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「ケンタウル露をふらせ。」いきなりいままで睡(ねむ)ってゐたジョバンニのとなりの男の子が向ふの窓を見ながら叫んでゐました。
あゝそこにはクリスマストリイのやうにまっ青な唐檜(たうひ)かもみの木がたってその中にはたくさんのたくさんの豆電燈がまるで千の螢でも集ったやうについてゐました。
「あゝ、さうだ、今夜ケンタウル祭だねえ。」
「あゝ、こゝはケンタウルの村だよ。」カムパネルラがすぐ云ひました。
(原稿ぬけ)
「ボール投げなら僕決してはづさない。」
男の子が大威張りで云ひました。
「もうぢきサウザンクロスです。おりる支度をして下さい。」青年がみんなに云ひました。
「僕も少し汽車へ乗ってるんだよ。」男の子が云ひました。カムパネルラのとなりの女の子はそはそは立って支度をはじめましたけれどもやっぱりジョバンニたちとわかれたくないやうなやうすでした。
「こゝでおりなけぁいけないのです。」青年はきちっと口を結んで男の子を見おろしながら云ひました。
「厭(いや)だい。僕もう少し汽車へ乗ってから行くんだい。」
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