなスーパーとか」
「えっ?売ってんのっ?」
剛が驚き、またもやだからつよぽんは!と慎吾に言われる。口に出さなかっただけで吾郎もそう思っていたのだが。
「・・・鯖は買わなくてもいいってこと?」
「あのな。キャンピングカーじゃねんだから、これから鯖買って来て、カレーになんかできねぇだろ」
そもそも鯖カレーってどうやって作るんだ?
ビストロシェフとして、木村は真剣に考え込んでしまい、それどころじゃない!と首を振る。
「大きなスーパーだなっ?」
「コンビニにはないね」
スーパー、スーパー・・・と考えていると、吾郎が手を叩いた。
「この先、紀伊国屋がある」
「・・・き、紀伊国屋・・・。置いてんのかな・・・」
「行ってみなきゃわかんないじゃん!止めてもらお!」

まずは鯖カレーの缶詰を見つけ、パックごはんで買い、レンジがあればレンジでチンできれば・・・。

4人はそう思った。そこで、それじゃあそゆことで・・・、とその場を離れようとしたら、
「ぼぉしゅ〜〜〜!!!」
「あぁぁーーー!!」
体をねじってコートをはね落とし、力一杯募集した中居はそのまま座席から転げ落ちそうになった。

「何っ!?」
いくらボンクラでもこれだけの大声を上げればマネージャーでも起きる。
「あーのねぇー!」
慎吾がダッシュした。

紀伊国屋スーパーに行きたいんだけど、すぐすむから停めてくれないかな!とお願いしている間、3人はその体で落っこちそうになっている中居を支え、ヨイショ、ヨイショ、と座席に戻していた。

「ぼしゅう〜・・・」
「解ってるって・・・っ!鯖カレーだろ・・・っ?」
「激辛ぁ〜・・・」
「解ってるっての・・・っ!」
一度は起きた中居は、車の振動でまた眠たくなってきている。移動中=寝る、の条件反射。
「ぼしゅぅ〜ちゅ〜・・・」
徐々に声は小さくなっていく。しかし油断は禁物だ。

紀伊国屋スーパーの前にロケバスが止まる。中居の募集中再発防止対策班として、吾郎、剛がバスに残り、激辛鯖カレー入手班として、木村、慎吾が店に向かった。
「時間ないから急いでねー!」
ボンクラマネージャーの言葉を背中に受けながら。

「えーっと!」
「缶詰か?」
「カレーでしょ!」
カレーコーナーにダッシュで向かい、インドカレーだの、スリランカカレーだの、ボンカレーだの、地中海風カレーだのを見ていく。が。
「・・・ない・・・!」
「缶詰コーナーは!?」
ダッシュ!
「さくらんぼ、パイナップル、岡山の白桃・・・」
「おまえ、わざとやってるだろ」
「だって、こっちにあるかもしれないじゃん!」
スープ、カレーなどのところに鯖カレーはなく、慎吾は一縷の望みをかけながら、フルーツコーナーまで舐めるように見ていた。
「参ったなぁ〜・・・」
時計を見ると、タイムリミットは、後せいぜい5分。
「んー・・・!慎吾!ボンカレーの辛口買ってこい!」
「ボンカレー!?」

言われた通りに慎吾がボンカレーを買い、レジを抜けると、木村がなにやらごそごそやっていた。
「買ってきたよー・・・、って、何やってんのっ!?」
高級お惣菜コーナーに売られていた鯖の塩焼きをむしっているのだった。
「レトルトのごはんに、ボンカレーとこれかけて、レンジでチンする」
「・・・うそぉ・・・」
「後、だから、ラップとカレー皿!」
「あ、うんっ」

その頃、意識が急上昇、急降下する中居を相手に、吾郎と剛は、必死にトークで間持たせをしていた。
「ぼしゅーちゅー・・・」
「えっ、そうなんだ、中居くーん。すごいねぇ〜」
「だから、ゆったじゃん、剛ぃ、そうなんだって」
「激辛・・・・・・ぼしゅ〜・・・」
「またそんなこと言ってっ!解ってるって!ねっ、吾郎ちゃんっ」
「そーだよ、中居くーん」
ボンクラマネージャーには、3人のトークが盛り上がってるようにしか届かないが、実際には無理問答をしてるようなもの。中居の声よりはちょっと大き目の声で、中居の発言の不自然さを隠す必要もある。
その仰向けになっていた中居は、おなかのところにおいてあったクッションを抱えて、いきなりうつ伏せになった。
そして、座席のクッションに顔を押し付けて、
「ぼぉーしゅぅぅぅぅーーーちゅぅぅーーーーーー!!!!」
「だっ!!大丈夫ぅぅー!!!」
破裂するんじゃあ!というほどの力でクッションを抱きしめ、
「激辛鯖カレェーーーーー!!!!」
と叫ぶ。

「えっ!?今、中居くん、なんか言ったっ!?」
「咳ですねっ!大丈夫中居くんっ!」
「温かくしなきゃ!ほら!これ被ってっ!」
またもやコートで中居の、特に顔を隠していると、その一叫びに満足したのか、中居はうつ伏せのまま大人しくなった。
「・・・びっくりしたぁ〜・・・」
「もー、何やってんだよ、木村くんたちぃ〜・・・」

レンジでチンしていた。
「うわー・・・」
「なんか・・・」
「美味しくなさそー・・・」
レトルトごはんの上に、ボンカレー辛口&ほぐした鯖の塩焼き。辛さ調節のためにたっぷりのカイエンヌペッパー。
「・・・解りゃしねぇって!中居だもん!」
「そ、そーだよねっ!中居くんだもん!ボンカレー部分だけ食べさせりゃ!」
「その通り!」

そして『何ですそれ!』と驚くマネージャーを、うるさい!と一喝し、コートに埋もれている中居の元にダッシュした木村と慎吾。吾郎と剛は、中居の発掘にかかった。
「・・・だから、寝顔は天使なんだけどなぁ〜・・・」
「起きなきゃいいのに・・・」
コートの下からは、大事そうにクッションをかかえ、首を背もたれ側にねじってうつ伏せに寝ている中居が発掘された。
が。
中居の鼻が、ひくん、と動いた。
「・・・カレー・・・?」
「そうそう。鯖カレー。食うだろ?」
不精にも、横を向いたまま、中居は口を開けた。
「・・・」
殴ってやろうか、という思いをこらえ、買ったばかりのスプーンで、器用にその口の中にカレーを入れてやると。

もぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・・・・・・・。
ごっくん

「まじぃ」

「やめてぇ〜、木村くぅぅぅーーーんん!!!」
「食べたじゃん!食べただけマシじゃん!!」
「ぺっ、ってしなかっただけ、よかったってぇ!!」

吉良上野介を松の廊下で切り付けた浅野内匠頭のような勢いで、即席激辛鯖カレー(失敗作)を中居の頭にぶちまけそうになっている木村を、下3人が必死に止める。
マネージャーは、触らぬSMAPに祟りなし、という先輩マネージャーから代々伝わっている諺を忠実に守り沈黙を続けた。
頭の中で、突然、だんご三兄弟の歌が聞こえてきた中居は、あー、たまには団子もいいなぁー・・・。だんご三兄弟買ってきてくれる人、募集しよっかなぁ〜・・・・・・
などとノンキに考えながら、本格的な眠りに落ちていった。


その8.「募集中3」

ふーん・・・、ウェディングドレス新作かぁ〜・・・。春の花嫁さん。ふーん、そっかぁ。ウェディングドレスなぁ、あれだよなぁ、幸せの象徴だよなぁ・・・。いいなぁ。幸せそーじゃん。なんかさぁ、笑っててさぁ。いいよなぁ。幸せ〜・・・。幸せになりてぇ〜・・・。

「ぼしゅーちゅーーーっ!!!」

なんの予兆もなく中居に募集され、衣装替え中だったメンバーは飛び上がった。もちろん、衣装のズボンに足を突っ込んでいた吾郎はそのまま横倒しに倒れる。
「なっ中居っ!?」
「中居くんっ!」
「ウェディングドレス着せてくれる人ぉぉーーー!ぼしゅーちゅぅぅーーー!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3秒ほど硬直したメンバーたちは、仮眠用のくそ重たい布団を中居の顔の上に落とし、さらに8秒ほど硬直した。

「・・・ウェディングドレス・・・?」
「・・・結婚したい、んじゃなくて、ウェディングドレス・・・?」
「あれじゃない?IZAMのさ」
「あぁ。嫁さんと一緒にウェディングドレスが・・・って、おいっ!!」
木村が会話を断ち切り、動いている布団を指差す。もぞもぞと布団の中から顔を出した中居は、目だけを布団から出し、天井を見上げながらくぐもった声で募集する。
「ヨッシーの衣装じゃやだぁー!!ウェディングドレスゥ〜、かつらゆみぃ〜!ぼしゅうちゅうううう〜〜」
ぐいっ!と布団をずらして、木村はなおも顔を覆い隠す。
「か、桂由美・・・!」
「で、でも、大丈夫だよ。中居くん、ブランドなんて解らないし」
「あっ!はいはいっ!香取慎吾っ!タグ作りますっ!『Yumi Katsura』って」
「桂由美のウェディングドレスって、タグついてんのか?」
「ああっ、木村くんっ!」
重たい布団がずりずりと動いていた。移動先は外に面した窓の方面。
ま、まさか、外に向かって叫ぶつもりか・・・っ!?
「な、中居っ!」
布団ごとひっくるんで、なんなら、このままロープで結んでやろうか!と思いながら、部屋の中央にひきずり倒す。
「ウェディングドォレスはぁ〜〜、しやわせの、しょーちょぉーーー♪」
「そうそう、ウェディングドレスは幸せのしょーちょーだよなぁ〜」
布団が開かないように、がっ!と引っ張りながら、きっ!と木村がメンバーたちを見る。こくん!と吾郎と剛がうなずき、衣装倉庫の強襲に向かった。慎吾は、布団が動かないよう、端に座り込み、衣装のタグを勝手に取り、桂由美と作り替えていく。
「ぼしゅーちゅーーー!ウェディングドレス、着たぁ〜〜い、着せてくれる人、ぼしゅゅう〜〜!」

