Web 絵草紙
「東人、河原の院に宿りて妻を取られたる語」 3/3

困った夫が近くの家に駆け込み、状況を説明して助けを求めると、大勢の人が出て周囲を調べましたが、やはり開きそうな所はありません。
そのうちに暗くなり、夜になりましたから、斧を持ってきて扉を切り破りました。
火をともしてはいって見ると、どんなふうにして殺したのか、妻には傷も無く、そこにあった衣装掛けの竿に、くたくたとして掛けられているのでした。
鬼が吸い殺したのではないかと、人々は口々に言い合ったものでしたが、どうすることもできずに終わったのでした。
妻が死んだので、夫も恐ろしくてその屋敷を逃げ出しました。
 
こんな不思議なこともあるものなので、不案内な古い屋敷などには泊まるべきではないと、語り伝えたということです。