エンターテインメント・レビュー

第十六弾

映画

「STAR WARS EPISODE T

The Phantom Menace

ジョージ・ルーカス監督作品

もはや、この映画についての解説は不要だろう。
今世紀最高のSF娯楽シリーズであり、ハリウッドの象徴ともいえる映画だ。
本作は、前3部作より前の時代のエピソードにあたり、どう前3部作とつながるのかが期待されている。

さて、自分がこの映画を見た感想だが...。

「スターウォーズ」「スターウォーズ」を超えられるか?
この映画を語る場合、これに尽きる。

CGは確かにすごかった。
日本の某RPGのCGなど、この映画のCG部分にくらべれば...いや、比べようがない。いってみれば「FF 1」と「FF 8」のCGを真剣に比べるようなものだ。
役者もなかなか濃いメンツを揃えていて、キャスティングにおいても世界最高水準だと言えよう。

問題は、そこで語られるドラマである。
ストーリーは果たしてどうだったか?
この壮大な物語は、「スターウォーズ」登場以降様々な国の様々なメディア作品に影響を与えている。もし、この映画がなければ「某機動戦士G」も 某RPGも、あるいは他のSF映画も存在しなかったといっても過言ではない。つまりはそれだけ多くの傑作の母体となっているのだ。
一本の映画として、またスターウォーズサーガの一作として、この「EPISODET」はそれら多くの傑作を遥かに凌いでいなければならない。そして、それはつまりオリジナル「スターウォーズ」をも超えていなければならないのだ。

残念ながら、自分はこの「EPISODET」を見て、初めて「スターウォーズ」を見た時のような感動は得られなかった。
つまらなかったわけではない。面白かった。満足したし、1200円という入場料も安いとさえ思った。
しかし、それ以上の、何かこう、色気のようなものが感じられないのだ。
スターウォーズとしては、ごく当たり前の物語だった。通商連合による平和な国ナブーへの侵略、王女を守るジェダイの戦士たちの冒険と活躍、そしてとりあえずの勝利。ツボを押さえた、安心感をもって見れるドラマではあったが、よくよく上記の要素を見てみると、ほとんど「スターウォーズ」と同じ展開である。新しさが皆無なのだ。色気がないというのは、つまり全く作り手の冒険がないということなのだ。ここまでこれを暖めてきたであろうジョージ・ルーカスの意気込みはある程度感じられたが、ベテラン製作者としての余裕はまったく感じられない。いい意味でも悪い意味でも手堅すぎるのだ。

キャラクターも、前作に比べて弱い。
リーアム・ニーソン演じるクワイ・ガンにしても、ユアン・マグレガー演じるオビ・ワンにしても、前作のルークやハン・ソロに比べてパワーがない、悪い意味で落ち着いたキャラになっている。ナタリー・ポートマン演じるクイーン・アミダラ=侍女パドメは、レイア姫に比べればアピール度の高い、いいキャラクターではあるが、影武者の要素を入れたため、深く描ききれていない部分があったため、今一つ感情移入できなかった。

スターウォーズファンにとっては、期待を裏切らない傑作なのかもしれないが、ファンとはいえない自分にとってはどうしても前作に比べパワーダウンを感じてしまう。壮麗なCGによる特撮も、それを補ってあまりあると言えるまでには至っていない。

全体として言えることは「何か某RPGゲームみたいだなぁ」という感想だ。
先ほど言ったように、そういったゲームに影響を与えているのが「スターウォーズ」なのだから、こういった感想は本末転倒なのだが、しかしこれが率直な感想だ。
つまり、一つの作品としてスターウォーズ亜流の域を出ていないのだ。ジョージ・ルーカスが作っているから亜流じゃないのだが、物語のレベルが亜流と同レベルでは、スターウォーズサーガの名が廃るではないか。

とはいえ、技術的に、映画には「ここまで」というような限度がない事を証明し、更に歳をとったからといってアタマが硬くなって娯楽が作れなくなるわけではないという事を示したルーカスの功績は大いに賞賛されるべきだろう。

今後発表されるであろう「EPISODEU」「EPISODEV」が物語の面でも「スターウォーズ」とその子孫達を遥かに凌駕する作品となることを祈って..。