OM AUTOCARRETTA mod.35 1/35 
とてもピッコロな奴。
 CRI..EL と書いて何故かクリルーと読むらしいイタリアのレジンメーカーのキット。頭がイッチャッてるクリルーらしい謎だらけのイタリア軍アイテムです。スペック等も一切キットには書いてありません。最初は「ああ、クリルーの考えたオリジナルメカだったらどうしよう・・・。」と思いました。(うそ)

 画像を見た感じでは大きい車輌と思うかも知れません。しかし実際は非常に小さくて、軽トラック程度の大きさしかありません。頭にちょこんと付いた一個だけのヘッドライトがチープで素敵。どこか「魚市場の運搬車」「炭坑の軽便鉄道の牽引車」的スタイルに見えます。貧乏イタリア軍の事、それら別の用途の運搬車を「軍でも使用した」程度の車両だろうと思っていましたが・・・
 ・・・ところがギッチョン。
 足回りのパーツを見ていると決して安物の運搬車ではなく軍用車輌っぽい豪華装備である事に気付きました。なんと4輪独立懸架、4輪駆動、4輪操舵、なのです。前後の足回りは同じ物を使用しています。ユニバーサルジョイントの角度的限界や大きな車輪を納めるホイールハウスのスペース的問題をクリアするため、操舵角が小さくて済む4輪操舵になっているのでしょう。ステアリングロッドは左右の車輪でリンクしているのではなく、前後の車輪でリンクしているのが面白いです。(説明図の車体下面で御確認を)

 説明図をスキャンしました。1:車体下面 2:車体上部 3:全体像
 なんと申しましょうか・・・
 原型は基本形はキッチリ造ってあって、変に非対称という事はありません。組み上がれば見れる物に成るでしょう。ただ、仕上げがラフで、ディテール部品を付けた所が接着剤でテカテカで、見栄えを悪くしています。実質的には問題が無いとは思いますが、サーフェイサーを吹くまで信用は出来ない感じ。見栄えで言えば少し透明感のあるベージュのレジンもモールドをダルく見せています。
 タイヤは変形していて(?)、綺麗に丸くないのが残念。ホイールは接着剤を塗りたくったメロメロの肌。ただ、実車がプレスでなくスチールキャストのホイールなら質感は見事といえます。
 
いきなり実車解説。
 あらら、ここまで書いてヴァンダービーンの「世界の軍用車両」を見てみたら、AUTOCARRETTA mod.32の解説がありました。勝手に引用しちゃいます。

 ・・・主として山岳地帯で運転するのを目的とした4X4小型多目的トラックとして1932年に初めて登場した(Tipo32)。プロトタイプはカッパ技師の設計でアンサルドが造った。空冷ディゼル・エンジンが極めて信頼性が高い事が証明され、極端な温度でのハードな仕事にも耐えた。この車輌はブレシアで、のちはエストリアでも造られた。捕獲したこの見本を使っていたイギリスの軍人はこの車輌を高く評価していて・・・・完全審査するためイギリスに送られた。・・・

 なるほど。足回りが戦後米軍が使用した「ミュール」に似ているので、山岳地帯用というのに妙に納得。ミュールってラバの事だから・・・。

 この本では35型には触れられていませんが、バリエーションについて書いてあります。この本に載っている32の写真はこのキットと特に変わった様子はないのでマイナーな違いなのでしょう。空気タイヤ型が36M、改良型が37、運転手の他に10座席の36p、同じく7座席で、高斜機銃付きの36DM、があったそうです。
総論
 最近、プラスモデルやモデル・ヴィクトリアといった高品質で安価なキットを続けて見たので、正直、クリルー・スタンダードは出来も値段も「古い」感じはしました。しかし組み辛いキットではなさそうだし、ペダル類まで別部品で用意してある熱意あるキットなので、取りあえずは「買い」と評価します。とにかくアイテムが面白いですから。・・・完成して展示したら面白いだろうな・・・。

 キットはオールレジンで、ライトはムク、透明パーツはありません。私は、なでぃりんさん(のHP連合軍車両研究)が海外通販する際に便乗させて貰いました。クリルー製品のリストと完成見本はここにあります。何故か品番R055はOM 25 Armoured carと紹介されていますが・・・・。 この完成品を見ると、素朴で愛嬌があって微笑ましいです。買う動機はそれだけでも良いんじゃないかしら(笑)

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