あらすじ


クレア

 エステルランドとの国境付近。ブレダ王国との小競り合いの中、神聖騎士団員のクレアは、 ある戦闘に助っ人として入り敵将3名のうち、2名を見事に切り伏せる。最後の一名は、逃亡に成功する事は成功したのだが、 方向を間違え、エステルランド王国領内に更に深く入り込んでしまう。

レオン

 その噂は、行く当ても無くぶらぶらと旅を続けていたレオンの耳にも入っていた。 とある酒場にて、中年の男性ルシに半ば無理やり説得され、ブレダ王国の将を探す事となる。 レオンがなぜ、そこまでして追うのかとルシに聞けば、娘と別れた女房の仕送りの為だと言う。 楽しそうに家族の話をするルシを、レオンは懐かしい顔をして聞いていた。


クレア

 部下の兵士が言うには、最後に逃げた将はアクシスだと言う。なるほど、確かに≪雷撃≫をまともに食らった記憶がある。 ただ、非力なアクシスとは言え人質でもとられては面倒な事になる。 現在位置からアクシスが逃げた方向で、最も近い人が住んでいる所は、“オルデンガルトの塚”のすぐ側にある小規模な村だ。 部下数名と共に、クレアはその村へと馬を走らせた。

レオン

 幸運な事に、ルシと出会ったこの村に件の落ち武者が逃げ込んでいるらしい。村人達は、山狩りに精を出している。 が、どうしても見つからないらしい。問いただした所、一箇所を除き村の周辺は全て探ったと言う。 残りの一箇所は、歴代のハイデルランドの王が眠る“オルデンガルトの塚”だ。最近悪魔が住み着いたとの噂がある場所で、 誰一人として、悪魔の呪いを恐れて探しに行かなかったとか。また、神聖騎士団がこの村に訪れているので、 そちらに依頼しようかと考えているとも聞かされた。

出会い

 クレアもレオンと同様の情報を聞いていた。ただ、本人としては身分を明かしたくは無かったらしい。 助っ人として紹介されたレオンと幾つか言葉を交わすが、方針の違いで決裂。それぞれが、 別々に“オルデンガルドの塚”に足を踏み入れる。

“塚”入り口

 先に塚に到着したレオンは昼だと言うのに霧に包まれていた。そして、1つの女性のミイラを発見する。 魔方陣の上に、まるで寝ているかのように座り込み絶命しているように見えた。なぜこんな所にという疑問が生まれたが、 その疑問は新たな現象に打ち消されてしまった。

 −道が無い−

 今まで歩いてきた道がどこにも無い。それどころか、今まで一緒に居たはずのルシも居なかった。 ここに居ても仕方が無い、と考えたレオンはその場を去ったが、一向に景色は変わらない。 深く、濃く立ちこめた霧の中、自分がどの方向に進んでいるのかでさえ解らない。 おそらく、悪魔の呪いの一種なのだろう。長い時を生きてきたフィニスであるレオンには、 初めての体験とは言え、まだまだ心に余裕があった。 …この時は…

“塚”入り口2

 遅れてやってきたクレアもまた、深い霧の中にいた。ふと現れた人影に駆け寄ったが、 それは先に来ているはずのレオンではなく、ただのミイラだった。魔方陣の上に座っているミイラ。 だが、クレアはそのミイラに違和感があった。ミイラの着ている服が新しすぎる。そしてその服は、 先日自分に≪雷撃≫を放ったアクシスの物と全く同じだ。不吉な予感を感じたクレアは、 魔方陣を消し、ミイラの首を断ち切った。行動自体に特に理由は無い。ただ、そうした方が良いような気がしただけだ。

 帰ろうにも、道のなくなってしまっている霧の中では、前に進むほか無かった。 霧中でさ迷っている時に、クレアは意外な人物に出会う。アクシスだ。では、先ほどのミイラは勘違いだったのだろうか。 それとなく、アクシスに問い掛けてみる。その問いに対し、アクシスは「そのミイラはどうなったか」を聞いた。 そして、首を断ち切られたことを聞いたとき、アクシスはクレアに絶望の涙を流しながら、その場から消滅した。 後には、ただ一本の巨大な剣が残されていた

因縁

 霧の中をさまようレオンに、懐かしい人物が現れた。ルシだ。が、様子がおかしい。 駆けよりルシの見つめる方角を見ると、無残な死体が転がっていた。体を縦に木の杭で貫かれた死体。 まるで、串で貫いた焼き魚を思い出すような姿の死体がそこにはあった。全て見覚えのある顔だ。 今まで自分が出会ってきた同志や友人。仇敵や… 200年前に死亡した妻。呆然と立ち尽くすレオン。 そのレオンに向かって突如として動き出す死体。

