エンターテインメント・レビュー

第十八弾

映画

交渉人

サミュエル・L・ジャクソン主演作品

久々に面白いと思えるハリウッド映画に出会った。
この交渉人という映画は、「サミュエル演じるシカゴ市警の人質交渉人が汚職事件に絡む殺人事件にまきこまれ、殺人犯にしたてあげられる」という、ありがちなサスペンスに、「それにキレたサミュエルが汚職にかかわった内務調査官を人質に市庁に立て篭もる」というダイ・ハード的サスペンスアクションを盛り込むことで、一級のエンターテインメントに仕上がっている。なんといってもこの作品の良さは、人質交渉人(特殊部隊が突入する前に犯人をなだめすかして人質を解放させ、強行解決を避けさせる捜査官)が交渉される側にまわり、交渉する側にまったく面識のない腕利き交渉人が選ばれるというアメリカ御得意のユーモア効いた脚本の妙だ。そしてかつての仲間を射殺しようと包囲する警官達との緊張感たかまるわたりあい。

誰が味方で誰が敵なのかがわからないまま、立て篭もり事件は思わぬ展開をみせていくわけだが、弱いな、と思ったのが犯人像だ。
この手の陰謀物は、その黒幕が誰かでその面白さが決まるといっても過言ではない。
この作品も、結局犯人はやたらサミュエルを射殺したがる部隊長ではなく、その部隊の1チームと、捜査官のお偉方(サミュエルと交流が深かった捜査官)という、以外といえば以外な犯人像ではあるが、どうにもパンチが弱い気がする。結局最後も、サミュエルと別の交渉人がその捜査官と話したやりとりを警察の無線機に流していたため逮捕、というハッピーエンドになるわけだが、このケビン・スペイシー演じる交渉人は、演技とはいえサミュエルを撃っているのだ。いくら悪徳警官をだますためとはいえ、そんなことが許されるのか?
疑問が残ってしまう。

ただ、とにかく一級のエンターテインメントであることは間違いないし、「ダイ・ハード」みたいなズシンとくるサスペンスアクションが見たいと思っている人には超オススメな作品だ。