戻る 生存権裁判とは 2007年 生存権裁判パンフレットから
すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する・・・日本国憲法25条 人間らしく希望をもって生きたい CONTENTS ●生存権裁判に立ちあがった人たち ●生活保護基準の引き上げは国民全体に大きなかかわりが ●ナショナル・ミニマムの確立めざし、大きな運動広げよう 生存権裁判を支援する全国連絡会 |
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私たちは、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法25条)を保障されています。また、誰もが勤労する権利をもち、賃金などの労働条件については、「人たるに値する生活を営むための必要を充たすべき」(労働基準法第1条)と定められています。 ワーキング・プア急増中 ところがここ数年、生活に困窮する人々は、むしろ増えています。1日8時間以上働いても低収入という人が増えています。2006年労働力調査(総務省)によれば、自衛業者を含む就業者6369万人のうち、年収200万円未満の人は2196万人で35%に達しています。2002年と比べると、年収200万円未満の人は80万人も増えているのです。 問題は富の再配分のしくみ どうして貧困と格差が広がるのでしょうか。景気回復のもとで、莫大な富が生み出され、それでも貧困が拡大するのは、富の配分の仕方がゆがんでいるからです。 賃金は下げられ、税金や社会保険料の負担は増えているのに、給付は下げられています。今の政府は、規制緩和・構造改革路線で法律を変え、「勝ち組」に有利な条件を整備してきました。貧困を「自己責任」の問題にすりかえ、格差の拡大を、「競争社会における個人の努力の結果としてきたのです。 生活保護基準の切り下げ そして今、生活保護基準を下回る低賃金労働者や低年金生活者がいることを理由に、生活保護を改悪しようとしています。「最低限度の生活」の公的な基準である生活保護規準が切り下げられると、「貧困」は隠ぺいされ、今でも低すぎる最低賃金や年金、税金の課税基準などが、歯止めを失って、もっと引き下げられることになりかねません。 生存権はみんなの課題 つまり生活保護の改悪は、保護を受けている人だけの問題ではなく、すべての労働者・国民の生活の最低保障=ナショナルミニマムにかかわる問題なのです。 そこで、生存権を守り、発展させるために、「生存権裁判を支援する全国連絡会」が発足しました。裁判に立ち上がった原告の人たちを、みんなで支援し、制度改悪の阻止に向けた取り組みを行います。
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国は、生活保護予算を減らすために、「適正化」(しめつけ)と生活保護基準の引き下げを行なっています。今後さらに生活保護基準を引き下げ、「働ける人」は期限付き保護、高齢者を生活保護制度から排除(分離)するなど、抜本的な「改悪」を実施しようとしています。 戦後最悪! 生活保護基準の引き下げ 高齢者に「特別に需要がある」と認められていた老齢加算が、2006年度に廃止されました。そのことで、毎月の収入の2割近くが減り、人間らしい暮らしができなくなっています。 16歳~18歳の子どもを持つ家庭の母子加算は2007年度に廃止されました。15歳以下の子どもがいる場合の母子加算は、2007年度から3年間かけて廃止されようとしています。
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生存権裁判を勝利させましょう! いま、貧困と格差が広がり、生活保護を必要とする人が増えています。国がすべきことは、「適正化」を中止して、誰もが安心して保護が受けられるよう生活保護基準の引き下げをやめ元に戻すことです。 こうしたとき、京都を皮切りに、秋田・広島・新潟・福岡・東京・青森・兵庫などで、老齢加算と母子加算の削減・廃止の取り消しを求めて、約百人の生活保護を受けている人たちが裁判を提訴しました。人間らしく生きる権利、生存権を守るたたかいに立ちあがっています。 人間らしいくらしと 生きる希望をとりもどそう これらの人たちは、保護費を減額されたために、食事を3回から2回にしたり、近所のお葬式などにも出られなくなっています。「これでは生きていけない」というところまで追い込まれています。この裁判は、老齢加算や母子加算などの生活保護基準が引き下げられたことに反対し、人間らしい暮らしと生きる希望を取り戻す裁判です。
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老齢加算廃止でこんなに下げられた保護費 東京23区単身高齢者の場合 2003年度 93,850円 2006年度 75,770円 (家賃や医療費などは別に支給されます)
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これでは生活できない! 老齢加算・母子加算廃止と減額 |
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●母子加算 「母子については、配偶者が欠けた状態にある者が児童を養育しなければならないことに対応して、通常以上の労働に伴う増加エネルギーの補填、社会参加に伴う被服費、片親がいないことにより精神的負担をもつ児童の健全な育成を図るための費用が余分に必要となる。」 (昭和55年12月中央社会保障審議会生活保護専門分科会中間的とりまとめ) |