なんでウェディングドレスなんだよ・・・。木村と慎吾は深い頭痛を必死にこらえる。

「木村くん・・・!」
「ご苦労!あ、それ、すげぇな」
「いかにもでしょ」
一人では運べなかったであろう、びらびらと体積の大きい物体。
「タグ、タグ!あーゆー人だけど、変なとこ気にしたりすっからさぁ」
「急げ、急げ。そろそろむずかり出した」
慎吾が持ち前の器用さであっという間に東京衣装のタグの上に、手作り桂由美のタグを縫い付け、全体を広げてみせる。
「おぉ。ザ・ウェディングドレス!」
フワフワのスカートに、オーガンジーとレースを多用したロマンティックなデザイン。
「ウェディング、ドレ、スぅ〜・・・」
「ほら、来たぞ、中居」
・・・しかしホントに着るのか・・・?と思いながら、重たい布団から中居を転がす。ころころっと転がった中居は、ウェディングドレスまで転がり、ふにゃ〜、と笑った。
「あ・・・、頬、赤らめてる・・・!」
「うっそ・・・、中居、マジ・・・?」
「どーするぅー、今度は結婚式までしたいって言い出したらぁ・・・」

「ウェディング、ドォレスはぁ〜・・・・・・しやわせの、しょーちょぉー・・・」
よじよじよじと動いた中居は、スカートの中に頭をつっこんでいく。
「そ、そんなムリヤリな!」
「ちょ、中居っ!」

と、細い足首をつかんだ木村は。

「・・・。ん?」
「何?」
「こいつ・・・」
両足首をつかんで、力一杯ひっぱる。
「あぁん、ウェディング、どれすぅぅ〜」
中居は、うつ伏せになったまま両腕をばたばたさせる。
「どしたの、木村くんっ!」
「こいつ多分」
よいしょっ!とひっくり返して、額に手を置く。
「熱ある」
「えっ!?」
他の3人も、小さい額だの、首だのに手を置いて、
「熱がある!!」
「しかもかなりな高熱!!」

「医者よべぇーっ!」
「募集じゃなぁ〜い!うなされてたんだぁ〜!」
「点滴の準備ぃ〜〜っ!」

たまにはこういう事もあるのだった。


その9.「クイズ王選手権」

スマスマの楽屋では、日夜クイズ王選手権が行われている。メンバー持ち回りで問題を出し合うのだ!真剣勝負だぞ!
今日の出題者:稲垣吾郎

吾郎はホワイトボードにカタカナを書いた。
『ゲッショウトウキタン』
「はい。これを漢字に直してください」
「えー!!!」

「なんだこれ」
中居がつぶやき、慎吾が首をひねる。
「げっしょ、うとう・・・、あ、う、とうき!たん!」
「けっしょ?う、とうき、たん?何それ」
「知らないよ。げっしょって月の始めだよ」
「げっしょ、う、とうき、たん・・・、っておかしかねぇかぁ!?」
そして手元のフリップに(そんなもんまで用意してある)書き始めた。

「どうだ!!月翔刀鬼啖!!」
ぎゃはははははーー!!!
大喜びしたのは、木村と慎吾。
「さっすが元ヤン!キが鬼!いいねぇ〜!」
「翔が横浜銀蝿だし!!」

「違うよね、月初だから、うーん、うーんと、はい!月初宇トウキ(焼き物とかの)短」
「・・・陶器も漢字でかけなきゃ意味ないだろ・・・?」
「つよぽん!トウキってどんな字!?トウキのセボン!!」
「違うって。えーっと・・・、これ、吾郎ちゃんの舞台の名前でしょ?」

「えっ!?」

中居と慎吾が目を丸くする。

「どんな舞台だよ、月翔刀鬼啖って!」
「違うよ、月初宇トウキ短、だよね?」
「どっちも違うっ!!」
「変な名前ー!俺ぜってー見に行かねぇ〜、慎吾は?」
「俺も行かねぇ〜」
「いいんだよ、君たちが来たって解らないんだから。ん?き、木村くん・・・っ」

「GESSYOTO KITAN」
「漢字に直せって言わなかったっけぇ?」
「でも、俺ちゃんと区切るところ解ってるぜ。げっしょうとう、きたん、だろ?」
「何、げっしょーとーって」
「島の名前だよな?」
「はいはい!これ!?」
剛のフリップには、「月生島木炭」と書いてあった。

「・・・知ってる漢字を並べたって感じ・・・」
「それ多分、月と島しかあってねぇぞ」
「はい!タイムアップ!全員はずれ!俺の勝ち!」
「なんだよぉ!もーちょっと時間くれよぉ!」
「8時間上げたって、解らないものは解らないの!えーっと、これで、俺が1勝プラスで、みんなが1負だから・・・。あー、やばいね、やっぱり中居くんだ」
「お!今月は中居のおごりか!」
「ばーかばーか!何言ってんだよっ!次見てろよ!俺の問題聞いてほえ面かくなぁ!?」

SMAPクイズ王選手権。交代で問題を出し合い、月のトータルで一番答えられなかったメンバーが、全員に食事をおごるシステムになっているのであった!果たして今月の敗者は誰か!こうご期待!!


その10.「すのもの」

それは、木村拓哉が渋谷スペイン坂スタジオに生出演した時だった。
スタジオ入りして、外が大騒ぎになった時、動物か!言うほど目のいい木村は、目の端に、ちらっとピンク色の物体をみつけ、えっ!?と驚いた。
あ、あれはもしや・・・!
しかし何分たった今スタジオに入ったところで、挨拶だの、なんだのをしなくてはならない。
そのため、ちゃんと確認できないまま、そのピンクの物体は通り過ぎていった。
あ、あれは・・・、もしかして・・・!
そして30分後、再びその物体がガラスの向こうに現れた。
木村は心の底から驚いた。『さん太郎じゃん!!』

「え?さん太郎?」
それから数日、スマスマの撮影中に、木村は吾郎に言った。
「そう!さん太郎来てたんだよ!すのもの来てたぜ、すのもの!」
「ウソ。だって、すのものって中居くん担当じゃん」
「んな事言ったって、来てたもんはしょーがねーじゃん。うわー、生さん太郎見ちゃったよぉ〜」
「えー!!さん太郎来てたのー!?スペイン坂ぁ〜!?」
慎吾が突如叫びをあげ、大袈裟に頭を押さえて苦しみ始める。
「俺も行けばよかったぁぁ!!スペイン坂ぁ!!!」
「羨ましいだろぉ〜」
「ねぇ、それじゃあ、すのものの人も見たの?」
「ん?いや、なんせ1分しかないし、さん太郎に釘付けだったもんだから(笑)」
「まぁ、でも・・・。僕の舞台のついでじゃない?」
「なんでだよぉ!」
「そう考える方が普通でしょ?なんで、中居くん担当のすのものが、わざわざ木村くん見にスペイン坂まで行く訳?舞台好きそうだし、そっちでしょ」
「じゃあ、銀座セゾンでさん太郎見たってのかよ!」
「いや、それはないけど」
「あぁぁぁーーーー!!!俺も見たいぃぃぃーーー!!さん太郎ぉぉーーー!!!」

「・・・・・・・・・・・・なぁ、剛ぃ」
「・・・・・・・・・・・・何、中居くん」
「・・・・・・・・・・・・あいつら、俺らの、メンバーだよなぁ・・・・」
「・・・・・・・・・・・・多分ねぇ・・・・」

さん太郎って何!?酢の物って何!?何を盛り上がってるのこいつら!と自宅にパソコンがある3人を、恐いものを見る目でじっとみつめる中居と剛だった。

後日。

「ほら!これ!これさん太郎だよ!さん太郎!!」

中居は、自分が出演しているサンジャンのビデオを無理やり見せられ、これがかばやきさん太郎だ!と木村からいわれ、どのあたりがかばやきなのか・・・・と更なる疑問で、小さな頭をいっぱいにした。

「なーんでしんねーの?すのもののさん太郎だってば!」

(いや、さん太郎に気づいて欲しくて(笑)いや、すのものは見てるはずや、となぜか思い込んでいて(笑)すのものはとってもステキなHPよ!さん太郎も可愛いの!すのものにはこちらからどうぞ!)


その11.「コンサート中」

SMAPは楽しいコンサート中だった。ノリノリのコンサートで、客席も一体化しており、死にそうになるけど、踊りまくるコンサートっていいよな、と木村が思った時、それが目に入った。
時々いる、敵、だ。
それは、気が違ったかのように踊ってる客席の中で、じっと腕組みをしているヤツだった。
許せん!
巧みなフォーメーションチェンジで、木村はその女の前に立った。
アリーナ最前でありながらその態度は何事だぁ!と思うと、腕組みしていた髪の長い女は、独特のリズムをとることはとっていた。そして俯き気味だったが、木村の強すぎる視線に気づいて、あ、という顔をしたかと思うと。

手にしていたマトリョーシカ人形を木村に向かって突き出し、わり!と謝った。

白昼夢・・・?

