聊斎志異より 「香玉」 1/8
蒲 松 齢
(ほ しょうれい)

聊斎志異

(りょうさいしい)
より
 香 玉
  (こうぎょく)

山東半島の南の付け根にある労山は、道教の寺院「道観」の多い所でした。
そこの下清宮(かせいきゅう)という名の道観には、3メートルを越える大きな牡丹や、巨大な耐冬の木があって、花時は目を見張るばかりの美観でした。
 
黄(こう)という生員がその境内を書斎として借り、勉強しておりました。
ある日、黄が書物から目を上げると、牡丹の花の間を白い着物の女が歩いてゆくのが見えました。
「道観に女がいるとは、どういうことだ」
不思議に思った黄が外に走り出たときには、すでにあたりに人影はなく、一面の牡丹が風にゆれているばかりです。
それからは、たびたび女の姿を見かけるようになりました。
ある日、植え込みの中に隠れて待っていると、今度は赤い着物の女と連れだって来るのが見えました。
ふたりとも、これまで見たこともない美人です。