宮沢賢治幻燈館
「銀河鉄道の夜」 2/81

ジョバンニはもうどぎまぎしてまっ赤になってしまひました。先生がまた云ひました。
「大きな望遠鏡で銀河をよっく調べると銀河は大体何でせう。」

 やっぱり星だとジョバンニは思ひましたがこんどもすぐに答へることができませんでした。
 先生はしばらく困ったやうすでしたが、眼をカムパネルラの方へ向けて、
「ではカムパネルラさん。」と名指しました。するとあんなに元気に手をあげたカムパネルラが、やはりもぢもぢ立ち上ったまゝやはり答へができませんでした。
 先生は意外なやうにしばらくじっとカムパネルラを見てゐましたが、急いで「では、よし。」と云ひながら、自分で星図を指しました。
「このぼんやりと白い銀河を大きないゝ望遠鏡で見ますと、もうたくさんの小さな星に見えるのです。ジョバンニさんさうでせう。」
 ジョバンニはまっ赤になってうなづきました。けれどもいつかジョバンニの眼のなかには涙がいっぱいになりました。さうだ僕は知ってゐたのだ。勿論カムパネルラも知ってゐる。それはいつかカムパネルラのお父さんの博士のうちでカムパネルラといっしょに読んだ雑誌のなかにあったのだ。

このページの先頭のように、改行した文字(カッコをのぞく)が1字下がりになっていない文章は、原文では前の段落の続きです。(ブラウザの表示上の都合で、このように組み替えました)