あのロシアの、開けても、開けても、人形が出てくるマトリョーシカを、その眼鏡をかけた女は開けて、説明を始めた。目ばかりか耳もいい木村には聞こえてきた。
「えーと、このマトリョーシカは5体のマトリョーシカになります」
そうか。5体に・・・。

5体じゃねぇだろぉー!!

木村はただちにフォーメーションを解除し、メンバーの元に急いだ。マトリョーシカを持ってきてる女がいると!

マトリョーシカ?このくそ暑い場所で何をノンキな!と稲垣吾郎がやってきて、3体目のマトリョーシカが現われようとしているのを観察。草なぎ剛、香取慎吾、は最後の5体目を見て、おぉ、確かにマトリョーシカ!と感動する。

が。

『まとりょーしか・・・?』

リーダーである中居正広は、何のことかさっぱり解っていなかった。
まとりょー鹿?
マトリョーって何?
的場涼子、略してマトリョー?ってそれは、篠原涼子と的場浩二が結婚するってこと?あれ的場浩二って結婚してたんだよな、確か。誰とだっけ。芸能人?一般の人だっけ。
でも、そういう名前じゃないのかな。単に種類の問題?
珍しいのかな。マトリョー鹿を持ってきてる女って。どこらだろ。でも、ぬいぐるみなんて見えないけどなぁ。
それは俺の目が悪いから?
まとりょーねぇ、マトリョー・・・。
あ!捕まりやすい鹿!?的漁鹿。
的になるくらいにって意味かな。・・・でも、それだったらもう絶滅して・・・。あ、絶滅に瀕してる動物です、とかってぬいぐるみになってるからそれかぁ。でも、サンジャンでそんなの聞いたことないなぁ。的漁鹿なんて。
えー!一体なんなんだろー!マトリョーってぇ!

「なぁなぁ、マトリョーって何?」

コンサート終了後、リーダーから真顔で尋ねられたメンバー、スタッフは、全員首を傾げたのであった。

(ダサイトのjyan様が、コンサートでは腕組み、足だけダンス、にらまれたらマトリョーシカを出す、とゆっていたので・・・(笑))


その12.「コンサート中2」

コンサートが始まって、かなり最初の方だった。メインステージからセンターステージに出て行くところで、草なぎ剛は立ち止まり、あれ?と思った。ステージから2列目のところにいる女の子が、胸元からピンクの何かを覗かせている。
何だろうと見てみると、それはもしかして、メンバーである、木村拓哉、稲垣吾郎、香取慎吾が最近よく話題にしてるかばやきさん太郎じゃあないだろうか。
この3人はインターネットをする3人で、剛も慎吾から、かばやきさん太郎ってこんなだよと見せてもらっていた。

「あなたはかばやきさん太郎?」

という疑問をこめて、剛はそのピンクの物体をさした。手のひらを上に向けて差し出すというやり方をされて、ピンクの物体は少し驚いたように思えた。

その後1度衣装がえのためステージから消えた5人だったが、剛はすわ!ご注進に及んだ。
「木村くん!かばやきさん太郎かもしれない!」
「え!?」
木村の顔が変わった。
「どこ!?どこにいたって!?さん太郎!」
「えっとね、花道の、うーん、9列か、10列目ー・・・左手側!」
「えー!うっそぉ、マジかよぉ!9列目、10列目だな・・・」

その後のジンギスカンで、5人連なって前に出てくることになるが、先頭剛の後ろにいた木村は、ほんの一瞬、さん太郎の方を見た。そして、剛の背中を突つき。
「いた!あれさん太郎だ!」
「やっぱりっ!?」
ちょっと振り向いた剛は嬉しそうに木村を見る。
自分でも木村くんの役に立つだなんて・・・!ありがとう!解りやすいところにいてくれて!かばやきさん太郎!と思う剛だった。

そして、木村拓哉は。
うわーん!さん太郎が見に来てんじゃん!なんか恥ずかしぃー!!と思ってしまい、あんまり顔を見せられなかった。その分、メインステージまで戻ったら、さん太郎!と思いを届かせながら踊るのだった(笑)

(いや、この仕種はほんとにあったことやねん。剛が、いわしくんの方に、あなた、とゆびさし、後から木村がちらっとこっちを見て、剛に何かを言ったってのはまったくもって本当。おそらくいわしくんの衣装が問題だったと思う。なぜってゴルチェの、胸の位置に、おっぱいがプリントされているややシースルーの体にフィットしたワンピースだったから(笑)生乳に見えるんだよーん(笑)しつこいようですが、さん太郎について知りたい方はすのものへどうぞ!


その13.「今日の中居正広」

スマスマの楽屋でのこと。
「あー・・・コーヒー買ってこよー・・・」
立ち上がった中居が言い、ふと振り返った。
「コーヒーいる人」
その場にいたメンバー、スタッフの中から3本の手が挙がった。
「1・2・3.3人ね」
そして中居は出ていき、数分で戻ってきたが、その手にはコーヒーが1本しかなかった。そしてそれに口をつけながら帰ってきた。
「あれ?中居くん、コーヒー・・・」
コーヒーを頼んだ剛が尋ねると。
「コーヒーいる人が何人いるのか知りたかっただけじゃん。買ってくるなんて俺言ったか?」

「今日の中居正広のやさぐれ指数。42」


その14.「今日の中居正広」(日付設定めちゃめちゃ。気にすんなパージョン)

スマスマの楽屋でのこと。
今日はコントの撮影で、木村拓哉はタイで映画の撮影中のためいなかった。
控え室のテレビはついていて、そこでニュースが流れた。
『キルギスで日本人4人がら致され・・・』
準備に忙しいメンバー・スタッフはそんなことは聞いていなかったのだが。
「なっ、中居くんっ!?」
立ったまま打ち合わせ中だった中居が、へなへなっ、と崩れ落ちた。
「どしたのっ!?」
呆然とスタッフに尋ねられ、へなへなっと崩れ落ちたまま、ずるずるっとテレビに近寄った中居は言った。
「き、木村が・・・!?」
「え?」
「木村が、ら致・・・!?ら致とかされたら、帰ってこれねーじゃぁ〜ん・・・・・・!あ!でも、命があれば・・・!生きて帰ってきてさえくれれば・・・っ」

「今日の中居正広のへたれ指数+オバカ指数。足して192」


その15.「今日の中居正広」

食わず嫌い王スペシャル放映後
「エビパンかぁ〜・・・」
ビストロシェフの衣装を着た慎吾が言う。
「エビパンね」
「俺らって、未だに森くんを越えられないってこと?」
剛が吾郎に尋ね、吾郎は肩をすくめた。
エビパンは、森がビストロSMAPで作った料理で、確かに相当評判はよかった。そりゃあよかった。よかったが、あれが作られたのは、3年以上前だ。
そして木村拓哉シェフは、静かに沈んでいた。
そうか。そうだったのか。所詮、森を越えられていなかった、ということか。
あれから、自分も、他のメンバーも、精進は積んできたつもりだったが、まだまだ・・・。まだまだということだ。
木村は深くため息をついた。
まぁ、毎回、毎回、違うゲストの、違う好みに合わせて料理をするんだから、必ずしも、オーナーが好きなものを作れるとは思わない。それでも、それぞれ食べる人に会わせて、多少味付けを変えるとか、取り分ける時に嫌いなものをいれないように気をつけたりはするが、そういうことではないんだろう。
森・・・・・・・
さすがだな・・・・・・・・・

「いー加減、俺の言うこといちいち間に受けるのやめてくれるかー」

森・・・!森くん・・・!と遠い空を見上げたシェフたちの後ろを、オーナーの衣装の襟元を直すため、鏡に直行しながら吐き捨てる中居オーナーだった。

「今日の中居正広のあっさり指数。18」

「やばーい!!森くん間に受けてたー!」
「電話しろ、電話ー!!やばいぞー!!」
「木村くん、遅い」
「え?」

その瞬間、バイク便によって、大量のエビパンが届けられたのだった。


その16.「今日の中居正広」

深夜に電話がなる。しかも携帯のノンキな着メロが。
原辰則は大好きだけど、こんな深夜に聞きたいものじゃない。ぼんやりと浮かび上がる意識を眠りの方に押しとどめる。大丈夫、すぐ留守電に変わる・・・。変わる・・・。
変わった・・・。
眠りが浅い時は、ちょっとでも長い時間ねなきゃいけない気がする。
明日は何時起きだっけ・・・。あれ、曜日が・・・。ん?今、が、月曜日・・・?起きたら火曜日か。いいともだ・・・。
ってことは、あー・・・そこそこ早いな・・・。
そんな今は何時・・・。

ってそんなこと知ろうと思ったら目ぇ開けなきゃいけねぇじゃねぇか!
目ぇ開けるってことは、目ぇ覚ますってことだろーが!寝ろ!寝てしまえ!俺!

ぎゅー!!と目をつぶっていたらば、また携帯がなった。
だーかーらー!!俺は寝るんだ!寝るんだ!!寝るんだぁーーーっ!!!

「・・・・・・もしもし・・・・」

しかし中居はその電話に出た。
2分とおかずにかけてきたってことは、緊急なんだと思って。
電話の相手は、すごく焦っていた。自分の身に起きた緊急事態を必死になって喋り、その必死さのあまり、中居があいづちすら打っていないことに気づいていないらしい。
相手の話が一段落するまで黙って聞いていた中居は、一言言った。

「コンセント、ちゃんと入ってんの?」

相手は入ってると言い張った。言い張ったが、その相手が持っているブツを知っているだけに、その現象は、単なる電源の問題としか思えない。またそうじゃなければ、故障であり、自分の力でどうもするこてはできない。
喋ってる間に、逆に眠気が沸き上がってきた。
これは・・・、これはいい眠りが期待できそうな感じ・・・!
今だ!今眠れれば!

