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エンターテインメント・レビュー

第十二弾

映画

アルマゲドン

マイケル・ベイ監督作品

またまた泣けるらしい映画の登場である。「もののけ姫」にしてもそうだが、何故そんなに簡単に日本の観客は泣けるのだろう?
この「アルマゲドン」にしても、真面目に語るのが馬鹿らしいくらいお涙頂戴演出満載なのだが、ばかばかしくて泣けなかった。

観客批判はひとまずおいて、内容の分析をしたいと思う。
まず、これは「泣けない」理由でもあるのだが、主人公がハリーなのか、AJなのかがはっきりしない。出番で言えば、ブルース・ウィリス演じるハリーなのだが、この映画の軸はハリーとAJの葛藤なのだ。AJは若き採掘技師で、リブ・タイラー演じる親分ハリーの娘とデキている。つまり三角関係がこの映画の軸なのだが、お互いの関係が描き切れてないため、どうしてもラストでのAJをかばったハリーの自己犠牲も親子の涙涙の語らいもグッとはこないのである。
しかも、あれだけオヤジと感動的な別れをしておいて、5分後(実際にはある程度時間がたっているが)にはAJの胸に笑顔で飛び込んで行く。思わず「おまえのオヤジは死んだんだぞ!」とつっこんでしまいたくなるようなラストだった。

ではどうすればよくなるか。簡単だ。
主要3人のうち一人を削ればいいのだ。
AJを削れば、恋愛要素はなくなるが(女性諸君には許せない選択か?)、その分ハリーと娘の葛藤が描ける。この2人をきちっと描けば、最後の別れも生きてくる。
ハリーを削ると、親子関係を描けなくなるので、思いっきり軽くなってしまうが、反面娘とAJの恋愛が描けるので、AJを死の危機に追いやる事で、ラストは感動を与える事が出来る。
娘を削れば、男臭い話になってしまうが、浪花節的なハードボイルドが描けて、これまた渋い感じになるだろう。

要はおいしいと思われる要素をつめ込み過ぎたのだ。
贅沢なのである。もう少しどれかに焦点を絞れば、CGの出来といいキャスティングといい、傑作になったであろう事は想像に難くない。

PS.知り合いの人達がこの「アルマゲドン」と日本の特撮「妖星ゴラス」と比べて、「妖星ゴラス」の方が面白かったと言っていたが、そこまでひどくはなかったと自分は思う。