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憲法と生活保護法では、生活保護を受けることは恥ずかしいことではなく、国民の権利としています。しかし、国はすすんで生活保護の中身をよくしたり、安心して受けられるようなことはしません。 今日のような制度となるまでには、たくさんの犠牲と長年の運動がありました
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カット 健康で文化的な生活と言えるの | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「朝日訴訟」第一審判決(東京地裁) 1960年10月19日判決より 「健康で文化的な水準」の算定方法について (1)その水準は各国の社会的文化的発達程度、国民経済力、国民所得水準、国民の生活感情などによって左右されるものであり、その具体的な内容は決して固定的なものでなく絶えず進展向上しつつあると考えられる。 (2)最低限度の生活水準は決して予算の有無によって決定されるのではなく、むしろ、これを指導支配すべきものである。
生活保護基準の引き上げは国民全体に大きなかかわりが 生活保護は、保護を受けている人や、これから受ける人だけでなく、国民全体につって重要なかかわりをもっています。 1、保護基準の引き下げで受けられない人が急増 生活保護の申請に行ったときに、保護が受けられるかそうかの判定に使われるのが、保護基準です。 低年金の高齢者、リストラなどで失業中の人など、生活保護を必要としている人は、現在受給している人の4倍はいると言われています。 生活保護基準が引き下げられれば、これらの人が生活保護を受けようとしても、受給できないことになります。 2、修学援助制度も生活保護が基準に 生活保護基準が下げられたことで修学援助や公営住宅家賃減免などの制度が受けられなくなる人がでてきます。生活保護基準がもとになっている、くらしに役立つ制度がたくさんあります。例えば、義務教育の費用を援助する修学援助制度は、多くの自治体で生活保護基準の1.1倍~1.5倍の家庭を対象にしています。 3、労働者の最低賃金や課税基準にも連動 生活保護は人間としての『健康で文化的な最低限度の生活』を保障する制度ですから、生活保護基準や内容が、国民全体の生活を左右することになります。 労働者の賃金や年金、税金の課税基準などは、生活保護と連動しています。例えば、税金は「最低生活費(保護基準)に課税してはならない」ことになっており、生活保護基準がどうなるかが、大きく影響します。 ●生活保護基準がもとになっている制度がこんなに・・・ 国民健康保険料(税)の減免制度 国民健康保険の一部負担金(医療費)の減免制度 介護保険料の減免制度(境界該当層の人たち) 公営住宅の家賃減免制度 義務教育の就学援助制度 住民税や固定資産税の減免制度 保育料や出産の費用が安くなる入院助産の費用 障害者の医療費の減免制度
ナショナル・ミニマムの確立めざし大きな運動を広げよう 低すぎる最低賃金 賃金には、一定額以下では働かせても、働いてもいけないという最低基準が定められています。働いて得る賃金の水準は、「健康で文化的な生活」を営めるのは当然のこと、生活の安定や労働力の質の向上につながるものでなければなりません。それを定めているのが、最低賃金法です。 ところが、実際に都道府県別に決めれている最低賃金額は、もっとも低い沖縄県で時間額600円強、最高額の東京でも700円強にすぎません。仮に2000時間働けたとしても、年収120~140万円にしかならず、ここから税金や社会保険料などを天引きされたら、まともな暮らしはできません。 憲法の理念に反した、ワーキング・プァが生まれてしまうのも、最低賃金が低すぎることが大きな原因です。生活の糧である賃金の最低額がこのように低く抑えられ、かつ都道府県ごとに格差が広げられている状況は問題であり、改善が必要です。 労働組合が中心となり、生計費をまかなえる最低賃金を求める運動が続けれていますが、そこでのよりどころとなっているのが、生活保護基準です。最低賃金の底上げ運動と、生活保護基準を守り、発展させる運動を両輪として進めることが求められています。 高齢期の最低生活をまもる 最低保障年金制度の実現を 1950年社会保障審議会は、「困窮の原因には方法を講じ、困窮者に生活の保障をする」「最低賃金制雇用の安定に関する政策を進める」と勧告しました。生活保護や最低賃金と同様に、年金問題も憲法25条の「生存権」にかかわる大切な課題です。 現在、国民年金受給者の月平均受給額は4万6000円で、本当に暮らしを支える年金にはなっていません。 一方、失業者、パート・派遣などの低賃金労働者が増え、年金保険料が払えない人が10000万人、無年金者も100万人になろうとしています。また、厚生年金加入事業所数は、この5年間で7万社も減少しました。このように年金制度の根幹が土台から崩れようとしています。 いま必要なことは、誰でも老後の生活保障がされる制度をつくりあげることです。そして、制度全体への国民の安心と信頼を取り戻すことです。 2001年8月、国連社会権規約委員会は、日本政府に「最低年金の制度化」を勧告しました。全額国庫負担の基礎部分を含んだ年金制度=最低保障年金制度を作り上げることが求められています。
あなたも 生存権裁判を支援する全国連絡会 にぜひご加入下さい! みなさん私たちは、国民生活の最低保障基準(ナショナル・ミニマム)の確立をめざして、老齢加算や母子加算などの生活保護基準をめぐる裁判(生存権裁判)を支援することを目的に、「生存権裁判を支援する全国連絡会」を結成しました。
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