「とにかく落ち着いて、もう1度やってみな」

それだけ言って携帯を切る。もちろん電源も切る。
想像通りのふわふわとした眠りが、すかさず中居を包み込んだ。

「今日の中居正広のパソコンインスト指数、対木村拓哉編、32」

(いや、どういう訳かなんの根拠もなく私の中での中居正広はパソコンのオーソリティで(笑)!そんで木村がWhat’s upでパソコンの電源が入らなくなって、詳しい人に電話したってゆったから(笑)!!よければ、What‘s up SMAPレポートもご一緒にお楽しみください。木村さんのおバカっぷりが抱きしめたいほどにキュート(笑))


その17.「今日の中居正広」

スマスマの控え室だった。スマッピーズ用の衣装がずらりと並び、それぞれ自分の衣装の確認と、メンバーの衣装の冷やかしをしていたのだが、慎吾がしみじみと言った。
「これ、中居くんのでしょ?」
そのハンガーには、ハイネックかつノースリーブのニットと、スウェードのショートパンツがかかっている。足元には、同じくスウェードのブーツ。
「なーんかさぁ、こーゆーのって、中居くんしか着れないよねー。そうじゃない?」
自分に当ててみながら慎吾は笑う。
「27歳でさぁ〜、女の人でもあんまいないよ?27でこれ似合う人って」
「それ、27以上の女の人に失礼なんじゃない?」
吾郎に言われても、だって、と慎吾は気にしない。
「やっぱ、こーゆーのって若いか、可愛かじゃないと似合わないよぉ〜、中居くん、ほら年寄りだけど・・・」

「おぉ、俺可愛いからな」

「・・・」
黙ってしまった慎吾、吾郎を尻目に、さっさと私服を脱ぎ、さっさとその衣装を着た中居は、姿見の前で、
「ほら似合う」
しれっとした顔で言い、控え室を出ていった。

「今日の中居正広の自己認識指数、78」


その18.「今日の中居正広」

「ただぁ〜いまぁ〜」
ぱたぱたっと玄関に入り、そのままコートを脱ぎ散らかしながらお風呂に向かう。急いで急いでさっさとシャワーを浴びて、髪を洗う。今日は湯船はいいや、めんどくさい。
タオルで髪を拭きながら、パジャマを着て、こたつの電気をつけてから、冷蔵庫のビールを取り出す。こたつの上は、結構散らかってるけど、これもいいや。ビール1本くらいはちゃんと置ける。
えーと、目覚ましは、セットした。時計も、携帯のアラームも大丈夫。
もし寝ちゃっても準備は万端。座椅子を倒して寝転がったら、部屋が散らかってるのにも目がいくんだけど、もうそれもどうでもいい。
一度起き上がってビールを飲んで、また横になって、今朝放り出した場所にそのままある本を手に取る。
どこまで読んだっけなー・・・とページをめくり、記憶のない場所までいってしまい慌てて元に戻った。
木村が読んでた本が面白そうだったので借りてきた。
一気に読みたい、という本ではなかったけど、続きを読むのは楽しみだったので、部屋が散らかってることとか、洗濯ものがたまりつつあることとかはどうでもよかった。
時々起き上がってビールを飲んで、あっちむいたり、こっちむいたり、本を置くのにいい場所を探しながら読みつづけ、またそのまま眠ってしまった中居だった。

「今日の中居正広の読書好き指数、88」


その19.「今日の中居正広」

スマスマの楽屋だった。
どかっ!と乱暴にドアが開き、足音荒く中居正広が入ってきて、その剣幕に、にぎやかにしゃべっていた他のメンバーの言葉はぴたっ!ととまった。
中居はそんなメンバーたちに厳しい一瞥をくれ、ガン!と椅子を蹴り、ソファにどっかり座り込み、足を前のテーブルに投げ上げる。
「あのさぁ!」
一瞬、明るいと取ってしまいそうなほどの口調だったが、明らかに機嫌は最悪。
「なんか今度ぉ、どっかのおばさん、ってゆーか、おばーさんか!の、誕生日だがなんだかしんねーけど、祝いの会があるんだってよぉ!」
何だ?という顔を一瞬したメンバーたちは、その内容にすばやく頭を巡らせ、『あ』という顔になる。
「そんでぇ!なんだかしんねーけど、うちの事務所も祝いに行くんだって!各グループ最低一人は、行くんだって!」
「それって・・・あれ・・・?」
こそ、っと慎吾が吾郎に囁き、中居に睨まれて休めの姿勢を気をつけ!に慌てて直した。
「各グループ最低一人!っつったって、おまえら行かねぇよなぁ!!」

びしっ!と背筋を伸ばした4人は、小さく、しかしはっきりと首を縦に振った。

ふん!と顎をそらせ、中居は全員の顔をねめつけた。
「それじゃあ、俺が行くしかねぇよなぁ!!」
こくこくっ!
メンバーたちがうなずく。
「どこのおばちゃんだか、ばーちゃんだかしらねーけど!テレビによぉーーーっく!映る場所で、にぃーーーっこり笑ってくりゃいいんだよなぁ!!」

「中居さんっ!!」
「中居さぁんっっ!!!」

メンバーたちは中居のソファにはせ参じた。
「剛!中居さんにお飲み物を!何にいたしましょう!」
ソファの前に片ひざをついた木村が、中居の華奢な手を取り、じっと見上げる。
「そーだなぁ〜、100g3000円くらいのコーヒー豆の水だしコーヒーもらおっかなぁ〜」
えっ!?という顔をする剛に、木村は急げ!と目で指示を出す。
「慎吾!ほら、中居さん、お肩が!」
「あっ!中居さん!最近、肩こりの具合いかがですか!?」
「いってーよ!このバカ力っ!」
「あっ!すいません!おまえ、マッサージオイルとかねーのかよっ!」
「え、えーっとっっ」
慎吾はマッサージのために使える何かを求めて楽屋を駈けずり回る。

「これからなんだけどなー、髪がなぁ〜」
「吾郎吾郎!!中居さんのおぐし!」
「中居様、今日はいかがいたしましょうっ!」
「うーん、ばーさんに気に入られなく、かつ、ちょっと可愛いが、むしろ嫌がらせに近いような髪型ぁ〜」
「はっ、おまかせ下さいっ」
吾郎は、ムース、ブラシなどを用意し、中居の髪をせっせととかしはじめた。

「中居さん!コーヒーです!」
「どうですか?このくらいの力で!」
剛、慎吾が中居の回りにまとわりつき、相変わらず片ひざをついている木村は手のひらから腕のマッサージに勤しんでいる。

「それじゃあてめえら!!行ってくるぜぃ!!」
「「「「中居さん!!!よろしくお願いしやっす!!!」」」」

<<しばらくそのままお待ち下さい>>

「帰ったぜ!!」
「中居さんっ!!」
「中居さん、お疲れっす!!」
「ソファ用意しときました!枕は中居さんお気に入りのクッションにさせていただきましたっ!」
「軽いアルコールもご用意させていただきましたがっ!」
中居の体は宙を浮かぶようにソファに運ばれ、4人の手で横たえられ、カネボウのブランケットがかけられ、額にはひえぴたが置かれる。
「疲れたんだよ!疲れたんだよ!疲れたんだよぉっっ!!!」
「はいっ!解っております!!」
「あぁ、手がぁ・・・!握手させられたぁ〜・・・!」
「あぁ、あぁ、なんてこと!」
木村はその手をせっせと冷たく冷やしたタオルでぬぐい、慎吾は中居の留守中に用意したさまざまな健康グッズ取りだし、剛は冷たいビール、吾郎は美味しいおつまみをささげ持つ。

「俺・・・、がんばったよな・・・!」
「中居さん!」
「中居さんは、男っすよ!」
「中居さん!!」

ソファに弱弱しく横たわる中居に四方からすがりつくメンバーたち。
「がんばったよなぁ・・・っ!!」
「「「「中居さぁぁーーーん!!!」」」」

スタッフ「今日、SMAP、妙にうるせーなぁ〜」

「今日の中居正広のやさぐれ男気指数、93」


その20.「闘い」

S「いよいよ今日だな・・・」
K「あぁ・・・」
2000年1月3日、彼らの闘いの日がやってきた。
K「俺のカメラは、ヤツしか映さない・・・!」
S「万が一の時には、俺がスイッチを・・・!」
スマスマ1カメ担当カメラマンのKと、スイッチャーのS。彼らの闘いはもう長く続いていた。

K2「Kさん!Sさん!」
S「おぉ!2カメ担当のK2!」
K2「誰に説明してんすか?」
K「気にするな。どうだ調子は」
K2「緊張、しています・・・!」
K「おまえ、生放送は始めてだったな」
K2「はい・・・!」
S「とにかく一人だけを押えてさえくれれば、後は俺がどうにでもするから。任せてくれ」
K2「Sさん・・・!Sさん、すごいっす!」
K「ほら、ヤツらが見ている・・・。なめられるんじゃないぞ。毅然としてろ」
K2「は、はい・・・っ!」

スタジオの隅にいた彼らは、たった今スタジオに到着したスーツ姿の5人組に目をやる。すでに彼らにとって、その5人は悪の化身にしか見えなかった。

いつ、そんなルールが生まれたのか、もう誰にも解らなかった。ただ、伝説のように、そのルールはスマスマスタッフ一同に染み付いていた。

「ツートップを同じフレーム内に映してはいけない」

通常の放送であれば、編集でどうとでもできる。しかし問題は生放送だった。
生スマ。それは、1カメ担当カメラマンKと、スイッチャーSがSMAPと闘う、そんな舞台でもあった。

