この晶術で戦闘が終わった。
いつもとは違う戦い方をして、スタンは勿論、リオンもモンスターとの戦いを何処か楽しんでいた。
どうやら、ルーティの言う「気分転換」は成功したらしい。しかし・・
「もうやめましょ。」
「わたくしもちょっと・・」
「何でだよ、ルーティ、フィリア?」
スタンには良い気分転換になっていたので、不思議そうに尋ねた。
「全然、気分転換にならないわよ!余計に疲れるわ!」
「わたくしも・・とてもディムロスさんを扱えませんわ・・。」
「私はいつもと変わらないぞ?」
「・・ったく、自分から言い出したくせに・・」
ボソッと言ったリオンの言葉を、ルーティは聞き逃さなかった。
「あ〜もう!やめるったらやめるの!!ほら、スタン!アトワイト返してよっ!!」
『貴方って、本当にワガママねぇ・・。』
「ホントだよなぁ。俺、結構楽しかったのに・・。なぁ、リオン!?」
アトワイトをルーティに返しながら振り返ると、リオンは何となくバツの悪そうな顔をしていた。
「べ・・別に、僕は楽しくなんかなかったぞ!」
『ほっほっほっ。一番強力な晶術ばかり使いたがったのは誰かのぉ?』
「うるさい!余計な事を言うな!!・・マリー、シャルを返せ。」
「ああ、じゃあな、シャルティエ。」
『リオン坊ちゃ〜〜ん!マリーは乱暴に僕を扱い過ぎだよ!やっぱりマスターは君だけだよぉ!!』
リオンはフィリアに、フィリアはスタンに、ルーティはマリーにとそれぞれ剣を返して、結局、元の鞘に納まってしまった。
「あ〜あ、晶術使うの楽しかったのにさ・・」
リオンを先頭にマリー・ルーティ・フィリアと続き、最後尾を歩いていたスタンは空を見上げながら、ボソッと呟いた。
『別に、アトワイトじゃないと晶術が使えない訳じゃない。この私にだって使えるぞ?』
「あ、そうだよな!よし、今度はディムロスの晶術を使ってみよう!」
『・・やめた方が良いと思うぞ?』
「何でだよ?」
『晶術を使うのが楽しかったのはお前だけじゃない、という事だ。・・恐らくな。』
「何だ、それ?」
「おい、スタン!何をやっている!!早く来い!!」
先頭にいたリオンの声が聞こえた。どうやら、またモンスターと遭遇したらしい。
「よっし、晶術だ!いっくぜ〜、ファイヤーストーーーム!!!」
「シャル、行くぞ!?デモンズラーーーンス!!!」
ゴォ〜〜〜!!ドッカ〜〜〜ン!!!と、2人が唱えた晶術はモンスターに直撃した。
そんな光景を見て、ルーティ・フィリア・マリーは目が点になっていた。
「な・・な・・何やってんのよ!?な〜んで2人して晶術なんて・・。ディムロスの晶術だと、レンズまで燃え尽きちゃうじゃないのよ!」
『これは言い出した貴方の責任ね・・。』
「どういう事よ、アトワイト!?」
『さっきの【気分転換】で、2人とも晶術にハマっちゃったという事よ。』
『ほっほっほっ、あの小僧も素直じゃないのぉ。しかも、きっちりとシャルティエの最強晶術を使っておるわい。
ま、飽きるまで放っておいてやれ。』
「あ・・飽きるまでって・・。」
ルーティは顔を引きつらせながらスタンとリオンを見ると、2人は嬉しそうな顔をしながら話をしている。
「何だ、リオンもやっぱり楽しかったんじゃないか!」
「違う、そうじゃない!・・ただ、たまには使わないとって思っただけだ。」
「またまた〜。素直に言えよ、リオン?」
「うるさい!ほらっ、行くぞ!?グズグズしているヒマはないんだ!!」
「はいはい。そうだ!剣だけじゃなくて晶術でもコンビを組もうぜ、リオン!?」
「・・あんな晶術でコンビなんか組めるか。僕の足を引っ張るだけだ。」
「な・・何だとぉ!?」
そんなこんなで、この先数週間、2人は晶術オンリーで戦闘を繰り返す事になる。
ディムロスの晶術のおかげでレンズが燃え尽きてしまい、ルーティの機嫌は悪くなる一方だった。
「あたしのレンズ〜〜〜!!お金〜〜!!」
ちゃんちゃん♪