Web 絵草紙
「東人、河原の院に宿りて妻を取られたる語」 1/3
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 今昔物語より
東人、川原の院に宿りて
    妻を取られたる語
(あづまびと、かはらのゐんに やどりて
       めを とられたること)

今は昔、殿上人となる五位の爵位を買おうと、東の国から京にのぼった者がありました。
この機会に都を見たいと、その妻も一緒にのぼりましたが、着いてみると、手配してあったはずの宿舎が何かの手違いで借りることができず、行く所も無く、困ってしまいました。
当時空き家となっていた河原の院という大きな屋敷がありましたが、その管理を任されていた者に、つてを頼って申し込んでもらったところ、貸してもらえることになりました。
人目に付かない奥の仮部屋に幕をめぐらして主人たちは上がり、使用人は土間にいて食事など作り、何日か滞在していました。

すると、ある日の夕方、主人の座っていた後の扉が突然開きました。
中に屋敷の関係者でもいて、扉を開けたのだろうと思っているうちに、何ともわからない物の手がさっと伸びて、そばの妻をつかむと、扉の中に引き入れようとします。