「ごらん、蒼孔雀(あをくじゃく)を。」さっきの右はじの子供が私と行きすぎるときしづかに斯う云ひました。まことに空のインドラの網のむかふ、数しらず鳴りわたる天鼓のかなたに空一ぱいの不思議な大きな青い孔雀が宝石製の尾ばねをひろげかすかにクウクウ鳴きました。その孔雀はたしかに空には居りました。けれども少しも見えなかったのです。たしかに鳴いて居りました。けれども少しも聞えなかったのです。 そして私は本当にもうその三人の天の子供らを見ませんでした。 却(かへ)って私は草穂(くさぼ)と風の中に白く倒れてゐる私のかたちをぼんやり思ひ出しました。