菩薩銃・マキシマム フォースチルドレン

 

「うふふ」

 いたいけな子羊に愛の手を。哀れな老人に孫の手を。
 そして終末は訪れる。
 見届けるのだ。自らが選ぶ未来を。
 人という災厄がもたらす魔を。
 称えよ、畏れよ。畏怖せよ。その名も高貴な『菩薩眼』。


 美里葵。世界でも最強の『菩薩眼』。それが彼女である。
 下界の一般ピーポーの人々の考えなど、彼女にはまったく関係ないことである。
 何故なら彼女は『菩薩眼』。
 全てを超越したところに彼女はいるのだから。

「困ったわね…」
 泣く子も(怯えて)黙る菩薩眼、天下無敵の美里葵はいつものポーズで立ち止まる。
「なんか、奇妙な事件が起こってるみたいだし…皐哉も無事だといいのだけれど」

「どうしたんだ、美里」
 190センチの巨体が近づいてくる。――何を食べたらここまで育つのかしら。
そんなことを彼女が考えていようとは、思うべくもない。
「醍醐くん…それにマリィも…」
「ドウシタノ? 葵オネェチャン」
「皐哉を見なかった? マリィ」
「皐哉? 知ラナイ」
「そう…」
 相変わらず、素直で可愛い子ね。さすが私が育てただけあるわ。
「二人とも、どうしたの、こんなところで」
「ああ、京一を桜ヶ丘に運んできた帰りだ。そこでマリィと会ってな」
「京一くんに、何かあったの?!」
「学校で血まみれになっているのを見つけたんだ。命に別状はないらしいが」
「無事なのね」
 ――虫ケラって、意外としぶといのね。(以上、菩薩眼本音モード)
「ソレデ、醍醐オニィチャント、マリィの新シイ鈴買イニ行クノ!」

 ――鈴を、買いに?。

 疑問の微笑がひらめいた。
「…ということは、骨董品店まで…」
 若い店主の顔が脳裏をよぎる。

 菩薩眼ターゲット・滅殺リストbR・如月翡翠。(特A級)

「ああ。それで一緒に行ってやろうと思ってな。あそこは一人では遠い距離だし。
まあ、遅くはならんと思うが」
「そう。醍醐くんがついていてくれるなら、安心だわ」
 
 仲がいいのよね。あの守銭奴と、皐哉は。
 何があったのかは知らないけれど、宿星がどうとかほざいているわね。
 あいにく、私も『黄龍』と並ぶ宿星を持つ、『菩薩眼』なの。
 ああ、腹立たしいわ。それに何なの、あのウエスト。
 とりあえず、目の錯覚とは思えないあたりが腹立たしいの。
 そんな世迷い事は、私を越えてから言って頂戴。

「なんか、事件でもあったのか? いろいろ騒がしくなっているが…」
「さあ…私には…」

 そういえば、彼も同じ『四神』だったわね。
 マリィは…かわいいからいいけれど。
 ああ、腹のたつ。

 それに貴方、私のいない間に、皐哉と二人で(←京一アウトオブ眼中)、一緒に
レスリング部の部室に行ったらしいわね。抜け駆けは良くなくてよ。
 
「どうした、美里。顔色が良くないぞ」
「大丈夫。ちょっと…考え事してただけだから…」
 理由・行動力の使いすぎ。
「そうなのか?」
 ああもう。私を一人にしておいて。
 悲劇のヒロインは、一人、孤独に運命に抗うものなのに。
「とりあえず皐哉を探さないと。桜ヶ丘に行ったと聞いたのだけれど、知らない?」
「いや、俺は見なかったが…」
「そう…やっぱり…」
 使えないのよね…これだから。
 ああもう。運命の神様は、どうして私の邪魔をするのかしら。
「携帯にかけてみたらどうだ? 番号なら…」

 そういうのを、御節介というのよ、醍醐くん。
 皐哉の電話番号くらい、とっくに調査済みよ。(当然黄龍未許可)

 ああもう。見ていると腹立たしいわ。
 ――さようなら。


 炎上する天。崩壊する地。
 すべてが、光に飲みこまれた。


 マリィにほとんど被害がいかなかったのは、ほとんど匠の技といっていいだろう。
 しかし、隣の醍醐は。
「大丈夫?! 醍醐オニィチャン!」
 精一杯揺り起こすが、反応がない。
 わけがわからず、マリィは周囲を見まわすが、すでに諸悪の根源の姿はなかった。
「葵…オネェチャン?」
 まわりでは、さらに騒動が大きくなっている。
 今日は、新宿の厄日なのかもしれない。


 彼女の笑顔が輝くとき。それは絶望の瞬間。
 そしてこれからも。彼女の笑顔は、人を恐怖に落とし入れるだろう。
 哀れな子供達の悲劇を知ることもなく、血に汚されることもなく。
 あまりに美しい声をもって、絶望をふりまくのだ。


『うふふ』

			

 


 

久々の菩薩銃でした。
成仏してくれ醍醐。お前に罪はない。うん。
次の犠牲者は、『身内本命』第五弾。誰かは秘密。
でも俺のことだから予定は未定ってことで。けけけ。

 

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