全姉連総研 「秋桜の空に」レビュー
総評
“ヒロイン的地位にある「すずねえ」がダダ甘お姉ちゃん”と口々に噂され、そんなに評判のお姉ちゃんなら…と始めたこのゲーム。
折しもMarronの第2作「お姉ちゃんの3乗〜おねえちゃんきゅーぶ〜」が発売されたのでそちらを先に進めたところ、竹井10日氏のぶっ飛んだ姉萌えテキストに撃沈。
満を持してのプレイとなりました。(普通は秋桜→おねきゅーの順なのですが)
結果、やはりダダ甘お姉ちゃんの原型をこの上なく感じ、大いに楽しんじゃいました。
主人公にべたべたな甘やかしお姉ちゃんであるすずねえの、際だった姉っぷり。
おねきゅーを体験した後という特殊事情下では、さすがにそのインパクトの面では薄れるものの、この甘さは大半の人間の味覚の限界に挑戦する代物。
このすずねえの衝撃は、2001年の発売当時はものすごいものがあったと想像します。
すずねえのダダ甘加減ばかりが目立つだけでなく、登場するキャラクター全員の個性も光っていて、大変居心地の良い世界が広がっています。
荒唐無稽に陥らず、スレたような表現も目立たないので、まとまりの良い印象です。
笑いも涙もバランスとれています。
よく、Tacticsの「ONE」に比較される理由も分かりました。もし「ONE」が分かるのであれば、それと似たものと考えてよいでしょう。
難点を挙げれば、綺麗なCGを求めたり、H要素を求めたりする場合は厳しいです。
フルボイスでもないので、声必須と考えている方は残念ながら。
私はボイスなどはあればあったのオマケ程度に考えなので、この点はマイナスになりませんが。
(ただし、ドラマCDがいくつも発売されています。)
また、それぞれのシナリオの落としどころがワンパターンに陥っているので、この辺はちょっっっと残念カナ。
難点もあるものの、このゲームの主題がテキストを楽しむことにあると考えれば、私はかなり良い評価をあげたいと思います。
キャラクター評
・桜橋涼香(すずねえ)
今作のメインであり、ヒロインであり、ダダ甘お姉ちゃん。
姉ジャンキーの総裁にとっては、正直な所すずねえの存在がこのゲームの8割以上を占めています。
その甘やかしぶりは、元祖ダダ甘お姉ちゃんに恥じない凄さ。
ギャルゲーにおいて、甘やかし要素を極端にしていったらどうなるのだろうという良い見本がここにあります。
添い寝や一緒のお風呂(はゲーム内では出てこなかったが)は当然、母親が幼稚園の子どもにするような身の回りの世話は全てしてしまうような甘やかしレベル。
それに反発もせず、何となく素直に応じてしまう主人公に、姉萌えのプレイヤーは惜しみない拍手を送りたい!
あからさまな焼き餅焼きだったり、極度のあがり症だったり、ケーキに目がなかったりするところも非常に可愛いですね。
甘やかし系のお姉ちゃんとしては、まっっったく文句の付けようがありません。
姉萌えの弟は、何をおいてもすずねえを体験するべし。さもなくば、お姉ちゃんぱんちっっっっっ!
・楠若菜(カナ坊)
同級生のちんまい女の子。
高校生とは思えないような可愛い容姿、仕草や言動は、すずねえの姉っぷりと相殺してバランスを取っている感じさえします。
決して妹派向けというわけではなく、たとえ姉萌えなプレイヤーであっても、カナ坊の魅力には姉萌えも一歩後退するかも。
秋桜の世界で、心休まる存在になると思います。
病弱のため学校を休みがちという設定ですが、暗い印象をもたせることもなく、シナリオにも上手く活かされいます。
カナ坊シナリオだけではないですが、普通はマイナス要素に働くことでも優しい要素に転換されているのが、竹井氏の描く世界の特徴ですね。
・尼子崎初子
典型的トラブルメーカー。ノリの良いボケと突っ込みで、ドタバタの源泉です。
初子がこのゲームの動の部分をほとんど受け持っていると言っても良いでしょう。
ただの馬鹿騒ぎ好きではなく、ちゃんと締めるべき所は締めている点が、シナリオを破綻させずにまとめる結果になっています。
そういう意味で、ぶっ飛び系に分類されることもなく、ちゃんとした一つのシナリオが完成しています。
また、カナ坊・忠介・主人公との関係を大事にしているところは、初子の優しさの一面で見逃せない所。
それにしても初子よ、その巨乳と巫女の組み合わせはどうかと…(笑)
・小泉ひより
教育実習の先生。とにかくドジで、ハラハラさせられて、どこか天然な先生。
見ていてイライラするようなタイプではないので、好感度は良いですね。
あまり先生っぽくなく、むしろ生徒にとけ込んでいるところが可愛かったり。
最後まで通してプレイした後に、先生の感情を推し量ってシナリオを反芻すると、違った味わいが出てくるはずです。
また、ひよ先生のシナリオに付随して登場する子鹿ちゃんも良い味出してます。
・佐久間晴姫
水泳部の一員。女子水泳部の臨時コーチになった主人公に、なぜか極端に突っかかってくる。
その嫌い方は、主人公の奇想天外な言動と相まって、エスカレート。
序盤はひたすら追いかけ回され、蹴られまくります。
そんなツンツンした女の子のお楽しみと言えば、和解できた後のデレデレぶりであります!
これぞツンデレ。
我慢して終盤を待て!
スクール水着好きとメイド服好きも刮目せよ。
最後に
分かりやすく親しみやすいキャラクター群と、また読み返したくなる世界観で、満足した一本でした。
繰り返しますが、綺麗なCGや、エロ目的ではお勧めしません。家庭用にも移植できそうなくらいのゲームですから。
また、実はそんなに泣きシナリオではないので、感動系を求める人はちょっっとだけその辺を念頭に。
結局、全姉連的に「秋桜」は、すずねえのダダ甘お姉ちゃんを堪能するために存在するのです!これだけは断言しておきます。
姉ゲーとしては上級の部類に入るのですが、一般受けもするゲームです。
姉属性のリトマス試験紙にもなるでしょう。このゲームで姉に傾いた人も多いはずです。
姉萌え界に多大な貢献をしたであろう「秋桜」は、全姉連としても胸をはってお勧めできる姉ゲーでした。
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