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  「今のまま」

彼との連絡が途絶えてから、1ヶ月が過ぎ、もう2ヶ月になろうとしていた。
連絡をお互いに取ろうとはしなかった。いや、取れなかった。
ふたりは、きっと、どこかで感じていたんだと思う。
この次、ふたりが話す時は、「別れ」を口にしなければならなくなるだろうと、予感していたんだと思う。
ふたりは、趣味も、物事に関する価値観も、これからの生活スタイルに関することさえ、同じだった。
彼と一緒に暮らすことができたら、それはきっと幸せなものだろうと、私も思っていたし、彼もそれを望んでいた。

もし、たぶんないと思うけど、本当にもし、二人が別れることになったら、いや、別れることになったとしても、恋人が友達という立場になっても、ずっと、付き合っていこう。
私たちは、そう約束した。
同じ物を、ことを、気持ちを分かち合えるふたりだったから、彼も私も、恋人という関係がなくなったとしても、ふたりの関係は失いたくなかった。

でも、今、それが失われようとしている。
お互いに連絡を取らないことで、二人の関係はつながっているようなものだった。
近かったふたりだけに、あまりにもわかりすぎていたふたりだっただけに、恋人でなくなったその後に、友達としての付き合いができるのか、自信がなかった。
私自身もどうしたらいいのか、わからなかった。迷っていた。
このままこの問題をそのままにしていいはずはなかった。
そんなはずはなかったけど、そっとしておきたかった。

恋人に戻れる可能性がある、今のまま。
この先、ふたりの関係が終わってしまうのには、耐えられないから。
そう、今のまま。


流 遙夏
2001.2.5
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