6月15日のふたご対談で冗談事のように書いた
「フライング・キッズとてんぷらガードの死闘」。
(参照6月15日のふたご対談
しかしそれは冗談事ではないことがその後の調査で
判明しました。
では、ロシア公文書館の旧KGBの資料から
その様子をみていきましょう。

 

発掘アルヒーフ(1)

「旧KGB要員養成資料、
世界の秘密機関のひみつシリーズより。」

フライング・キッズのすべて

油で衣に包んだ素材を揚げる「フライ」「揚げ物」「天麩羅」は、
たいへん古い歴史をもった調理法である。
人類が本能的に嗜好する油を使い、高温で短時間に料理するが
衣によって素材の成分を逃さない「フライ」は、各国に伝わり
それぞれの国で伝統的な食事として受け継がれてきた。
ヨーロッパのフライ、フリッター、中国の唐揚げ、ロシアのピロシキ、
日本の天麩羅などと、家庭やレストランで人々の舌を楽しませている。

しかし、それは「フライ」の光の部分に過ぎない。
われわれ、世界の裏面に生きるものは「フライ」の「影」の部分を
知らねばならない。

そう、揚げ物の隆盛の影に暗躍するあの組織のことを
話さねばならない。

いわゆる「フライング・キッズ」
の血塗られた歴史を、である。

1.フライング・キッズの歴史とその危険性

フライがヨーロッパの食文化において重要な位置を占めてきた頃、
ルネサンス期のヨーロッパでは暗殺の嵐が吹き抜けた。
イタリア、ロマーニャの悪名高いボルジア家のように毒殺や暗殺によって
政治権力を手に入れようとする王侯貴族達が多数いた。
当時の暗殺者の最もよく使った毒は「砒素」である。
しかし砒素はあまりにも多用されたために毒殺と判明する危険が高い。
そこで現れたのが「フライング・キッズ」とよばれる暗殺団である。

フライング・キッズはフィレンツェの聖ヨハネ・ルッキオ修道院の修道僧達が
作った組織である。当時のフィレンツェの支配者はメディチ家である。
メディチ家は数多くのローマ法王を出し、権勢をふるった。
だが、その権力掌握の過程で暗殺という手法が使われたのも事実である。
しかしその証拠は現在まで挙がっていない。
ルッキオ修道院の修道僧は、その修道僧という身分を生かして、
法王庁や各都市国家の教会にも用意に入り込めた。
修道僧同士のネットワークを利用した、メディチ家の狡猾な陰謀である。
しかし、こういう手段は一度でも発覚してしまえばもう使えない。
絶対に発覚しない毒殺手段が必要とされた。
そこでメディチ家は最強の手駒を使うことにした。
「料理」である。

メディチ家の令嬢カトリーヌ・ド・メディチがフランスのアンリ2世に嫁いだ折、
フィレンツェから連れてきた料理人が現在のフランス料理の基礎を
築いたことからもわかるように、当時のフィレンツェの料理水準の高さは
ヨーロッパ最高峰であった。ヨーロッパの宮廷で夏でもアイスクリームを
食べられたのはメディチ家だけだったという。
メディチ家は東方交易で財をなした商人の出で、その過程で東洋からの
技術や知識を豊富に取り入れることができたのであろう。
そして暗殺の秘法、フライで相手を死に至らしめる方法を
編み出したのだ。

「氷とフライを同時に食べるとおなかが痛くなる。」

フライング・キッズ、聖ヨハネ・ルッキオ修道院の修道僧が使った
この暗殺の秘法はヨーロッパの君主達を次々に死に至らしめた。
周囲のものはどうしても暗殺の証拠がつかめなかった。

だが、ルネサンス後期になるとこの暗殺法を見抜くものが出てきた。
偉大なる錬金術師パラケルススは自著の中で
「美食を志すものよ、気をつけねばならぬ、フライと氷菓子を同時に食べる時、
汝の胃袋を神が見放すことになるだろう。」と述べている。

だが、フライング・キッズは新たなる方法を編み出し、
世界中の標的を暗殺する世界暗殺団と化していった。
日本の江戸時代の最初の大君、徳川家康も鯛のフライを食べて死んだ。
偉大なる天才音楽家、アマデウス・モーツァルトも豚肉のカツレツを食べて死んだ。
はっきりとわかっているのはこれくらいだが、他にも数多くの王や指導者が
フライを食べて死んだ。そうに決まっている。フライを食べて死んだに違いないのだ。
フライはおそろしい。しかし食べたい。人間の油に対する嗜好を的確についた
フライング・キッズの暗殺技術は時代を超えて現在も使われつつある。

