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 鞍馬礼讃   ー 鞍馬寺晋山式 ー

 鞍馬山は深い静けさに包まれていた。空は冴え冴えと澄み、谷間を渡る風には冷気が宿る。木々の枝先は紅を含みはじめ、秋の気配はひそやかに色を濃くしていた。
 やがて堂内より心経が湧き起こる。低く、深く、幾重にも重なる声は、まるで大地そのものの響きのように胸奥に迫る。心経は天井を伝い、木組みに反響し、音は光と交じりあって空へと溶けていく。
 燈火は絶えずゆらぎ、しかし消えることはない。燭台に揺れる炎は風に呼応するように細く震え、その一滴の光が闇を押し返す。人の気配は静まり、ただ炎と心経とが堂内を支配する。
 新たなる法燈が掲げられるとき、山はひときわ深く息づく。鞍馬寺の歴史が頁を繰るその瞬間、参列する者の思いを超え、自然と宇宙とがひとつに結ばれて、山は法の器としての姿をあらわす。






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