エンターテインメント・レビュー

第三十弾

日本映画

千と千尋の神隠し

宮崎 駿監督作品

正直、周りの評価とは裏腹に、期待していなかった。

なんで宮崎  駿はロリロリ映画ばかりやるのだ。もう見飽きた。そう思っていた。

だが、一度見てみると、そこにはやみつきになる世界が広がっていた。
何か懐かしい感じがした。昔の宮崎映画に少しだけ触れられたような気がした。

確かに環境問題にふれてはいるが、他の作品のような説教くささはなく、サラリと見れた。

でも。
なんで千尋はあんなに強いのだろう?

宮崎作品の主役は男だろうが女だろうがまったくもって強い。というか図太い。

普通の10歳の女の子ならあの環境から逃れようともがいただろうし、いくらハクに「ここで働かせてくださいっていうんだ」といわれたって、あんなところ冗談じゃない。
ところが千尋はあの薄気味の悪い婆に「働かせてください」とくいさがるのだ。そして、傷ついたハクを助けるために、旅もする。

並外れた行動力だ。

これは、例の宮崎演出の稚拙さを浮き彫りにした部分だ。どうしてもこの人は主人公をかばってしまう。
演出家は主人公をかばってはいけない。
シリアスな映画ならなおさらだ。人間は弱い生き物だ。その弱さに気づき、乗り越えてこそ映画の主人公といえる。
だが、この人の映画では障害を乗り越える必要はないのだ。
主人公がもがき苦しむ前に宮崎氏自身が取り去ってしまうからだ。

批判はいくらでも出来るが、ただ自分は素直に楽しめたし、あの世界観も好きだ。
宮崎さんにはこの路線でもっと頑張ってもらいたい。もう「もののけ」路線はやめて、ね。

何はともあれ、宮崎ファンや邦画ファンにはオススメの一本である。