1カメ担当ベテランカメラマンのKが木村拓哉を押え、2カメ担当、まだ若手ながら抜群のカメラセンスを持つK2が中居正広を押える。たとえ隣同士にいたとしても、それぞれ単独の画で押えておくのがカメラマンの技量だった。
そして、別々に映していると気づかれないよう、ごく自然なタイミングで画面を切り替えるスイッチャーSの技も光る。
しかし敵はSMAPのしかもツートップ。一人ずつ大人しく座っている訳がない。これは彼らにしても闘いなのだ。
いかに普段の放送と違う画像をお茶の間に提供するか。彼らはそこに生放送の意義を見出していた。
立ち位置が隣同士の上、随時フォーメーションをチェンジし同じ画に映り込もうとするツートップ。それを一人ずつ押えていくカメラマン、KとK2.そしてこの二人すら破れた場合は、スイッチャーSが後方に控え、実際に流れる画面を切り替えることになっていた。
スイッチャー界では、「困った時のしんつよ頼り」と呼ばれる技で、実際には「負け」すれすれの技だが、背に腹は変えられない。
S「本番だ・・・」
K「行くぞ!」
K2「はいっ!」

生放送がスタートする。2000年の勝負の行方を左右する大事な2時間半になる闘いだ。
S「あっ!木村くんが中居くんの顔を覗きこむ・・・!」
K「任せろっ!」
K2「大丈夫です!中居くんしか撮ってません!」
K「よくやった!」

慎「・・・K2・・・!やるじゃないか・・・!」
SMAPは一丸である。いつもの放送とは違う画を!というのは、メンバー全員に共通した思いだった。
慎「(ジェスチャーで)つよぽん!Aクイックだ!行くぞ!」
剛「(ジェスチャーで)何ゆってるか全然解らない」

木「(目だけで)K2、やるねぇ・・・」
中「(目だけで)任せろ。ボケるぞ」
木「(目だけで)おう」

中「まっちゃん!」
木「こら!ジャマすんな!」
中居の口をふさぎ、押えつけようとする木村。

K・K2「あっ!」
S「くっ、無理だっ!ま、松たか子へっ!」

慎「(ジェスチャーで)だからAクイックだって!つよぽんっ!!」
剛「(ジェスチャーで)ところで、ごろちゃんどこ?」

その頃稲垣吾郎は、客席の最前列にちょこんと座り、膝にひじを付き、顎を手のひらで支えたいつものポーズで、当然、指先が鼻にあたるような感じで、楽しくスマスマを観覧していた。

S「しまったぁ!!あれじゃあ稲垣くんにもスイッチできない!」
K「なんてヤツだ!稲垣吾郎!」
K2「計算ずくだとは・・・!」
その画がいっそ面白いと3人が気づくのは、生放送終了直後である。

SMAP VS スタッフの闘いは、2000年もたゆまず続くのだ。


その21.下宿屋木村勝手に番外編「戯れる獅子・正広」その1

(下宿屋木村とは。当HPの掲示板、沙夜子の部屋でJun.様が書いて下さっている素敵なシリーズ!それを勝手に私がアレンジ(笑)本家下宿屋木村は、ジュヌビエーヌの書庫へどうぞ)

2000年1月3日。
中居と木村は下宿屋木村に帰ってきた。帰ってくるなり、中居はリビングのソファに突っ伏す。
「はぁ〜・・・・・・・・・・・・」
今日、中居はスマ1グランプリのペケ1となり、沖縄の島でフルマラソンをさせられる羽目に陥ったのだ。
フルマラソン!フールーマーラーソーン!毎年正月は箱根駅伝を楽しみにする中居であっても、自分が走るとなると話が違う!
「はぁ〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・・・・」
もう1度深くため息をついた中居に、木村が言った。
「腹減ってない?なんか食う?」
「んー・・・・・・・・・・・」
「腹減ってるとさびしくなるからさ、食えるんだったら食っといた方がいいぜ」
「うー・・・、なんがあるのぉ〜〜・・・」
「んーとなー」
キッチンからは、軽やかに何かを炒める音がしている。木村の作る食事がまずいことはまずないので、条件反射でおなかが減ってくるような気がした。
なんか食わせときゃいいと思いやがって、俺は動物か子供か、ってんだバーカ。

と思いながらも、ことん、とテーブルにお皿が置かれた音で中居は顔を上げる。

「・・・・・・・」
「はい、どーぞ」
「・・・・・・・これ、何?」
「え?知らない?ミミガー」
「みみがぁ?」
「豚の耳。まぁ、これはさ買ったんだけど」
作ったのはこっち。とほかほかと湯気を立て、香ばしい匂いをさせている大皿を中居の前に押し出す。
「おまえ、これ・・・」
「ゴーヤチャンプル」

うりゃあ!!!!

秘儀!ちゃぶ台返し!!
難易度ウルトラD+!空中お茶碗キャッチ!!

「何すんだよ!」
「こっちのセリフだこっちの!!なんだゴーヤチャンプルーって!ゴーヤってぇ!!」
「沖縄の食材じゃん」
「きーさぁーーまぁーーーーー!!!」

ダブル秘儀!ひっくり返したちゃぶ台さらに返しっ!

綺麗に元の位置に戻ったローテーブルに、木村はミミガーとゴーヤチャンプルーの皿を置く。
「何を怒ってんの。栄養もあるしうまいってのっ。落ち着けよ、ちょっとなんか聞く?」
リモコンで、コンポのスイッチが入れられた。
「・・・・・・なんで沖縄民謡がかかんだよっ!」
「・・・・・・予感がしたんだ・・・」
「なんの!」
「俺か、中居だろうって・・・!」
「だからってイチイチこんな準備してんじゃねぇーっ!!」
「まぁまぁ、酒もあるし」
「酒ぇっ!?」

渡されたグラスをぐいっ!と煽る。
「・・・っ!?きっつ!!」
「沖縄といえばこれ。本場泡盛、『戯れる獅子まさひろ』(商品名。実在する)でございます」
「そんなもんわざわざ準備してんじゃねぇぞ!このスカタン!耳の穴から手ぇつっこんで、奥歯ガタガタ言わしたろっかぁっ!」

足音荒くバスルームに入り、ムカムカしながら髪、体を洗った中居は、さっさと寝てやれ!とベッドにもぐりこむ。と、その枕元に気配が。
「なんだてめぇ!勝手に入ってくるんじゃねぇ!」
「よく眠れるように、いい音楽を聞かせてあげようと思って」
「あぁ!?」
頭からかぶっていた布団を跳ね上げると。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

沖縄の民族衣装(しかも女性用)をまとい、三線(さんしん)を構えて正座している木村がいた。

違う・・・。俺の知ってる木村拓哉はこんなヤツじゃない・・・・・。
あぁ、俺はきっと長い夢を見ているんだ・・・・・・・・。
だから、沖縄でマラソンって言うのは、夢なんだ。俺は、42.195kmなんて走らなくていいんだ。
よかった・・・・・・・・。

幸せな勘違いをしながら意識を失った中居だった。

その22.下宿屋木村勝手に番外編「戯れる獅子・正広」その2

翌朝、中居はいい気持ちで目覚めた。
何でだろう、と自分の普段の寝起きの悪さに首を傾げる。と、同時に、すっと通った鼻筋の通った鼻が、くん、と動く。
なんだなんだ!?なんかすっごいいい匂いがしている!
その匂いの元を探してふらふらと部屋から出ると、朝からなんですかー!という料理がテーブルに並んでいた。
「おはよ」
「おはよ。うまそぉー!」
ぺたん!と座りこんだ中居は、コンソメスープ入りのマグカップをがしっとつかみ、一気に飲み干した。
「うわ。何これ!黄金のコンソメ!?」
「誰が織田さんやねん」
なぜか「美味しい関係」ごっこをしながら朝食、というよりほとんど昼食は進む。コンソメはあったけれど、基本的には中居の好みの定食屋といった感じで、炊きたてご飯に小鉢ものがいっぱいある。
「あー、これ、昆布じゃーん!俺、昆布嫌いなのにー!」
「黒くはねぇだろ。薄味にしてあんだからよっ。豆だけでも食えっ!」
「えーえーえー!豆が昆布臭くなるじゃーん!」
「うーすーあーじーだっつの!」
「・・・・・・・これ、何・・・?モツ煮?」
「モツ煮」
「モツ煮だったら、味噌味とかさー。なんか、これ・・・失敗じゃねぇ・・・?」
いかにも内臓料理、といった風情の小鉢を持ち上げ、鼻先でくんくん匂いをかぐ。
「失敗じゃねぇの。こーゆー香りの料理なの」
「ふーん・・・・・・・いらねぇ」
「えっ!うまいのにぃ〜。ま、いいや。んじゃ、中居のもくれ」
「くれっておまえ、それはないだろぉ!」
いらなくなったものでも、人が欲しがると惜しくなる。子供のような性格の隙を付かれた形で、中居はモツ煮を口にする。
「ん?でも、さっぱりして・・・」
「いけるだろ」
「うん。意外に・・・」
がつがつ食べたいほどでもないけど、そこそこ美味しいと思う。
「ごはんおかわりしちゃおっかなー。納豆もあるしぃ〜♪」
中居も徐々に気づいていた。ここに並んでいる小鉢ものは、なんだか違う。日本の朝定食にはついてこなさそうなものが多い・・・。ような気がする。
その点、目の前にある山芋納豆おくら入りは安心して食べられる。
「・・・た、食べにくい・・・っ!」
「子供かおまえは・・・・」
しかし3つともが粘りが強いため、口の周りが大事に。渡してもらったウェットティッシュで拭き拭きしては、粘々させ、拭き拭きしては粘々を繰り返すことしばし。
朝っぱらからトンソクまで食べて大満足。
「うー!うまかったぁーー!!」

