「ありがとう、ありがとう、吾作どん。」
「なあに、いいってことよ…。おまえのためじゃねえ。
俺のためだ。 」
「吾作どん、すっかりしゃべり方がちごうとるがな。」
「いいか…。魔法って、いうのは他人のためにすることが、
そのまま自分のためになる。それが魔法って、もんじゃねえのかな。」
「なんだかよくわからんが、それがわかってもらえただけで
けっこうだ。じゃ、オラは行くだ。 」
うりよう狐は背を向けて森へと帰ろうとした。
「まてよ。金輪、かえすぜ。」
「いいよ。それはもともと、お前さんのもんだ。」
「…どういうことだ。」
吾作が聞き返したそのときには、もううりよう狐はそこにはおらなんだ。
真っ赤な大きな朝日が登る中、吾作はいつの間にか眠り込んでしもうた。

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