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○洞窟内 (朝)

   何者かに肩を揺すられ、目を覚ます文

   左衛門。

   文左衛門の顔を覗き込んでいる本田。

文左衛門「ジョースター

本田「ヨハネ。もう帰ろう」

文左衛門「え!?」

本田「帰ろう」

   文左衛門、驚き起き上がる。

文左衛門「どうして?」

本田「彼らに教えられた。俺には人間として

 の使命がある。だから彼らと一緒に生きて

 いく事はできないんだ」

文左衛門「ジョースターいいんだね?」

本田「エゲレスが俺たちを待っている」

   微笑む本田。

   そして文左衛門も。

   本田と文左衛門、大きく頷き合う。

 

                        F.O.

 

○南アフリカ・ソマリア港

 T20年後」

   タラップから地面に降り立つ本田。

   白い探検服に、白髪まじりの髭をたく

   わえ、すっかり渋くなっている。

   後ろから駆けってきた白人の付き人に

   大きな旅行鞄を預けた本田は、何かを

   見つけ、嬉しそうに駆け出す。

本田「ヨハネ!」fj13-1.JPG (8443 バイト)

   本田が駆けていった先には、白い司教

   服に身を包んだ文左衛門が笑顔で立っ

   ている。

   肉がつき、風格がでている。

本田「いよぉ、すっかり風格が出ちゃって」

文左衛門「ジョースターもたくましくなりま

 したね。学者というよりは探検者みたいで

 すね」

本田「インディ・ジョーンズみたいだろ?」

文左衛門「何ですか、それ?」

本田「何でもない。それより、あっちの方

 へは行ってみた?」

文左衛門「いや、ここへ来てもうすぐ二年に

 なるけど、なかなか時間がなくてね。せっ

 かく来たんだ、二人でまた行ってみるか

 い?」

本田「おう!それが楽しみで来たんだ」

   微笑み合う二人。

 

○ジャングル・崖上 

   木々はすっかり少なくなり、開けた感

   じの、本田と文左衛門がジャングルで

   の最初の夜を過ごした崖上。

   その崖に、本田と文左衛門が立つ。fj13-2.JPG (8862 バイト)

文左衛門「ここいら辺にも人の手が入りまし

 てね。話には聞いていましたが、あの当時

 の面影はありませんね」

本田「ああ物事はうつろいゆくものさ」

   悲しげに辺りを見る本田と文左衛門。

 

○集落(旧ワンの村)

   拓けた道を、人力車に乗った本田と文

   左衛門が村に向かって入ってくる。

   集落では白人達の監督の元、たくさん

   の原住民達が新たな建物の建設に勤し

   んでいる。

本田「これは?」

文左衛門「今、ここは大英帝国の支配下にあ

 ります。彼ら原住民はいわば奴隷として扱

 われています」

本田「そうか

文左衛門「あなたにはショックでしょうね」

本田「しかたないさ。それより、さ。あの

 時会ったじゃないか、何人か原住民に」

文左衛門「ああ、たしかネルといいました

 ね、彼女は」

本田「そう、それとトト」

文左衛門「たぶんここにいるんじゃないです

 かね。移住してなければ」

   と言い、近くで働いている原住民の男

   に近づいていく。

文左衛門「ちょっと尋ねたいんだけど、ここ

 にネルっていう女性はいるかね?年は、そ

 うもう40歳くらいかな」

原住民「死んだよ」

   無愛想に答える原住民。

文左衛門「何だって!?」

原住民「あなた達が来た時にね。彼女達は戦 

 士だったから真っ先に殺されたよ」

   唖然として本田を見る文左衛門。

本田「トトは?彼女には子供がいただろ

 う?」

原住民「彼は拷問に耐えられなかった」

文左衛門「何という

   息を呑む文左衛門。

   本田は悲しい表情を浮かべつつ、原住

   民に近づく。

本田「君の名は?」

原住民「イーバ」

本田「イーバ、ネルとトトには俺達ずいぶん

 と世話になったんだ。墓を教えてくれるか

 い?」

原住民「ひょっとしてあんた達、昔ここに

 来た人達か?」

文左衛門「そう。私はたしかあの時ここで少

 し布教していたかな」

原住民「あなた達がいてくれたら。彼らの

 墓はここから少し東へ行ったところにある

 湖のほとりです」

本田「湖!?」

原住民「ネルは生前、よくあそこで佇んでい

 たから」

   呆然とする本田。

 

○湖畔 (夕)

