エンターテインメント・レビュー

第四十弾

ハリウッド映画

ラストサムライ

エドワード・ズウィック監督作品

「マーシャル・ロー」のエドワード・ズウィックの最新作にして、日本では超話題になった問題作(?)が本作である。渡辺 謙がアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたことも記憶に新しい。

内容は、というと、まず日本のどの時代を描いた映画なのかわからない。
ラストサムライなんてほんとにいたのか?

ズウィックにしてもそうだが、日本好きの監督というのはどこか日本に「理想郷」を求めているふしがある。
サムライは剣の道に精進し、女はみな畑仕事に精を出す。
一見武士の世界にありがちな設定だが、よく考えて見よう。江戸時代は士農工商の時代である。武士は一番えらいわけであり、その妻は当然畑仕事などしない。それは農家の女の仕事である。
武士にも色々な立場の人がいて、実際にはすべての武士が武道に精通していたわけではない。
第一この映画の舞台はまがりなりにも近代日本である。武士は自然消滅していて、官軍との対立などあるはずもない(幕末じゃないんだから)。

日本好きなのはいい。
むしろ歓迎すべきことだろう。
でも、何も下調べしないで、理想郷を求めて描いた映画は、ドラマではなくただのファンタジーだ。
つまり、この「ラストサムライ」はファンタジー映画なのである。

まあ、「キルビル」みたいなのは別として、こういったマジメな映画で日本を扱うときには充分注意してほしいものである。

ファンタジー映画としてみるなら、上々な出来かもしれない映画である。