朝から腹いっぱい。中居正広の朝食は終了した。
「デザート食わねぇ?」
「デザートぉ?」
朝からマメなヤツ・・・。
ばったりと仰向けに倒れていた中居は、よいしょ、と腹筋の力で起きあがる。テーブルの上には、薄いピンクのゼリーがあった。
「何ゼリー?」
「何ゼリーでしょう」
何かな、何かな、イチゴかなぁ〜♪なんて適当な歌を歌いながら、がばっと大きくスプーンですくい、一気に口に放り込む。

「んんん!???」

ごっくん!と飲みこんで、中居は目を白黒させながら木村を見る。
「何これ!酒入ってんべ!」
「大人の味だろ。クコのゼリー」
で、一度言葉を切り、木村は中居をじぃっと見つめる。じぃっと見つめられ、いや、ダメよ、木村っ、あたしたち、メンバー同士じゃないのっ!と、心の中で正座していた膝を崩し、ちょっとのけぞりながら、ダメダメっ!と首を振っていた中居は、続く言葉を遠くで聞いた。

「・・・『戯れる獅子まさひろ』(商品名。しつこいようだが実在する)入り」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・??????????・・・・・・・!!!!」

うりゃああ!!!!!!
必殺!ブルドーザー!!
テーブルの上の皿が、中居の両腕で押し落とされる。

「あー!てめ、何しやがるぅー!」
「まだ沖縄もの食わそうとするかぁーーー!!!」
「何言ってんだ、てめぇ。泡盛入りクコゼリーっつったら、整腸作用があって、新陳代謝を促進し、精力まで増強してくれんだぞっ!」
「はぁ!?」
「まさしく、中居のためにあるようなゼリーじゃねぇか!」
「誰が精力ないっつってんだよ!!」
「おまえが喜んで食ってた豚足。あれにはコラーゲンが入ってて、血管を丈夫にするんだよ。脳と心臓の血管の衰えはボケや死に直結!さらに、細胞を若返らせ、老化も防ぐ!」
「豚足はちょっとうまかったけど・・・」
「正式名称は足テビチ」
「変な名前・・・」
「それから、その納豆と山芋のヤツ。オクラも入ってるけど、オクラの粘りはコレステロールを下げる食物繊維だし、オクラ自体、ビタミン、ミネラルを多く含んでて、カルシウムななんと牛乳と同じくらい!山芋は山のウナギってくらい精がつくし、さらに納豆だ!」
「うーん。枯れかけの親父に、若い後妻が食べさせるような料理だな・・・」
「渋いこと言うね、おまえ」
「でも、なんだよこれー!何?薬膳ってゆーのぉー?そーゆーヤツぅ〜?」
「いえ、単なる沖縄料理です」

うがああ!!!!

やっぱり出るのか!秘儀!ちゃぶ台返し!!

「もういい!!俺はそーゆー変なものは食わないっ!」
「変じゃないだろ!うまいって食ってたじゃねぇか!さっきのモツ煮はトゥヤシー・グスイつって、牛の内臓に薬草をとり合わせて作ったスープで、胃にも肝臓にもいいし、海草はミネラルたっぷしで、大豆は高たんぱく低カロリー!この二つの組み合わせは、肝臓を強化し若さを保つ!」

怖い・・・・・!
熱く語る木村を見ていて、中居は怖くなってきた。
こんな・・・!こんな木村を、俺は知らない・・・っ!

「後!おまえが最初に一気飲みしたスープ!」

ええ!!あのスープが!?あのスープが何!?濃い、黄金色といってもいいような、あの透き通った濃厚なスープ・・・!あの後3杯は飲めますが(そして実際3杯飲んでいた)!というスープにまで何が!?

「あれは、ウミヘビのスープだ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

中居はゆっくりと意識が遠ざかっていくのを感じた。
薄れ行く意識の向こうで、見知らぬ誰かが何かを言っている。

「エラブとか、イラブとかって言われてるウミヘビは、ナチョーラって海草を食べてて、そのナチョーラと牛肉の料理は滋養強壮に最適!ウミヘビ自体には、42種類のアミノ酸、タウリン、カルシウムをたっぷり含み、子供、妊産婦!そして!今以上に体力をつけたい人に絶好!!」

誰・・・?今以上に体力つけたい人って・・・。俺、別に体力なくったっていいんだもーん。俺はかよわいアイドル様なんだもーん。
それに、俺の知ってる木村拓哉は、人様にウミヘビなんて、ウミヘビだなんて、そんなもの!そんなものっ!絶対、絶対!食べさせないもぉぉぉーーーーん・・・・・

やっぱり夢なんだぁ〜・・・・・・・・・・

幸せな勘違いをしながら再び意識を失った中居だった。

<その3.に続く!>

その23.下宿屋木村勝手に番外編「戯れる獅子・正広」その3、にして最終回。

中居正広はなにせ人気アイドルなので毎日忙しい。帰宅時間は24時を回ることがほとんどで、26時だの、27時だのといった時間の読み方に何ら違和感のない自分が少し悲しく、少し誇らしい。
その夜は仕事終わりがほぼ24時。下宿屋木村にたどり着いたのがほぼ25時。ただいまぁ、とドアを開けると、家主であり、初回視聴率31.8%をたたき出し、過去10年の民放連ドラ初回視聴率第1位を獲得したドラマで主役を張っている、よっ!さっすが日本一!の木村拓哉が台本を読んでいた。
おっとジャマしちゃいけないな。
そそくさと自分の部屋に入ろうとすると、木村が顔をあげてお帰りと言った。
「おう、ただいま」
「お疲れ。なんか飲む?」
「ん。いや自分でやるし。仕事だろ?おまえ」
言いながら冷蔵庫を開けてピールを取り出す。まさかオリオンビールとかじゃあ!?とすかさず目をやったがそれはスーパーホップス。いーじゃな、いーじゃな♪と鼻歌を歌いながらプルトップをあけていると、木村が何かを言った。
「あ?」
聞き取れなくて聞き返す。
「何て?」
「あ、えーと、忙しかった?」
「今日?いや、大して」
それに対して、木村がまた何かを言う。
「え?何ぼそぼそゆってんだよ。声張れ!声!」
「せっかくだから早く寝ろっつったんだよ」
「言われなくても寝るっつーの。おまえはがんばれよぉ〜♪最終回は40%かぁ〜?」

そして中居はゆっくりと寝て、そして翌朝。

「・・・これは。何?」
「何って、シャケじゃん」
「これは、ただのご飯?」
「・・・ただの炊き立てご飯」
朝食のテーブルに並んだのは純和風のメニューだった。炊き立てご飯。豆腐とワカメの味噌汁、焼きジャケ、納豆、卵焼き、海苔。旅館の朝ご飯のような定番っぷりに、中居は、先日のことはやっぱり夢だったんだな、と確信を持つ。よかった。なんか長い悪夢を見ていたようだ。
「いっただっきまーす!」
わしわしっ!と食べていると、味噌汁を口にした木村が言った。
「あ、ちょっと、んす、濃かったかな」
「あ?」
中居は首をかしげる。
「何がこかったって?」
「ん?あのー、みそ」
「・・・みそぉ?おまえなんか変なことゆったよ?なんだ?んすって」
「だから味噌だよ」
「んす?ん?んで始まる言葉なんてあんのか?俺、どっかで聞いたことあるぞ、そーゆー歌。「ん、で始まる言葉があるか!」とかって歌詞の。うーん、爆風スランプだったかなー、おかげ様ブラザーズだったかなー・・・。ダウンタウン?ってゆーかゲイシャガールズ?」
「あいっ変わらず変なところでマニアックだね、中居は」
「そうそう。じゃなくって!ん、で始まる言葉があるんだ!」
「あるよ」
ことん、と味噌汁の入った器をテーブルに置き、木村は静かに言った。

「沖縄弁には」

カッチーン!!!
再び炸裂!秘儀!ちゃぶ台返し!

中居の必殺技により、まだほかほかの食べ物、飲み物が満載のテーブルはそのまま宙に舞い、それらの食べ物飲み物は一気に木村に襲い掛かるはずだった!しかし!

「ふっ」
「て、てめぇ!」

連ドラ初回視聴率三冠王の華麗なる新技!「押さえ」!!

説明しよう!「押さえ」とは!
その1.中居正広が秘儀ちゃぶ台返しのさいに手を置く場所を正確に予想。
その2.その際、下方から上方に変化する力の強さを正確に予想。
その3.中居正広の手の位置、および、かける力からちゃぶ台(テーブル)が動き始める場所を正確に予想。
その4.それらの動きとまったくもってバランスの取れる位置に両手を置き、正しい量の体重をかける。

すなわち!この「押さえ」により、秘儀ちゃぶ台返しは100%防ぐことができるのだ!

「ぐぅぅぅぅ・・・!!!」
「無駄無駄無駄ぁーーーー!!!」

下から上に跳ね上げる力より、上から下に押さえつける力の方が強いに決まっている上、木村のバランス感覚は半端じゃない。テーブルのどこに力がかかっているか、それを押さえるにはどこを押さえればいいのかが直感的に解るのだ。
サイボーグ?

