ミュージアム 小説
――ふふ。さよなら…マリアン…。
闇
僕は死んだ。あの男の狂気の計画が実行されたとともに…。
濁流に飲みこまれた僕は、最期にマリアンのことを思い浮かべた。
――彼女を守りきることができなかった自分を悔やみながら…。
そして、それと同時にあいつらを裏切ってしまったという後悔もあった。
変だ。――後悔なんて…本当はしてないハズなのに…。
あいつらを裏切る事なんて最初からわかってたハズなのに…それなのに、
僕が真実を打ち明けた時のルーティの顔は、なぜか忘れられない。
――どうして…?
僕は死んだ。それと同時に自由が得られると思った。
自由に…やっと自由になれると思った…。
でも、その思いは叶わなかった。自由には…なれなかった。
冷たくなったこの体は、あの男の言い成りになって僕の意思に反して動き出し、
やつらに刃を向けた。
――ちがう!これは僕じゃない!僕の意思じゃない!!
そう自分自身に言い聞かせた。でも、ダメだった…。
何を言っても自分の体は言う事を聞かなかった。
鎖が…鉄の鎖が僕の心だけを縛り付けていた。
だから、僕がせめて言えたのは、この一言だった。
「コロシテクレ…ボクヲ…ハヤク…。」
自分の手で自由が得られないのなら、やつらに頼むしかなかった。
こんな僕の姿を見たやつらは、泣きながら僕と戦っていた。
そう、一番泣いていたのは…ルーティだった。
いつも喧嘩をしていた僕の、僕なんかの為に、やつは涙を流した。
――僕らは、闇に引き裂かれた姉弟だったのかもしれない。
スタンが僕にトドメをさした。いや、トドメをさしてくれた。
僕の心はやっと開放された…。
鉄の鎖は千切れ、背中からは白く大きな翼が生えた。
ソーディアン達は神の眼と、外殻を破壊するために自らの命を犠牲にした。
当然、その爆発に巻き込まれたシャルティエも命を落とした。
全てが消えて無くなった。
神の眼も、外殻も、ダイクロフトも…。全てが…。