西ドイツ小型軍用乗用車 ムンガ 1/35 
 まず・・・
 当コーナーでは、私自身が「期待と不安を持って購入したキット」及び「買ってみたら紹介したくなる程気に入ったキット」を紹介する事にしています。そのキットの存在自体を知らない方には存在を知って欲しいし、購入を躊躇している方には(多くの場合)良いキットだから安心して欲しいと思っている物ばかりです。入手が困難な物ではあっても入手の可能性がある物に限定して紹介する事にしています。
 例外中の例外です。
 しかし、今回のキットは、入手不可能と言える数量しか生産されていません。恐らく5〜10個程の生産だと思われます。数年前の地元の合同展示会で1回だけ売られた、メーカー名すら無い、そんな「古き良きガレージキット」の味があるキットなのです。ただし、この作者は非常に本気でした。出来は素晴らしく甘えの無い製品です。現在でも十分に通用する出来なのですが、作者は一部の出来に不満を感じ、その完璧主義ゆえに再販を拒んでいる・・・そんなキットです。
 単なる「お宝」自慢は本意じゃありません。紹介しておきたい気持ちをご理解ください。
 一発抜きのボディ
 職場の不要品を流用したらしい箱を開けると、神経質さが伺える丁重な梱包の中から、一発抜きのボディが出てきました。戦後版キューベルワーゲンは大きさも、リブだらけのボディもイメージが似ています。基本形状は簡単な部類に入るのかも知れませんが、全ての面に細かいモールドがあり原型制作の苦労が伺えます。インジェクションなら省略されるか複雑な部品分割になるであろう所を、一発で抜きながらも再現出来るのはレジンキットの醍醐味。ユーザーとしては嬉しい部分です。

 技術的には。
 当時の制作者は、まだ真空脱泡器を持っていませんでした。しかし、よく模型誌で紹介されるようなゲートを作って「下からレジンを流し込む」方法は取っていません。湯口は裏面、前後のデフが付く部分に2ヶ所あるのみで、真空脱泡用の型と同様の方法になっています。簡単ながらシャーシまで一体です。これでは恐らく、量産効率は非常に悪かった筈です。
 全部品
 こうして写真を撮ると少なく見えるのですが、非常に手堅く上手い分割なので不足はありません。右上には各種金属線、透明プラ板、1/43カーモデル用のライトパーツがあるのですが見えませんね。ライトガードは、洋白の帯金が入っていて自分で曲げるようになっていますが、単純な形状なので良い配慮だと思います。

 誉めてばかりも何なので他に気付いた点を言いますと、タミヤの古いキューベルのを流用したというタイヤは、カチカチっとしたボディとは異なってダルいモールドだし、シートや折り畳んだソフトトップといった「布物」もキレがありません。逆に言うと、金属部分の無機的な表現は、機械でモールドしたかの様な精巧なモールドで圧倒的なキレを見せるので、対比すると気になるという事か。

 もう一つ、作者が気に入らない部分について書くと、「ボンネット部分が左右非対称になっちゃった。」という事なのですが、私には言われて見ても気付かない程の僅かな差でした。
 このキットの制作者は、これ以前に現用イギリス戦車等に使う箱を何種か出していました。その後、1/700の飛行船や、巨大列車砲「ドーラ」なんかも出しましたがいずれも短命に終わったようです。BANGモデルの名で出している1/700の客船シリーズは現在も続き、ピットロードの三段空母の原型も担当、ショップと組んだクレビス・ブランドでは陸上自衛隊物をリリースし活躍しています。

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