しばらく、北斗の拳だか、ジョジョの奇妙な冒険だかごっこをした後、ぜいぜい言いながら二人はテーブルから手を離す。いっせーのせ!だからな!という約束はお互い律儀に守った。

「なんだよ沖縄弁って・・・」
「沖縄弁というのは、下手な英語より難しいらしい」
「・・・おまえそれは沖縄の人に失礼じゃねぇか・・・?」
「いや、本格的な方言は、沖縄だろうが、青森だろうが、高知だろうが、どこだろうが、難しい。なかでも沖縄は難しいだろ」
「沖縄弁と青森弁は会話できなさそうだな」
「通訳がいるだろ」
しかし沖縄弁と青森弁の両者を、それぞれ通訳できるほど精通している人間がいるのか・・・!
「そうじゃなくって!なんでおまえが沖縄弁なんかやってんだよ!おまえ美容師の役だろうが!」
「そう。美容師に沖縄弁は必要ない。とりあえず青山の美容師だしな。だがおまえには・・・」
「お、俺・・・?」

ぐにゃり、と視界が歪む。
え?あれは夢じゃないのか?
俺は、沖縄に行かなくちゃいけないのか・・・?

「ま、まさかおまえ昨日見ていたのは台本じゃなくて・・・!」
「台本?それはもう覚えてるから家でまでは見ないけど」
い、イヤなヤツ・・・っ!
台本があるなんてなんて幸せなんだろー、覚えちゃう覚えちゃう、いっくらでも覚えちゃうよー♪と嬉々として覚えている姿が、あちこちで目撃されているのを忘れていた。
「じゃあ、それは・・・!」
台本様の冊子、それは。
「沖縄弁ノート」
「やっぱりかぁーーー!!!」

勢い!!ちゃぶ台蹴り(まっすぐ)(ちゃぶ台蹴り(まっすぐ)とは、テーブルの側面を正確にまっすぐ蹴り出す技である。正面にいる人間をテーブルが直撃し、なおかつ部屋への被害が少ないエコロジーな技であった)

そのテーブルの直撃をわき腹にうけたというのに平気な顔をして(アンドロイド?)、木村はノートをめくる。
「昨日言ってたのは、えと、これか。『しちなさぬ?』」
「質なさぬ?」
「疲れた?ってこと。それからー、『
にぃかなっとぅとぅにんべ』」
「・・・何語だよ、そりゃあ〜・・・」
「だから沖縄弁だっつーのに!これが、もう遅いから寝なさい、だな、うん。それで昨日言えなかったけど、『ゆくいみそーれ』がおやすみ」
「・・・リピートもできねーよ、俺は」
「なんで!リピートアフターミー?ゆくいみそーれ」
どうぞ、というように手のひらを差し出され、ゆくいみそーれっとぶっきらぼうに言い捨てる。
「もう寝るっ!」
「え!?仕事だろうが、まてまて!」
「ゆくいみそーれ!ゆくいみそーれぇーーー!!」

悲しいかな。
頭の回転が速い中居は、一瞬にしてその程度の長さの言葉なら覚えてしまう。
「もー、『はったみかちゃん』!」
「八田ミカちゃん?」
「『驚いた』」
「・・・驚いた、と、八田ミカちゃんの間にはなんの関係もねぇだろ」
「でも驚いたってのはそうだってよ?はったみかちゃん」
「うそだよそんなの。おまえだまされてんじゃん?なんでびっくりしたぁ!の変わりに八田ミカちゃんなんて言うんだよ」
「そうじゃなくて、はったみかちゃん!八田ミカちゃんじゃなくって!」

あまりのおかしさに、中居もノートを覗き込む。木村は小さくため息をつきながら言った。
「沖縄でマラソンしてる最中に道に迷って、田舎のおじいちゃん、おばあちゃんに助けてもらわなくいけなくなった時に、言葉が通じなかったら大変じゃねぇか」
「・・・おまえは沖縄をバカにしてねぇか?」
「沖縄のどっかの島だろ?那覇の若者とじゃ、言葉は違うぞ絶対」
自分が行くわけでもないし、知りもしないくせに断言する木村にカチンとくる。カチンときた中居は、低い声で言っていた。

「・・・わたむぎぃ」

それは、沖縄弁における「腹立つ」という言葉だった。

「えっ!?」
知らないはずの言葉が自分の口から零れ落ち、慌てて自分の口を押さえる中居。キラリ♪と光る木村の目。
「効果が出てきたようだな・・・」
「効果!?なんの効果!?」
「睡眠学習だよ!睡眠学習!夜な夜なおまえの枕元で、沖縄民謡をBGMに沖縄弁による民話の朗読を!!!」

やっていたというのかこの男・・・!

「ホップスの缶をもらってきてオリオンビールを詰めるのがどれだけ大変だったか!」

な。なんだとぉぉぉぉぉーーーーーーー!?!???

「でもオリオンビールより、やっぱり『戯れる獅子まさひろ』(商品名。ほんっとにしつこいようだが実在する)を飲ませた方が覚えがよかった気がするな」

ま、まさか・・・!歯磨きの時に使った水・・・!なんだかおかしいと思ったあれが、あれが『戯れる獅子まさひろ』入り水だったんじゃあ・・・!!
いつの間にかネイティブな沖縄弁を身につけさせられてしまった中居正広は、ついに理解した。

これは現実なのだ。
俺は、スマスマの罰ゲームで沖縄フルマラソンが決まったショックで、バラレルワールドに入り込んでしまった・・・。でもこれが今の俺の現実だ。
この世界での木村拓哉は、マッドサイエンティスト。俺は哀れな仮面ライダーアマゾン・・・。
沖縄の愛と平和を守るため、闘い続けなきゃいけないんだ・・・・・・・。
負けるな仮面ライダーアマゾン、闘え仮面ライダーアマゾン、いつかこのマッドサイエンティストを倒し、標準語の世界に戻るんだアマゾン!!アーマーゾーーーーン!!!

「ということで、これからこのうちでは日本語禁止とするから」

そんな言葉を遠くに聞きながら叫ぶ仮面ライダーアマゾンがそこにいた。
がんばれアマゾン!負けるなアマゾン!フルマラソンなんて、2時間あれば終わっちゃうぞ(笑)!


その24.「今日の中居正広」

「ふむ」
中居正広は鏡を眺めて、満足そうに微笑んだ。計画は順調に進んでいる。
変な髪形に、変なヒゲ。
「ふふ」
『変な』中居正広は表情だけはキラキラ輝いていた。大きな目を期待に輝かせて、うふ、と口に出して笑う。

「・・・・・・・中居」
その中居がうふうふ微笑んでいる後ろで、木村は不可解極まりない顔をしていた。
「おまえは、どこに向かってんの?」
「え?」
「おまえはどこに向かっていってんの?」
「どこって?」
「その髪はどこに向かっていってんの?」
「これ?」
アニメヘアを指先でつまみ、キョロンと大きな目を上に向ける。
「えへぇ」
そしてそれはもう可愛らしい笑顔を見せた。

・・・ヒゲはあるが。

「計画があるんだ」
キラキラとお目々を輝かせながら中居は声を潜めた。幸せそうな顔だった。

・・・ヒゲはあるが。

「計画?」
「そう。計画・・・!」
「その頭とそのヒゲは計画のためなの?」
「うんっ!」
こっくんっ!とうなずくその仕草も愛らしい。

・・・ヒゲはあるが。

「わかんないっ?」
「・・・解んねぇ・・・」
その髪型に、そのヒゲが一体どんな崇高な計画のために保持されているのかなんて、木村拓哉といえども解るはずがない。
ちっちっちっ!得意げに中居は指を振った。
「だっめだなぁ〜♪おっまえだけは解んなきゃいけねぇじゃーん♪」
「俺だけぇ?」
「そうさぁ〜・・・」
うっとりと中居は遠くを見つめる。
「俺はぁ、いつか柊二と出会ってぇ、すごい頭してるなって言われてぇ、そんで、髪切ってもらうんだぁ〜♪ヒゲも剃ってもらうんだぁ〜♪」

「・・・・・・・・・・・・・美容院じゃヒゲ剃れねんだけど」

がーーーーーーーーん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!

「今日の中居正広の野望、実現度0」

そして中居正広は真っ白な灰になった・・・・・・・・・・・・・・


その25「沖縄」

その日、朝7時に中居正広と稲垣吾郎はスタートした。番組の罰ゲームがフルマラソンというのは、そんじょそこらのお笑い番組では考えられない本気の罰ゲームで、負けた時には結構ショックだった吾郎だが、今にしてみれば、そんじょそこらの番組ではできないことをやってしまう自分たちってちょっといいかも、なんて思っている。
日頃の行動からあまり気づかれていないが、実は稲垣吾郎は、木村拓哉に匹敵する化け物じみた体力の持ち主。しかも持続力があるタイプで、考えてみればこれだけマラソンにふさわしいい人間はいないだろうと思われる。
それまでも、スポーツジムで走ったり、泳いだりが日常で、そこに42.195を走るための専門的なトレーニングが加わったところでどうということはない。
『いい天気だな・・・』
吾郎はそんな風に空を振り仰いで思った。
沖縄の2月って、こういう気候なんだ。
うん、走りやすいよね。
彼は、マイペースで走った。

もちろん、42.195kmを走るなんて初めての経験で、何度も足が止まる。でも、下手に休憩をいれたら立ち上がれなるような気がして、ちょっと立ち止まっただけで走り出す。
体の中には、ただ、走るためのリズムだけがあるような空っぽな感じ。真っ白になるって言うのかな。なんだか変に気持ちいいね。
・・・ランナーズハイ・・・?

