リスク管理

 ここでは以前から何度も、”自己責任”と共に、”リスク管理”って言葉が繰り返されてきたよね。今回はますます脱線して、その”リスク”ってなーんだ?について考える(小沢昭一的こころだー?)。

 辞書で調べると”危険”。つまりリスク管理とは、”危険管理”。でももうちょっと深いニュアンスがあるようだ。あるバックカントリー系の雑誌には、もっと詳しく載っていた。

 ”リスクとは冒険、つまり自己意志によってもたらされる”危険”で、避けられない”危険”であるハザードや、”危険”全般をさすデンジャーとはちょっと違う”との事。さすが”自己責任”の国イギリス、同じ”危険”でも、様々使い分けているのね。

 さて、危険を管理するって一体なんの事でおじゃる?。


 まず最も一般的且つ自然な行為は、危険から回避する事。そりゃー、最初から危険性が100%なのを最初から知っている事は、誰だってやらないわなあ。だが世の中、すべてリスクを避けていては、生活すら出来ない。危なくて車にも乗れやしないし、食物を口にする事すらままならなくなる。そこである程度のリスクは受け入れながら、そのリスクと利便性を天秤にかけながら、両者バランス取ってつき合う必要性が出てくる。

 ただ、全く同じ行為も、その人それぞれによってリスクの度合いが異なるどころか、まるっきり別モノになるもんだから、物事はやっかいで一筋縄では行かないのも事実。例えばスキーでシャンツェからのジャンプがいくら可能だからと言って、全くの初心者がいきなり90m級のシャンツェから飛び降りるのは、自殺行為以外のなにものでもないけど、オリンピック選手にとっては、単なるウオーミングアップにしか過ぎない。

 つまり、全く同じ行為でも、その人のスキル等によって、そのリスクは全く違ってくる。

 また、そのリスクがもし全く同じ条件としても、それをやるかやらないかの判断は人によっても違う。転んでちょっと膝をすりむく事すら恐れて、自転車に乗る事すら怖い人もいれば、体中ボルトだらけのくせにまだオフロードバイクでかっ飛ぶ人もいるなど、ピンきり。

 つまり、”どこどこまでの危険性があるなら挑戦するけど、どこどこ以上ならやめる”といった、境界線も人それぞれである。そしてその境界線は、第三者の生命・財産・権利・e.t.c.とかに影響を及ぼさない限り、高かろうと他人にとやかく言われる筋合いはないし、他人に言う権利もない。


 結論としてリスク管理とは”その個人のスキルに応じた危険度を、その個人が許容できる範囲内に納めながら、事を進める”と言う訳。だからそのボーダーラインはますますピンきり、本人にしか分からない。

 私なんか親戚やらに時折”冬山なんて危ないから早くやめなさい”とありがたい忠告を受けるけど、私にとっては山スキーより、次の動きが予想出来ないスキーヤー・ボーダーでにぎわっているゲレンデの方が、よっぽどハイリスクなんだってば!(事実、子供の頃ゲレンデで人にぶつけられて骨折した)。

     リスク管理は人それぞれとは言ったけど、但しここで一つだけ追記。現実に潜む危険度を十分に知らないで危険に挑む例などは、リスク管理とはとても呼べない。要はその本人がそれ相当のリスクを自覚しているかどうか。それが自覚以上のリスクだった場合、それを”無謀な行為”と言う。

 ちょっと脱線。リスクに挑むとスリル満点!。でもリスクとスリルとは、似て非なるもの。ジェットコースターのように、100%の安全性を考慮された乗り物はスリルは高くてもリスクはゼロ。逆にあんなバランス悪く、おまけに小さな前輪なのでいつ蹴躓いて転ぶか分からない、三輪車に乗る幼児の方が、遙かにハイリスク!?。

 ついでにもう一つ。リスク軽減で最も一般的なのが保険。でも新聞のコラムには、その逆の話が書いてあった。生命保険に必要以上に加入する傾向のあるこの国では、旦那が契約期間中に死ねばハイリターン、さもなくば掛け金が家計を圧迫して生計が成り立たなくなるなどでハイリスクなんだって!。


 リスクの種類・質こそ違え、八百屋や魚屋さんの仕入れだって、リスク管理と言える。仕入れ過ぎて在庫が余れば売れ残って損害出すし、逆に少なすぎて欠品ばかりじゃ、品揃えが貧弱過ぎて客が離れる。そのぎりぎりで許容出来るボーダーラインを狙って仕入れる訳。この”在庫”を”危険度”に置き換えたら、山スキーと一緒でしょ?。危険度が高すぎれば怪我or遭難するし、逆に危険度が全くなければ物足りなくて面白くない。

 ただ扱う商品によっては、リスクを負うのが商店じゃなくて問屋っていう種類もある。本屋やバイク屋もそうだって。これらの店に並んでいる商品は、商店の買い取り物じゃなくて問屋・メーカーからの預かり物。これを委託販売と言う。これなら商店は在庫リスクを負わなくて良い反面、数を売ってもあまり儲からない。ローリスクローリターン。

 ついでに委託販売だと、問屋が何百とある小売店の販売量を見込み、入荷量・価格を弾力的に変えて売り切るなんて事は不可能だから、大量の返品コスト(返本なんて、ものすごい規模だそうだ)を最初から上乗せして卸売り価格を設定してある。もし生もの扱う八百屋や魚屋まで委託販売を始めた日には、我々のエンゲル係数は倍増するかもね。

 おのおのがリスクを負うって事が、ハイリターンのみならず、消費者の財布に優しく、省資源・省エネ、つまりは公共の利益につながる例。リスクを負う=責任持つって事だからね。

     旧ソ連時代の社会主義では一般国民は、倒産・失業・在庫e.t.c.等のリスクを一切負わなかったのであれだけ無責任な社会構造になって結局内部崩壊したけど、資本主義では大企業から個人商店までおのおのがリスクを負いながら、こうしてなんとか続いている。しかしこの資本主義国日本にも、リスクを一切背負おうとしない、旧ソ連真っ青の硬直システムも現存している!。

 その他にリスク管理の手法上良く使われるのが、リスクの分散。資金運用なんか、預金と株式と投資信託と国債e.t.c.の組み合わせうんぬん。でも山での危険に対する分散と言ったら、せいぜい雪崩の起きそうな斜面は一斉にじゃなく一人ずつ横断する事位しか思い浮かばないなあ。リスクの分散については今回はパス。
 やっぱこの手の話題になると、話がくどくなるなあ。やはり1話では完結しなかったので、この続きはスキーの更新ネタ切れの時にでも、つなぎでまたネ。
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