GigaHit

DFエンターテインメント・レビュー

第四回

小説&映画

リングらせん

小説

ループ

 脚本や小説好きの読者がほとんどだと思うので、この作品についての基本的な説明は不要だろう。

 早速中身について語りたいと思う。

○「リング」 小説は、はっきり言って言われているほど怖いとは思わなかった。だが、ユニークだ。発想が面白い。つまりリングとは不幸の手紙のビデオ版で、実際に死者が出てしまうという、しかものっけは四人が同時刻に違う場所で、という設定は斬新で、正直読みやすい文章では必ずしもないのだが、引き込まれてしまった。なるほど、鬼才といわれるだけのことはあるな、と感心してしまった。

 映画のほうはというと、原作の一番面白い部分である「おまじない」がばっさりとカットされてしまっていて、呪いオンリーの展開には少し閉口させられた。だが、原作の長さを考えれば、ある程度のカットはやむ終えないだろう。原作に泥を塗らないようにうまく作られていたのもまた、事実である。

 ○「らせん」 小説の方は、前作とはうってかわって科学的な話だ。かなり下調べが成されていて、遺伝学や感染症学を駆使した謎解きにはまたまた感銘を受けた。そしてダークなエンディングもぐっとくる。個人的にはリングよりもこちらの方が深くて好きだ。

 映画はかなり脚色されていた。これはいろいろな理由があるのだろうが、もっともな理由としては、高野 舞役の中谷美紀をたたせるためだと思われる。それくらいこの映画での中谷は光っていた。基本的に雰囲気は暗く、原作特有の不気味さは薄かったため、どうも叙事的なイメージがあるのだが、中谷の存在で許せてしまう。

 映画について2作に言えることは、最近の邦画にしては、久しぶりに「金返せ!」と思わなくてすむものだった。つまりつまらなくはなかった、と。みんな見に行けっていえるほど面白くもなかったが...。

 ○「ループ」 単体としては面白かった。もうこれは完全なSFで、リングらせんの不気味さ、ダークさは影も形もない。そして、前2作のすべての謎が解き明かされるわけだが、それはないでしょうってなノリである。ま、面白いことは面白いのだが、前のストーリーを完全否定する謎解きはどうか、と。ま、でも前の2作はさすがにこのネット時代にビデオでウィルス感染はちょっと古いだろうと思っていたので、バーチャルリアリティを出してきたのは、それを作者の鈴木氏も感じていたのだろう。

 とにかく三作とも面白い。ホラーファンならびにSF,幻想物ファンは一読の価値がある。


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