空っぽな時と、まるで関係のないことを考えている時とか交互に訪れ、なんだかおかしくてちょっと笑ってしまう。
やだな。走りながら笑ってるなんて、気持ち悪いじゃないか。
ちょっと笑った吾郎は、首筋の辺りに、ちりり、とした何かを感じる。
ん・・・・!?
あ。そっか。そうだよな・・・。
湿気が、セットした髪を襲っている感触だ。沖縄の島を走っているんだから、周りはすべて海。すなわち湿気。あーーーー!!!せっかくセットしてるのにぃーーー!!!
トップモデルが気合で汗を止めるように、稲垣吾郎だって、気合で汗を止められる。42.195kmくらい、涼しい顔で走りたかったよ、俺は・・・。

そしておよそマラソン初心者としては驚異の4時間前半というタイムを叩き出した稲垣吾郎は、ゴールテープを切った後、ようやく振り向いた。

「あれ?中居くんは?」
「・・・・・・・まだです」
「まだって?え?ついてきてたんじゃないの?」
「いえ、あの。まだ全然。ずーっと、遥かスタート側で」
「背中が見えるくらい?」
一周42.195kmの島でフルマラソンだから、スタートとゴールは同じ場所。遥かスタート側というと、ゴール位置から見えるかもしれない。
「いや、いくらなんでも・・・」
「ま、いいや。ねぇ、俺、タイトルコールだけして帰っちゃまずいかな」
「はぁっ!?」
「だってトリビュートとか見てるとさぁ、二人別々に撮影したって綺麗に合成できると思うんだよね。なんなら後から帰ってきた中居くんに合わせて、おかえりー!!とかってヤツも撮影してもいいし」
「え。いや、でも、二人揃ってタイトルコール・・・」
「だって、これで中居くんが帰ってくるの待ってたら、42.195走った上、何時間かかるか解らないのを待たされるって言う、二重の罰ゲームになるじゃない。それってずるくない?」

だから待ってくださいって何度も、何度も言ったのに!言ったのにぃぃ!!!
奥歯をかみ締めるスタッフの心の叫びは、吾郎の心には一向に響かなかった。

「他のメンバーは休みなんだし、終わった人からとっとと解散でいいでしょ。うち、ほら猫もいるしさぁ。それに中居くんだって、俺が残ってるって聞いたらプレッシャーになるよ」
とってつけたようなセリフを残し、本当に稲垣吾郎は帰ってきった。
那覇市内のホテルでシャワーだけ浴び、飛行機でぐっすり眠り、東京に戻って自宅に帰ったら、猫と戯れ、湯船にじっくりつかって、足のマッサージをし、ようやく落ち着いたのが、夜7時。
そういえば中居くんはどうしてるのかな、と、吾郎は思った。
キーキー怒ってるかなぁ。でも、あんな湿気まみれのところにいたくなかったんだよねぇ。中居くんが帰ってくるまで待ってたら、もう、テレビ映れないくらいのすごいくるんくるんになったろうし・・・。
そう考えながらマネージャーの携帯に電話をいれる。
「もしもし。吾郎だけど。中居くん何時間で戻ってこれたぁ?」
『・・・・・・・・解りません・・・・・・・・・・・』
「え?解りませんってどゆこと?」
『まだ帰ってきてません・・・・・・・・・・・・』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあぁ!?????」

 

スタートから12時間。すっかり日もくれた沖縄の小島で、中居正広は迷子になっていた。
暗い中走っていて、けっつまずき、坂道を転がって生垣に突っ込んだところ、なんだか解らないところに出てしまった。コースを外れたのは間違いないし、無人島のような島に街灯はない。
「痛い・・・」
暗闇の中、自分の体もよく見えないが、多分間違いなく怪我をしている。
きっと血だって出てるはずだ。
斜めがけしてた巾着の中から、ごそごそと探し出すのは、「オロナインH軟膏」。タイガーバームより絶対効くと思う。痛いところを探して、ぬりぬり、とする。打ち身なのか、切り傷なのか、よく解らないけど、とりあえずそれで気は済む。
ちゃんと持っていくようにと渡された巾着の中には、オロナイン以外に、ウィダーインゼリー、ヘルシーバランス、なぜかドリスタンアップルジュニア、なんかが入っている。そして一番重要なのは。
「イリジウム・・・・・・」
木村に渡されたイリジウムだった。
沖縄の離島なんかに連れてかれたんじゃあ、携帯なんかつながらないだろう!と失礼な思い込みをした木村が、いざと言うときのために渡したのがイリジウムだった。
「俺は、ここで朝を迎える・・・!」
中居は、イリジウムを手に小さくつぶやいた。
迷子になったら、その場を動いちゃいけない。昔、木村に言われたことを、中居は一生懸命思い出していた。
暗い間に動くのは危険だ・・・!食べ物も、飲み物もある!(食べ物=ヘルシーバランス、飲み物=ウィダーインゼリー)
朝になれば、必ず迎えはやってくる・・・!

なんだか、アマゾンに墜落した飛行機の最後の乗客のような気持ちになっている中居は、そっとイリジウムの短縮ボタンを押した。

「はい」
『あ、木村ぁ・・・?』
「おぅ!お疲れぇ!もう終わった?」
『俺・・・、迷子なんだぁ・・・』
「・・・迷子ぉ!?」
『うん。迷子・・・。真っ暗で、どこだかわかんないんだけど、でも、大丈夫・・・』
「大丈夫って!え!?スタッフは!?」
『大丈夫、大丈夫。朝になるまでここでじっとしてるから・・・』
「じっとしてるからじゃねぇだろ!俺に電話するより、スタッフに電話しろよ!!みんなの番号入れといただろうが!」
『迷子になったら動いちゃいけないって、木村、言ったもんなぁ〜・・・・』
「言ったけど!言ったけど!!あぁ!俺スタッフに電話すっから!!」
『あ〜・・・、波の音が聞こえるぅ〜・・・』
「そりゃ聞こえるよ!!沖縄の島だろぉーーー!!!」
『俺、きっと帰るから・・・・・・待ってて、くれ、なあ〜・・・・・・、がくっ』
「なーかーいぃーーーーー!!!!!」

結局翌朝、一番の飛行機で沖縄に呼ばれた稲垣吾郎は、よろよろと這い出してきた中居正広とひし!と抱き合う、というシーンの撮影に挑まされた。
「・・・ウソじゃないんだけど、ホントでもない、この映像ってどうよ・・・・」

実際の放送が待たれるところである。


その26「なんてったってアイドル」

「なぁなぁ、中居ってキョンキョンっぽいよな!」
「俺?」
「男アイドル界のキョンキョンってゆったら、中居だと思うんだけど」
「そーかなぁ」
木村のセリフに首をかしげる中居は、小さな顔に、大きな目に、通った鼻筋に、(今は)白い肌にと、アイドルチックなルックスをしている。
「それに、存在がキョンキョンっぽい。いくつになっても、キョンキョン♪って感じで、またそれが全然無理した風がなくってさぁー!それにあれ可愛いよなー!!冷蔵庫のCM!」
「あぁ。あれね」
「絶対可愛いってぇーーー!!!」
木村は、あのCMがすごくすごく好きなのだ。可愛い!といつも思っているのだ。
これだけビューっと!これだけこれだけビューっ冷やせたらいいと思ってたでしょーー!?びゅーーーー!!!!ヒエマチタ!となっ?
というCMの、「となっ?」にたまらなく愛を感じている。
「あれさー!中居やってーやってー!!あのCM−!中居やってーーー!!」

だだっこたっくんにおねだりされ、中居はちょっとやってみた。
木村のヒエマチタ!に続いて、
「となっ!」
と。
「かぁわいいーーー・・・・・・」
「となっ!!」
「あっちもやって、あっちも!『なかったの、なかったの!だからつくったのぉー!!どーん!』ってやつ!」
「『ううん、なかったの、なかったの!だから、作ったのぉー!!どーんどーんどぉーーん!!』」
「それーー!!もー、さすが日本男アイドル界1のキョンキョン!!」
木村の言葉も何をいってるのかどんどん意味不明になっていく。
「えー!俺って可愛いかなー!!『となっ!』」
「かわいいーー!!」
「どぉーん!」
「かぁわいいってぇーーー!」
「ほんとー!でも木村のポテトサラダも超可愛いーーー!!!」

ポテトサラダとキョンキョンのCMごっこはいつまでも続いた。


その27「なんてったってアイドル2」

「なぁなぁ、中居ってアムロっぽいよな!」
「俺?」
「男アイドル界のアムロってゆったら、中居だと思うんだけど」
「そーかなぁ」
木村のセリフに首をかしげる中居は、小さな顔に、大きな目に、通った鼻筋に、(今は)白い肌にと、アイドルチックなルックスをしている。
「それに、声とかがアムロっぽい。歌ってるときと、喋ってるときが全然雰囲気違うとことかさぁ。それにあれ可愛いよなー!!マスカラのCM!」
「あぁ。あれね」
「絶対可愛いってぇーーー!!!」
木村は、あのCMがすごくすごく好きなのだ。可愛い!といつも思っているのだ。
あの歌声に合わせておきながら、かぁわいい声で、「まつげキュン♪」!あの「まつげキュン♪」にたまらなく愛を感じている。
「あれさー!中居やってーやってー!!あのCM−!中居やってーーー!!」

だだっこたっくんにおねだりされ、中居はちょっとやってみた。
わざわざ用意されたブラインドをかしゃっとやって、
「まつげキュン!」
と。
「かぁわいいーーー・・・・・・」
「まつげキュン!!」
「それーー!!もー、さすが日本男アイドル界1のアムロ!!」
木村の言葉も何をいってるのかどんどん意味不明になっていく。
「えー!俺って可愛いかなー!!『まつげキュンっっ!』」
「かわいいーー!!」
「『まつげキュンっっ!!」
「かぁわいいってぇーーー!」
「ほんとー!でも木村のブラインドも超可愛いーーー!!!」

ブラインドとアムロのCMごっこはいつまでも続いた。


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