   夕焼けのきれいな湖畔。

   ここだけは当時と変わらず、雄大な自

   然が広がっている。

   本田と文左衛門、悲しげな表情のまま

   湖畔に佇んでいる。

文左衛門「我々は何て罪深い人間なんだ

本田「あの時、連れてくるべきだったんだ

 ろうか、俺達?」

文左衛門「

本田「でも、例えネル達を救えたとしても、

 犠牲者がいなくなるわけじゃない。仕方な 

 いか。俺達だって汚い人間の一人だもん」

文左衛門「私達に出来ることをやらなければ。

 もう二度と犠牲者を出さないために」

本田「そうだね

   突然、彼らの背後から悲鳴が聞こえて

   くる。

   驚いて振り向く本田と文左衛門。

   原住民の若い女が必死の形相で逃げて

   きて、途中で背後から追ってきた白人

   の若い男達に追いつかれ、押し倒されfj13-3.JPG (10824 バイト)

   る。

   彼らの元に駆け寄る本田と文左衛門。

文左衛門「おまえ達、何をしているんだ!」

若い男1「何だよぉ、うっせえな。黙ってろ

 よおやじは!」

若い男2「そうだよ、黙って見てろって。興

 奮ものだぜ」

本田「おまえら、まだ子供だな?こんなこと

 していいと思ってるのか!?」

若い男3「子供は何しても許されるんだよ!

 法律が守ってくれるんだ。こーゆー事は今

 のうちにやっとかないと」

   恐怖に顔が歪んでいる原住民の少女。

   どことなくネルに似ている。

本田「きさまら!」

   本田、少女に馬乗りになっている若い

   男1を殴り飛ばす。

若い男2「何すんだ、おっさん!死にてぇ

 か!」

   若い男達は一斉に蛮刀を振りかざす。

   本田、怒りの形相で銃を取り出す。

   とたんに若い男達はおびえだし、逃げ

   出す。

本田「フン、ガキが。大丈夫かい?」

   と少女に声をかける本田。

少女「

   まだ恐怖のさめやらぬ少女。

本田「名前は?」

少女「テア」

本田「テアか。君はいや、何でもない。危

 ないから村まで送ってあげよう」

テア「ありがとう」

文左衛門「これからは一人でこの辺りをうろ

 つくのは危険です。気をつけなさい」

テア「はい」

   本田と文左衛門は、テアを伴って歩き

   出す。

 

○集落への道(夜)

   暗い夜道を、本田と文左衛門はテアを

   守るようにして歩く。

文左衛門「ジョースター」

本田「ん?」

文左衛門「彼女、どこか似ていますね」

本田「ああ」

   突然、脇の茂みから先ほどの男達が出

   てきて本田に突進する。

本田「ぐっ、おまえらfj13-4.JPG (10250 バイト)

   そして一斉に逃げる男達。

   本田、その場に崩れ落ちる。

   テア、悲鳴を上げ、村に逃げ帰ってい

   く。

文左衛門「ジョースター!」

   文左衛門、本田を助け起こそうとする。

   その本田の腹いたるところから血が滴

   り落ちている。

文左衛門「何てことだ」

本田「こんなことで

文左衛門「神よ!」

本田「ヨハネ、彼女を

文左衛門「わかったからしゃべらないで」

本田「それから、あいつらを」

文左衛門「わかった。まだ少年だがしかるべ

 き処置を

本田「俺達がここを守らなきゃ

   息絶える本田。

   集落から騒ぎを聞き駆けつける村人と

   警備の白人達。

文左衛門「ジョースター?ジョースタ

 ー!!

   夜空に文左衛門の叫び声が木霊する。

 

○港

   帆船が港から離れ出す。

文左衛門(N)「私はあれから二年この土地に

 いた。結局あの少年達は行政官の息子達で

 処罰されず、あのテアという少女は彼らに

 弄ばれ、妊娠した挙句に殺された。私は無

 論何も出来なかった」

   デッキで離れ行く大陸を見つめる文左

   衛門。

文左衛門(N)「そう。私は彼ほどここを愛し

 ていなかったのだろう。だから私は彼がし

 たように命をはってここを守る事は出来な

 かった」

   付き人が文左衛門の肩をたたく。

付き人「ヨハネ様、お風邪を召しますよ」

文左衛門「ありがとう、ねぇ君」

付き人「はい?」

文左衛門「我々がしていることは正しいのだ

 ろうか?」

付き人「

文左衛門「疑問を感じるなら、君だけはあそ

 この白人のようにはならないようにな」

付き人「わかりました」

文左衛門「君、名前は?」

付き人「トーマス、トーマス・ジェファーソ

 ンであります」

文左衛門「トーマスか偉くなれよ」

   トーマスに微笑み、文左衛門は船内に

   入っていく。

   付き人は、ただ呆然と彼を見送る。

   帆船は風に揺られながら、大海原をゆ

   っくりと進んでいく

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  fin


                        ○あとがき