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古事記と植芝盛平 ―資料編― 2024年3月3日更新

 植芝盛平取材会見

 日 時  昭和42年(1967)頃
 場 所  東京都新宿区の合気道本部道場
 語り手  合気道創始者植芝盛平先生
 聞き手  北海道遠軽町白滝村史編纂委員

 委員:先生のおっしゃったことを清書されたものの中から、イザナギ・イザナミノ
ミコトと熊野八王子、天の村雲の九鬼さむはらの龍王の三柱が白滝神社にまつられて
おられるというのですが、あたしが調べたところ、先生が団体で白滝に入られるとき、
タケハヤスサノオノミコトの神をお持ちになったと思うのですが。

 植芝:その通りです。それは天の村雲九鬼さむはらっていうのはスサノヲのご神剣
やもの。それをハヤタケムスの大神と称えるのです。それはタケハヤスサノヲの大神
様やけれど、スサノヲの神様大海原を知ろしめに事依さし(ことよさし)たてつまり
と古事記にあるんです。大海原とも地球上のこと全部…大地のことです。それでその
ミイズにも形はないのです。熊野神社の域でこれをカムスサノヲの大神と顕現するの
です。最初はタケハヤスサノヲの大神であり、またおさまってきて、全般におさまっ
た折にはそれがミロクの大神と顕現するのです。ですが、カンスサノヲとカミスサノ
ヲと顕れるのですよ。同じ神様です。

 委員:この神様は滝上(上白滝のこと)に奉られたものですか、二股のほうですか。

 植芝:滝上です。(上白滝神社)

 委員:神社は現在もあります。

 植芝:それでね、それをね、お察し(?)でなかったら、おまつりしてください。
おまつりする折にね、あなたが神様のことがご用がうんぬんであったら私が一度行き
ます。それで皆様と久々で対面もできるしな…。

 委員:上白滝神社の裏山に十二ヶ所、熊野の八王子の神様が奉ってあります。

 植芝:熊野十二社権現です。熊野というのは紀州の田辺にあって、私の出たところ
ですが、それが金毘羅山と同一社(?)になったんです。

(取材メモ)
 自身の守護神スサノヲノミコトについて語る開祖。開祖は白滝入植の際に、スサノ
ヲの巻物を持ってきており、それは現在も上白滝神社に納められている。さむはらの
龍王=スサノヲであることの説明と、スサノヲが地球を治める神様であることの説明。
一般的にスサノヲは海の神様であるが、地球は水の星であることから、海を治めるこ
とは世界を治めることになる。
 機会があればまた白滝を訪れたいと言っている。この前にも「もう一度北海道へ行
きたい」と発言をしている。
 白滝に奉られた熊野十二社権現に関しては村史にもおおよその地図が載っている。
一度回ってみたいとは思うけれど、人の入らない山の中であるため探すのは危険で困
難であろう。

 植芝:全体全部をスサノヲの大神というのです。タケハヤスサノヲの大神と最初言
われて、それで一般のほうにはカミスサノヲの大神と顕れているんです。それでそれ
を三つに分けまして、熊野三社に分けてます。天狗ではハヤタマ神社と奉って、それ
から那智山ではやはりスサノヲの神様、そして本宮山ではやはりこれもスサノヲの大
神。スサノヲの大神は人気なんです。それでね、今の神主では絶対にわからんことを
私知ってるから。それは大変なことですよ。本当の神様を奉るためですよ。それだっ
たら私が一度行っておまつりしましょう。

(取材メモ)
 熊野のスサノヲ観。上白滝神社のことはやはり気になるらしい。

 植芝:「赤白たまや ますみたま 合気のみちは 小戸の神わざ」とこういう、赤
だまということは日本ではトヨタマヒメの神様をいうてるんです。赤だまというのは
息の神様で、合気の道は小戸の神わざです。小戸というのは禊です。禊は真の武道で
す。どういうわけでそういうこというかというと、「筑紫の日向の橘(たちはな)の
小戸の阿波岐阜ヶ原(あはぎがはら)に禊はらいたもうときになりませる神の御名…
(祝詞)」というのがあるんです。これはどういうことかというと、地球修理固成の
折に神様はこのイザナギ・イザナミの神と化身して顕れた。その折にイザナミの大神
様は、火の神を産んで黄泉つ国に神去りたもうたという歴史があるんです。要するに
穢れの国に行かれたということです。そこでイザナギの大神様はお迎えに黄泉つ国ま
で…。醜女つ国(しこめつくに)までお迎えに行ったところ、穢れが多くて帰ること
ができぬ。そこで歴史にあるように黄泉比良坂(よもつひらさか)の戦いがおこるの
です。穢れをはらうために。それで。はらいはらい行って、最後に千引きの岩の中に
おいて事戸(ことど)を渡したもう云々というところまでやってくるんです。桃の実
を三個投げてマガツイクサを追い払う、邪気を追い払う。それで千引きの岩の中にお
いて、千引きの岩のことをなんと言うかというと大和魂の練成であります。それを中
においてナギ・ナミ二尊、ヨモツ大神(イザナミ)とイザナギの大神様…。
 …(吾は一日に千五百)の産屋を建てるということを誓うんですよ。そういうよう
なことがあるんです、歴史にね。このナギは、草薙の剣といってるものは形のある剣
でところが天の村雲の剣は、九鬼さむはらの竜王というものは他にないんです。これ
はじゃないんです。スサノヲの大神様の魂の入っている剣であり、またスサノヲの大
神様をお守りしている守護の神様なんですよ。大きいんですよ。世界を守る。
 なぜかっていうと歴史にはちょうどスサノヲの大神様がお生まれになった折にやな、
禊です。つまり今でいうとおり「筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐ヶ原の清浄において、
云々」であり、第一番がけに穢れをはろうて、禊はろうた時に生まれたのが、ツキタ
ツフナドの神様である。ツキタツフナドの神というのは杖とも柱とも神様の、じきじ
きの神様のやな、御守護なさる大宮のことである。今の現在の大宮も同じ。また神代
の時代では神様の神様である。その神様までも穢れた世界になってから間に合うから
(イザナギは)杖を投げ捨てた。その杖を投げ捨てたおかげで、ツキタツフナドの神
というのが生まれた。神様の杖とも柱とも、神様のご守護の御守護神である。その御
守護神も穢れが多うて間に合わんというゆえんが今日の時代になってきた。それが
(古事記に)書いてあるんです。それでその次には十二神産んでいるんですよ。ツキ
タツフナドの神よりヘツカヒベラの神様が産まれるまでに十二神産んでいる。その他
にアマテラス大御神様とスサノヲ…。
 ツクヨミの大神様、三貴子を産んで…それは禊だから産まれてきたのです。これで
十五柱の神を産んだんです。これで、初めてこの宇宙…する営みのための糸筋の順序
がたってきたんです。その折の神様です、スサノヲの神様は。スサノヲの神様は大海
原ですから、世界中のことです。

(取材メモ)
 「小戸の神技」についての説明。中身は古事記に出てくる三貴子の誕生を語ってい
るだけだが、この説明を聞いて私は初めて意味を理解した。小戸はイザナギが禊を行
った地名。つまり合気道は禊技である。






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