エンターテインメント・レビュー

第二十八弾

テレビドラマ

恋人はスナイパー

テレビ朝日作品

ワイヤーを使えばいいってものじゃない。

このドラマを見て、そう感じた。
率直に言って、香港のアクション映画を見慣れている自分にとって、この作品のアクションは子供のカンフーごっこにしか見えなかった。
どこがいけなかったのか?
問題は役者ではない。
アクション演出なのだ。
香港のワイヤーアクションは、どういうふうに、どこから撮れば効果的か計算されている。これは、伝統文化でもある「武術指導」、つまりアクション監督による演出が冴えているからだ。振り付けには数ヶ月のトレーニングをさく。妥協は有り得ない。これはハリウッドに渡った現在も同じだ。
しかるに、このドラマのアクションは日本人が振り付けしている。しかもどう考えても本番直前だ。数ヶ月にわたるトレーニングなどされていない。ワイヤーでつらくればいいだろう、ってなノリでアクションを演出している。カメラワークも考えられていない。これではいくら役者が頑張っても遊んでいるようにしか見えない。映像とはそういうものだ。
せめてアクション監督だけでも香港から呼んでいれば、もっと見栄えのするアクションシーンになったであろうに。

話も唐突で、はまり込めなかった。
脚本の君塚良一は、「踊る大捜査線」で一躍日本のトップに踊り出た脚本家だが、二時間ものは弱いと見える。
人情あふれる人間関係を二時間でじっくりと描けてない。
主人公のウォン・カイコーと、彼を留学生として受け入れた家族との関係の描きかたが中途半端だ。
見ていて「12話あればもっと面白く描けるだろうに」と思った。
もっと映画を見て、二時間で人間関係を描く勉強をしてほしい。

所詮、番組切り替え時期のつなぎでしかなかったのか。
なら二億もかけてつくる意味があったのだろうか。

アクションにしてもシナリオにしても、大いに不満の残る作品だ。
映画じゃなくてよかった。
お金払って見てたら、恐らく激怒していただろう。
とてもDVDを買ってみようとは思わない作品だった。