するとどうしたことじゃろう、吾作の姿がみるみるかわり、
看護婦の姿になってしまいおった。
吾作はイギリスの裕福な家庭に生まれ、各国語や歴史、哲学、数学を学び、
クリミア戦争において傷病者看護の組織的な活動を行った。
これまでの女性の献身・忍耐・従順さを重視した看護ではなく、
責任を伴う仕事を行う看護婦という職業を確立し、
後世のフェミニズム運動のさきがけとなりおった。
「看護婦の看護は、病気の看護ではない、病人の看護じゃあ。」
吾作がそうつぶやくと、みるみるうちに吾作の姿は
もとの百姓の吾作の姿にもどってしまいおった。
「これはなんとしたことじゃあ。」
次へ
|