宮沢賢治幻燈館
「銀河鉄道の夜」 28/81

 二人は、停車場の前の、水晶細工のやうに見える銀杏(いてふ)の木に囲まれた、小さな広場に出ました。そこから幅の広いみちが、まっすぐに銀河の青光の中へ通ってゐました。
 さきに降りた人たちは、もうどこへ行ったか一人も見えませんでした。二人がその白い道を、肩をならべて行きますと、二人の影は、ちゃうど四方に窓のある室(へや)の中の、二本の柱の影のやうに、また二つの車輪の輻(や)のやうに幾本も幾本も四方へ出るのでした。そして間もなく、あの汽車から見えたきれいな河原に来ました。
 カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、掌(てのひら)にひろげ、指できしきしさせながら、夢のやうに云ってゐるのでした。
「この砂はみんな水晶だ。中で小さな火が燃えてゐる。」
「さうだ。」どこでぼくは、そんなこと習ったらうと思ひながら、ジョバンニもぼんやり答へてゐました。
 河原の礫(こいし)は、みんなすきとほって、たしかに水晶や黄玉や、またくしゃくしゃの皺曲(しうきょく)をあらはしたのや、また稜(かど)から霧のやうな青白い光を出す鋼玉やらでした。