エンターテインメント・レビュー

第十九弾

映画

スペーストラベラーズ

本広克行監督作品

前に、「日本映画はいい方向に向かっている」と書いた。
本作品の監督である本広氏のデビュー作「踊る大捜査線 The Movie」の時だ。
あれから約二年。様々な日本映画が作られたが、どうやらいい方向に向かいかけて失速したようだ。「リング2」にしても「鉄道員」にしても、前評判だけの中身のまったくない、従来の日本映画だった。そういった映画が快作だの名作だのと評価されるのだから、この国にもホントに困ったものだ。家族がいなくなれば、まず間違いなくこの国から抜け出すだろう。この国は腐乱している。

さて、本題である「スペーストラベラーズ」のレビューに入ろう。
一言でいうと、くだらなかった。
恐らく本広監督の狙いは、このくだらなさ&いいかげんさからくる笑いだったのだろうが、だとするなら笑える部分がちょっと少なすぎた。
ストーリーは、「間抜けな素人強盗三人組が銀行に押し入るが、金も奪えず警察に包囲されてしまう。行内に残された自分達と人質達がどことなく流行のアニメーション「スペーストラベラーズ」のキャラに似ていると思った強盗の一人が仲間と人質達を説得し行内でスペーストラベラーズを結成し、警察をからかいはじめるが、中の誤認情報をつかまされた警察はSATの突入と犯人グループの射殺を決断していた...」というブラックコメディもので、話の構成自体は悪くないのだが、どうも中盤の、犯罪学的には「ストックホルム症候群」といわれるテロリスト(この場合は強盗)と人質とのコミュニケーションの描写不足が目立った。
つまるところこの映画で描かれているのは「祭り」であり、祭りは必ず終わらなければならず、しかもこの祭りは二度と体験できないという切なさなのだが、その中核となるべき中盤での強盗と人質との交流の面白さがないのだ。時間にして二時間ちょっとあるからボリュームは十分あるはずなのだが、やはり交流がおざなりに描かれているために、ラストの祭りの崩壊にもピンとこなかった。
原作は舞台(戯曲)なのだが、むしろ自分は、この映画はテレビの連続ドラマに向いていると思った。11、2回もあれば、間抜けな素人強盗と人質達との奇妙でほほえましい交流もじっくりと描けたであろうし、その過程でふんだんに笑いも盛り込めたであろう。「踊る...」の時も思ったが、やはりこの監督はテレビ向きのようだ。

全体的に観て、つまらなくはないのだが、何か日本映画の限界を感じさせられてしまったような気がする。
映画もテレビも、この国では一緒なのだろうか?

 

NEXT