今回の話は以前出遭った怪異…と呼ぶほどの事でも無いのかも知れないのだが…とにかく以前出遭った怪異に再び遭遇した話である。

なお、これらは全て私が実際に体験した事である。
記憶を頼りに書いているので、実際の行動・時間などとは多少のズレが有るかもしれないが内容は事実である。
また、この文章を読んだことにより貴方の身辺に何かが起こっても、当方は一切責任を持たないことをあらかじめ御了承頂きたい。
怪談は、書く側は勿論だが、読む側にも覚悟がいるものなのだ、ということを知っておいて欲しい。



『〜傷・再び〜』

以前、その参『〜とある寮〜』で、前に住んでいた寮で起きた怪異について書いたが、似たような事が再び起きた。
『〜とある寮〜』の中に『〜傷〜』という副題で書いた話。
目が覚め、起きてみると、考えられない場所に不可解な傷があった、と言う話だ。
それが、また、私の身に起きた。

左肩の辺りに極、極々僅かだが痛み…というか痒みを感じた。
服の下に右手を入れ、何の気無しにその部分に触れる。
傷だ。
服を脱いで見てみる。
傷がある。
引っかき傷だ。
左肩、腕の付け根辺りから肘のやや上辺りまで、数本の引っかき傷があった。
私は結構痒がりで、つい掻き過ぎて傷を作ることも良くある事。
なのでこれも、まぁ寝ている間に知らずに掻いて出来た物だろう、と…最初はそう思った。
…が。
おかしい。
季節は既に冬、着ている物は勿論長袖だ。
なのでこんな傷は…いや、寝ている間に無意識の内に服の下に手を入れて掻いたのかも知れない。
普通ならそれで解決、何も気にする事も無いのだが…。

左腕に傷、という事はおそらく右手で掻いて出来た傷だろう。
勿論左手でも左肩に傷を付ける事は出来るが、肘の辺りまでという事になると、肘の下にもう一個関節が無いと無理だろう。
また、長袖なので、左手でこの傷を作るには、左半身は服を脱ぐ…肌を露出させる必要がある。
寝ている間に、無意識にそういうことをした…とは考えられない。

今、この文章を目にしている方の中に、何故私が「左手」にこだわっているのか不思議に思った方はいないだろうか?
そう、無理に「左手」で、と考えずに「右手」でつけた傷、と考えればすぐに疑問など解決する。
寝ている間に右手を無意識の内に服の下から入れて掻いた、それで出来た傷だ…と。
だが…断っておかなければならないのは、私の右手の爪は、深爪過ぎる程に短くしてある。
爪の先の白い部分が全くと言っていいほどに無いのだ。
このような右手で、いくら引っ掻いたとしても、それは単に擦っただけでしかなく、引っ掻き傷は…出来ない。
だから、私は左手…左手の爪は普通にしてある…左手に拘ったのだ。
(注:昔は左手の爪も右手同様に無茶な深爪状態だったが、両手がその状態だとジュースの蓋・プルタブもまともに開けられないので)

ありえない場所にありえない掻き傷…どういう意味なのだろうか。


今回はもう一本、話を書いてみよう。

『〜死に傷〜』

私には「死に傷」がある。
いや、正しくは”あった”といったほうが良いのか。
さて「死に傷」とは?とお思いの方もおられるだろう。
これは「死に至る傷」と思っていただければ良い…のだが、致命傷という物とも違う。
何と言えば良いか…私が思っている言葉で言うならば…時限爆弾とでも言えばいいのだろうか。

子供の頃の話だ。
知らないうちに、右肩に傷があった。
痛みも無い、痒いわけでもない。
気付いたのは、何気なく肩を触った時だった…と思う。
その傷は、2〜3cmの長さで3本か4本並んで、縦向きに付いていた。
最初、ミミズ腫れかと思った。
が、違う。
腫れではなく、まるで抉られたような傷…内側に凹んでいた。
皮膚の下に虫がいて、虫食いになって、その部分の皮膚が虫に喰われて出来た陥没に張り付いた…ような。
兎に角、その部分は抉れていたのだ、皮膚に傷一つも無いのに。

しばらくして…一年二年と過ぎたが、まだその傷はあった。
触れれば、その傷の部分が相変わらず凹んで抉れているのが解った。

気付いた事がある。

傷の位置が、動いている。

錯覚ではなく、確実に、元あった場所より上のほうに、位置が変わっていた。

コレが頭まで上ってきたら、僕は死ぬ
そう思った。
なんの確信も無い、ただの思いつき、妄想に過ぎない事なのだろうが、コレが頭まで上ってきたら、僕は死ぬと思った。
だから「死に傷」なのだ。

傷は時間と共に、本当に徐々にゆっくりとではあるが、上へ上へと移動していた。
数年前まで確認できた。
が、いつの間にか消えていた。
最後に確認したのは…確か首の付け根の辺りまで上って来ていた、と記憶している。
消えた。

私は、潜ったのだと思っている。
表面から、内側へと。
そして見えないながらも、今もゆっくりと上へ上へと…。
そんな気がしてならない。

私が、思っている「死に傷」到達場所…ここまで上ってきたら死ぬと思っている場所(高さ)は、大体、耳の辺り。
何の根拠も確信も無いのだが、兎に角そう思っている。
傷の移動速度から考えると、大体、そこに到達するのは25歳辺りから30歳の辺りだと思う。

今、これを書いている時点での私は、25歳。


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