 −痛い。お前のせいだ−

 突然の出来事に混乱を起こしたレオンは、傍らで腰を抜かしているルシを掴み逃げ出した。 亡霊を振り払う為に半泣きになりながら。全速力で走りつづけた。亡霊の姿が見えなくなり一息ついたレオンは、 ルシの異変に気が付く。服の上からでも一目でわかった。ルシの体の中を何かが蠢いているのだ。 慌ててルシの服をはいだレオンが見た物は… 蜘蛛の脚だった。体から突き破られた蜘蛛の脚。 それだけではない。腕を、顔を、腹部を、耳ほどの大きさの何かが動き回っている。1つや2つではない。 その中の1つがルシの目から顔をのぞかせたとき、レオンはルシに止めを刺した。


再会

 アクシスの持っていた剣を拾い、更に奥へ進むクレアはレオンと再会する。 が、二人が顔をそろえたところで現状が変わるわけではない。依然として霧は濃いままだ。

 帰りたい。

 クレアがそう強く念じた時、アクシスの所持していた剣が震え始めた。 試しに素振りをしてみると、空間に亀裂が入った。助かるかもしれないと、 わらにもすがる思いで強く剣を振るクレア。突如として霧は晴れ、夜のように暗い世界が広がった。 遠くには城と、町の明かりが見える。すぐ側には1人のウルフェンがいた。

「客とは珍しい。俺? 俺は見張りだよ。名前は… そうだな。ルシとでも名乗っておこうか」

ボリヴァドゥス

 ルシの案内に従い、町へと行く二人。オークやウルフェンが普通に生活している不思議な町だ。 人間の姿はあまり見られない。ルシが言うには、元の世界に戻るのなら主に頼んでみればいいと言う。 二人はルシの提案を受け入れ主の住まう城へと向かった。

 城の主… ボリヴァドゥスと出合ったレオンは悪い虫がうずきだした。強い者と戦ってみたい。 ましてや目の前に居る者は伝説の魔神その者だ。ボリヴァドゥスの提案… 帰しても良いが眷属となれ  …を断り、最強の魔神に飛び掛るレオン。が、あっさりと技を反され、クレア共々落とし穴へと落とされてしまう。

[宴]

 二人が落ちた先は何かの闘技場のような場所だった。そこに待ち構えていたのはルシと、オークが数十名。

「全員を打ち倒したのであれば、その強さに免じて外へ帰してやろう」

 その声を合図に、オークとルシが二人に襲い掛かってきた。オークの相手はさほど大した事は無い。 フィニスであるレオンに、彼らの体から発する毒は意味をなさない。問題なのはルシだ。こちらの攻撃を見事に受け止めてくれる上に、 一撃がかなり重い。さすがウルフェン、と何処か戦いを楽しむレオン。が、クレアはそうも言ってられない。

 オークの攻撃自体は痛くは無い。クレアの盾の前にその殆どは無効化されている。 しかし、その返り血は普通の人間である彼女にとって猛毒だった。着実に蝕まれていく体。 心・技・体。そのどれもがオークよりも勝っているのに、豚人特有の毒によってクレアは地面に倒れこんだ。

「今ここで負けを認めれば、お前達の命と引き換えに地上に戻してやるぶぅ。もちろん、眷属にはなってもらうぶぅ」

 突然の降伏勧告。ルシ1人倒せないレオンには、後に控えているハイ・オークとの戦いに勝つ見込みは無かったし、 自分の欲求を満たす為の我侭で、人を死なせる訳には行かなかった。こうして、 レオン、クレア両名はボリヴァドゥスの力の前に屈したのである。


クレア

 目を覚ましたクレアは、自分がなぜベッドの上で寝かされているのかが理解できなかった。 傷の手当てもされている。一体誰が自分を手当てしてくれたのだろうか? ふと横を見ると、 豚の顔をした人間がちょうど部屋に入ってきたところだった。

「おぉ、目を覚ましたかぶぅ。俺はポーク。お前を倒した男だぶぅ。という訳で、 今日からお前は俺の嫁さんだぶぅ」

 いきなり訳のわからないことを喋る。誰がオークなんぞと結婚する物か。 その場でポークの話に合わせ様ともせず、最低限の装備だけ引っつかんでその場から駆け出すクレア。 あわてて自分の嫁を追いかけるポーク。が、その途中ボリヴァドゥス様が呼んでいるといわれ、 その場は諦め引き返すことにした。

 ポークが諦めた事を確認したクレアは、そのまま地上へと戻り、フェルゲンへと足を向けたのだった。

レオン

 暗がりの中、ボリヴァドゥスの前に、不本意ながらも跪いているレオン。そのレオンに、ボリヴァドゥスは一振りの巨大な剣を渡す。 尊厳無き死。これを下僕の証として、レオンに渡したのだ。 …魔印として…