再びロープくぐりについて-2

 ”再びロープくぐりについて”の後編。くどいって?。大丈夫、この一話で終わるからサ。
 以前のコラムの繰り返しにはなるが、老若男女いろんな人が行き交う、いわば”公共の場”であるゲレンデでは、単に自己責任では済まない事情がある。ロープをくぐって滑ればその後にはトレースが残る。後で勝手にそれを辿った大人が悲惨な事故にあってもそりゃー自業自得だけども、ゲレンデにいるのは大人だけじゃない。ちまたに垂れ流し状態のパウダー映像に触発されている、自己責任の意味なんか知らない小学生や中学生だって沢山滑っている。

 そんな小さな子供に対してまで”自業自得さ、ザマーミロ!”と言えるか?、これを知り合いのスノーボード編集者に指摘された時は正直言って、”自己責任”を振り回していた自分が恥ずかしくなった。例えトレース付けた大人だけじゃなく、パウダー滑走映像・写真を垂れ流して無責任に子供を煽り立てるメディアも悪いとしてもだ。

       ”お前だって、何時雪崩れてもおかしくないコースを無責任にWEBに垂れ流ししていないか!”って?。だから私はこうしてコラムでクドクドと、リスク管理の重要性を愚痴っているじゃあないですか!(ソーダッタンデスカ?)。

 確かにコース外へトレースを付けた大人の責任云々については、異論を唱える人もいるだろう。だが刺激を求めてうずうずしている、まだ判断力が未熟で怖い物知らずな子供達の前で、いわば挑発行為とも取れる、もっと言えばルール違反のお手本を見せる事は、大人として積極的にすべき事でないのは確か。まあこの国に未成年者入場禁止のスキー場でもあれば話は別だけどね(風俗営業?ワクワク!)。

     とは言え私もロープをくぐる時がある。スキー場からその上にある山に登る時。昨年キロロで子供らに”あのおじさん、立ち入り禁止のロープくくっているよ!”なんて後ろ指さされた時はビクっとしたけど、こっちはシール付けてラッセルして登るので、ゲレンデ装備の子供らが真似しようったって出来ないし、ちゃんと入山届けも出しているのだから、これ位は許容範囲でしょう?(ユルセ!少年!)。

 ただ、スキー場のPRになるテレビやビデオの取材時や、スキー場CMのパウダー滑走シーンなど、宣伝のためだけにコース外を認めるスキー場の態度にも頭に来ない?。潔癖整地で有名な西部系の滑走可能コース内になんか、富良野・東山スキー場CMシーンみたいな疎林のパウダー斜面、絶対ありっこないって!。誇大広告でJAROに訴えたろか?。

 で、CMのシーンみたいにもしもコース外パウダーを楽しんだ日には、事務所で丸一日お灸を据えられる事間違いなし?。そう言うのご都合主義って言うんだよね。


 ”パウダーの聖地”などと、とかくメディアにもてはやされているニセコですら、リフトの機動力をフル活用して滑れる広大なオフピステの多くがもはやロープで規制されてしまったのが今の現状。昨・一昨シーズンに、かつて楽しんだ斜面を再訪しようとしたらあちこちで通せんぼ!。どこでも滑れた古き良き20年前のニセコを良く知っている私としては、とても残念ではあるが、これももし、勝手な利用者が自らの首を絞めた結果であればしょうがない。
     分かっていて自らの意志でコース外に滑り降りたのにもかかわらず、その後迷ったり身動き取れなくなったもんだから、”管理が悪い”って救助に来たパトロールの人に食ってかかるバカヤローがいるようじゃ、コース外完全閉鎖されてもしゃーないわな。調子のいい利用者に、勝手に滑りたい時は”大人”、その後なにか事が起こると”子供”、のようにご都合主義で使い分けられたんじゃ、管理する方もホント大変!。

 かろうじて規制から逃れたスロープだって、土曜の午後には既にズタズタ、見る影もない。

 考えてみれば、たったリフト一本の搬送能力ですら日数千人もあるのだから、数千人が押し寄せればたとえどんなパウダー大斜面だって、あっと言う間にコブ圧雪ズタズタスロープになるわなあ。逆にロープで規制されていて、そこは心ある大人が入り込まないからこそ、オフピステにおいしいパウダーが残っているとも言える。
(突き詰めて言えば正直者がバカを見ている。俺だって滑りたいの我慢してるんだゼ!)

 ちょっと後ろめたい気持ちを伴いながらロープをくぐって滑る行為が、本当に”フリーライド”って呼べるのかい?。えっ?”ロープをくぐっても、俺は後ろめたさなんてクソも感じないぜ”だって?、そういうアンタの大脳前頭葉はかなり未発達、本能と欲望だけで生きるサル並だっつーの!。


 くどいけど、最後に声を大にして言う。確かにロープをくぐる行為自体は違法ではなく、”ロープをくぐったら○ヶ月以下の懲役もしくは○○円以下の罰金云々....”という罰則規定もない。でも違法じゃないからと言って、幾らくぐっても良いと言う訳では決してない。皆が勝手にくぐって社会問題になったら、単なるルール違反にとどまらず規制の網を掛けたがっている人間はいくらでもいるのだから、雪山まで管理社会に飲み込まれる事だって、あながちあり得ない例え話ではない。

 一時の快楽のために今自分で自分の首を絞めた、そのつけは後で払う事になるかも知れない。自分たちの遊び方が社会一般から今どういう風に見られるか、各々が客観的に観察して行動していかないと、自分たちのフィールドは守れない。



 こう書くと、パウダーを滑るなんて、幼稚なこの国じゃあもはや望み薄みたいに見えるけど、ところがぎっちょんちょん、リフトにこだわらずにシール・スノーシュー履いて(Poorman's Helicopter?)、ひとたび管理者のいない山に一歩踏み出せば、そこには”自分のミスは自分の命で贖う”という自己責任の掟が今なお通用する、バージンスノーの涎もののスロープが至る所に広がる(まあ厳密に言えば国有林だから管理者は営林署?)。規模やスケールだって、リフト脇の比じゃないよ!。私がシールにこだわるのもこの理由。

 自分の足で登ることで体力もつくし、健康やダイエットにも繋がるし、リフト代掛からないし、運動療法でストレス解消になるし、人で混み合うこともないし、うるさい場内放送だってないし、下山後の風呂やビールは最高だし、せっかちに朝一のリフトに寒い思いして並ばなくて済むしと、プラス思考で考えれば良い事ずくし?(これでスノーモービルと山でかち合いさえしなければ文句なし。クソー!)。

 どう?。管理者の目など一切気にする必要もなく自己責任の元、行きたい所へ行って自由にのびのびと滑る、これが真の”フリーライド”なのサ!(キザだねえ)。 


前のページに戻る