2.フライング・キッズの暗殺技術

現実のフライによる暗殺はどのようなものか。
それに対抗するためには。

クラッシュ・イーティング法

フライング・キッズが最初に発明した方法である。
フライとある種の食物を同時に食させることで標的の胃袋を壊滅的状態にし、
原因不明の死を遂げさせる方法である。
シャーベットやカキ氷やフラッペやカチワリなどの「氷」を
作用させるのは最も古典的でまた確実に相手を死に追いやることができるが、
同時にすいかを食べさせる方法とともに知れ渡っているため現在では
あまり用いられない。
しかし最近では、アイスクリームの天ぷらという直球勝負や
パンと見せかけて氷で作った彫刻のパンだったり、箸と見せかけて氷でできた
箸だったり、メロンと見せかけてスイカだったりするような変化球もあったりするので
注意が必要である。

スウォード法

他の方法にくらべてこの方法は正々堂々とした方法である。
手にしたフライで相手を刺すのだ。
まず鋭利なパン粉を使用してフライを揚げる。
(天ぷらの場合は鋭利な天ぷら粉を使う。)
そしてあつあつのうちに相手を刺す。
まず相手の利き腕の腱か大動脈をフライで切り、相手の攻撃能力をなくす。
そしてフライで相手の頚動脈か臓器を狙う。
この方法は高度なフライの訓練を必要とする。
なお、このときに用いるフライは揚げたてでないと相手に非常に失礼にあたる。

マリオネット法

これははなはだ非科学的な方法と思われている。
なにしろフライを動かし、標的をフライ自身に殺させるのだから。
フランスのルイ十三世の宰相であったリシュリュー枢機卿も
その執政中何度もフライに命を狙われた。
この方法は実際に命を奪うほかに、「フライが襲いかかってきた」と
その標的が体験を語ることにより、その標的の社会的信用を失墜させる効果もある。
それほど異常なように見えるこの方法だが、トリックは単純である。
フライにピアノ線のような細い糸を通し、隣の部屋に通す。
その糸の端を手で持ち、ひたすら神に念じるのである。


他にも日々新しい暗殺法が編み出されているらしい。
我々もその創意工夫に学ばねばならない。

 

3.フライからの防衛法

ここでは実際にフライング・キッズから身を守る方法を述べておく。
つまりフライから身を守る方法だが、ここでグローブを用意するなどと
一瞬でも思った者は、それなりの最後が待っているであろう。

クラッシュ・イーティング法からの防衛

この方法はまず、フライとともに氷やスイカを食べないという心構えをするのが
大事だが、フライング・キッズはどんな新しいクラッシュ・イーティングを開発して
いるかわからない。そのために次のような対策をとれば危険性は減少する。

フライ料理は何かのソースや調味料をつけて食べることが多いが、
用意されたタルタルソースやウスターソースは決してつけてはならない。
ソースの中にクラッシュ・イーティングのターゲット素材(フライと食べると
クラッシュ・イーティングを引き起こす素材)が入っていないとは
誰にも言えないのだ。他人に用意されたソースは特に危険である。
そこで自分でソースを用意しておく。
どんな料理にも対応できるように、
ケチャップ、ドレッシング、ナムプラー、トウバンジャン、酢、化学調味料、
パルメザンチーズ、コショウ、練り歯磨き(イチゴ味)、砂、血などを
常に携帯しておくべきであろう。
日本の天ぷら料理店などの中には塩で食べることを強要する店があるが、
これなどはフライング・キッズの勢力が日本に相当浸透している証拠である。
断固として拒否するべきであろう。

スウォード法からの防衛

実力行使であるスウォード法の対策はまず格闘技、護身術の技術の
向上であろう。
しかし、そういった技術を持たないもののために、対スウォード法専門の
護身法がある。
まず、相手がフライを構えたら口からもうれつな湿気を吐き出す。
そして相手のフライをふにゃふにゃにしてしまうのだ。
このため、普段から必要以上に水分を取っておくことをすすめる。
水が怖い者は市販の防フライチョッキなどを装備しておくのもよいだろう。
オフィスの入り口にはフライ探知機などをつけておけば安心感も高まる。
しかし、現状では料理店のディスプレイ用の食品サンプルとの区別は
できないので、過信は禁物である。

マリオネット法からの防衛

気をしっかり持っていれば大丈夫だろう。

4.我々の使命

フライング・キッズ、彼等は500年以上にわたって世界の裏面で暗躍
してきた組織である。彼等に対抗するのは至難の業だろう。
だが、我々はすでにフライを恐れない。
我々の胸には正義の熱い心が天ぷら油のように200度までたぎっている。
世界の人々を邪悪なフライより守る、
それが我々の組織、「てんぷらガード」の使命なのだから!

 

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