気がつくとあたりはとっぷりと暮れ、置いておいたはずの鍬もなくなっておったが、
吾作はそんなことを気にも止めずに 川の傍をあるいておった。
「これで夢にまで見た魔法少女になれるんじゃ。」
まったく何を夢見ておったんじゃお前は、そう言う皆の心持ちを
けっして理解できないわけではないが、吾作の頭の中は魔法少女で
いっぱいじゃった。
ちょうど、鎮守の森の横を通りかかったときじゃった。
「吾作どん、吾作どん。」
女のような声で吾作を呼び止める声がする。
「誰じゃ、吾作のことを呼び止めるのは。」
「自分のことを名前でいうのはやめてくれんかのう。
たいそう気持ち悪いのでのう。 」
「黙れ、しょうもないことを言わずに出て来い。」
森のしげみがざわざわと動いて、小さな子供くらいのけものが出てきおった。

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