エンターテインメント・レビュー

第三十八弾

日本映画

たそがれ清兵衛

山田洋次監督作品

藤沢周平の時代小説は好きである。
だから、この映画にも期待してしまった。
なんてったって米アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品だ。
だから、余計期待してしまった。

その期待はラストで思いっきり裏切られた。

ナレーションで始まり、ナレーションで終わる。
日本映画には比較的多いパターンだが、この映画もゴタブンにもれず、だ。

ナレーションに頼るのは、本来シナリオ作成においては避けるべきことになっている。
「それはアマチュアの話」と一蹴されるかもしれないが、それがプロのおごりだ。
観る側にはアマだろうとプロだろうと関係ない。
特にナレーションで終わるというのは、それまで絵に出ていた役者達の存在感を打ち消す、最低の筋だ。

この映画は時代劇なのだから、基本的に時代劇で終わるべきである。
陳腐なテレビの歴史ドラマのような後日談などいらないのだ。
真田広之演じる清兵衛と宮沢りえ演じるともえが結ばれたところで終わっていれば、秀逸な時代劇映画と言えたかもしれない。
でもその後明治時代の清兵衛の娘・岸 恵子がでてきて「幸せは長く続きませんでした…鉄砲に撃たれて死にました」なんて後日談は、それまで役を熱演していた真田広之や宮沢りえの努力を無にするものだ。

少なくとも藤沢周平の時代小説は、こんな陳腐なラストは描かない。
原作に三篇も使っているのも解せない。

やっぱ山田洋次は「寅さん」じゃなきゃダメなのか。。。