吾作は、それから駆けずり回った。
伏見稲荷の稲荷大明神への直接の交渉はもちろん、
伏見稲荷の神主や禰宜への根回し、氏子へのつけとどけ、
近隣の住吉大社や春日大社などの有力神への支援要請。
こうして周囲を固めて稲荷大明神本神が嫌とは言えない状況を作り出しおった。
「魔法、っていうのは、ぱっとできるものではなく、
こう言った地道な行動が実を結ぶものなんですよ。
結果だけを見て魔法って華やかな世界だと思われる方もいますが、
そんな甘い世界ではないですね。(笑) 」
吾作はそう語った。
「とにかく、彼の交渉には誠意が感じられるね。
確かに周囲への気配りなど交渉術はすばらしいよ。
けれどもね、彼の話し方にはそれだけではないんだよね。
なんていうかさ、話を聞かせる心ってのがね、あるんだよ。
それを吾作マジックとでも言うべきかもしれないね。 」
伏見稲荷の稲荷大明神は、後にそうのたまってくれた。
「普通だったら、神罰を下すところなんだけどね。
けどさ、あそこまでされたらそんなわけにもいかないよね。」
稲荷大明神は、金輪を吾作にあらためて授けてくれた。
もちろん、うりよう狐のことも許してくれた。
吾作の魔法…。それが達成された瞬間であった。
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